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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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他所の戦い

 信長が死んで戦いは終わり……………… ません。こちらではまだ戦いが続いています。まずは大和の筒井順慶です。筒井順慶は滝川一益の猛攻により、筒井城に追い込まれて籠城を続けていました。黒田官兵衛は信長が死んだ事を伝えるべく使者を出しましたが一歩間に合わず、滝川の説得で筒井順慶が切腹する事で家臣には手を出さない約束をし、順慶は自害しました。


 ところが、自国の伊勢が港から猛攻を受けていると報告があり、滝川一益は戦後処理を放棄して伊勢に戻ってしまいました。残された筒井家は家老たちの意見で養子の定次が継ぐことになります。そして定次とウマが合わない島左近はお暇をもらい浪人となっていくのですがそれは少し先の話です。


 伊勢の港では海からの砲撃で大惨事となっています。本願寺決戦で船を失った織田水軍は、滝川一益により復興すべく活動してきて、やっと軌道に乗ってきた矢先の出来事です。建造中の船や、漁船に至るまで軒並み全て沈められてしまいます。海に浮かぶは真っ黒な船、戦艦富士改め 安芸です。小早川水軍の船20隻を引き連れて我が物顔で海に浮かんでいます。


「もう抵抗する者もおるまい。上陸するぞ!」


 指揮をするのは小早川隆景、この男は戦艦安芸が嬉しくてたまりません。信長との戦は宇喜多に兵を預けて秀吉に任せ、こちら側に回りました。秀吉贔屓の小早川ですが、丸々秀吉を信じているわけではありません。信長との戦は秀吉の実力を見るいい機会と、勝手にやらせる事にしたのです。目の前でじっくりお手並み拝見も考えましたが、黒田官兵衛にこの作戦を勧められて船の方を選びました。


 上陸する兵は300名、小舟に乗り換えて岸にたどり着きました。目指すは津城、織田信長の弟、信包が城主を務めています。


「滝川が戻る前に城を取る!」


 まさか敵が攻めてくるとは思ってもいなかった織田信包は、不意を突かれながらもなんとか城から逃げ出しました。小早川隆景はほとんど犠牲を出す事なく津城を手に入れたのです。兵に籠城を命じ、自分は船に戻りました。小早川は船で兵をピストン輸送して津一帯を手に入れる作戦でした。再び戦艦安芸に乗り、自軍の兵を待機させている備前まで戻っていきます。


 滝川一益は慌てて伊勢に戻りました。造船所の被害状況を確認し途方にくれています。折角頑張って来たのが泡と化してしまったのだ。怪我人の手当てや後始末をしていると、津城が取られたとの情報が入ってきました。造船所をやった奴らだと考えた一益は、体制を整えてから津城に向かいました。




 さて、本願寺跡にいる佐々成政は何度か状況を把握すべく物見を出しましたが、全員帰ってきませんでした。これは監視されていて外との連絡を取れないようにしているという事だと思いついた成政は、散々悩んだ末に、


「討って出るしかあるまい。しかし、わしはなんでこんなにもたついているのだ?」


 その通りです。成政らしくないのには理由がありました。金です。籠城したことにより工事人夫に払う金が足らなくなってしまいました。ここを出れば金を支払わねばなりませんが、織田家に金がない事を知ってしまいました。知ってからどうも引け気味というか臆病になっているのです。


 佐々成政は覚悟を決めて工事人夫を説得し本願寺を出る事にしました。支払いは本願寺にあった武器を分け与えて残りは後で必ず払うと約束して。門を開けて外へ出ると敵の見張りが慌てて走り出します。こちらが大勢で出たので連絡へ向かったようです。


「やけに静かだな。このまま佐久間様のところへ行くべきか?しかし見張っていたのはどこの者だ?わしの物見を殺したのは?」


 本願寺から出たのは総勢五千名、ですが殆どが工事人夫です。一応槍や刀は持っていますが。すると、敵の使者が現れました。なんと、前田利家です。成政は利家の顔を見てホッとしました。天の助けか旧知の友がここに現れるなんて。近くに神社があったのでそこで話をする事になりました。


「やっと出てきおったな。今まで何をしておったのだ?お主が天の岩戸に籠っている間に世の中は様変わりしたぞ」


 利家は嫌味たっぷりに言いますが成政は気にしません。


「??? どういう事だ?おやじ殿はどこだ?」


「それも知らぬのか?おやじ殿は秀吉殿に討ち取られた」


「なんだと、猿め、なんという事をしでかすんだ!」


 こいつそこからかよ、と利家はじっくりゆっくり今まで起きた事を成政に説明を始めました。


「足利義昭が死んで、上様もお亡くなりに。討ち取ったのが荒木村重で、その荒木も死んだのか。で、戦は今どうなっている?」


「黒田官兵衛殿が畿内を制圧すべく、毛利の兵を使って佐久間様の河内を攻めている。明智様は近江まで戻ってしまったし孤立無援というところだな」


「それではお主とわしでお助けせねば。行くぞ、利家!」


「まあ待て。もう上様はいない。おやじ殿もいない。我らは誰に仕えてるのだ?」


「上様がお亡くなりになったのなら跡目は信忠様であろう。信忠様をお護りするために明智様は近江へ急がれたのではないか?」


「わしは合戦の中、足利義昭本陣へ攻めかかっていたので上様がお亡くなりになったところを見てはいない。ただ、明智の引き際は見事というか、速すぎた。まるで上様がお亡くなりになるのを知っていたかのように」

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