信長急襲
織田信長の本陣へ佐久間信盛が報告にやってきました。
「上様。初戦は我が軍の大勝利でございます。敵兵5000余、討ち取りましてございます」
佐久間は上機嫌で報告します。すると、
「して、荒木はどうした?」
「運のいい男で、逃げ帰りました」
「たわけが!なぜ荒木を仕留めん!仕留める前に戻ってくるとは何事だ!何が大勝利だ」
信長は肘当てを投げつけました。それを見た明智十兵衛が慌てて、
「この作戦はそれがしが立てました。佐久間殿は指示に従いよくやってくれました」
「たわけが!荒木の首を持って参れ、猿のもだ!余を裏切ったらどうなるのか世間に知らしめてやるのだ。忠三郎!」
「はっ」
「大筒の砲弾はもうないのか?」
「はい。堺に荷が入ってこないので、尾張経由になっており時間がかかっております。砲弾も最初より値が上がっておりまして4発しか購入できませんでした」
「もっと買い占めろ。鉄砲の鼻薬は十分だな?」
「はい。蓄えに加え、本願寺から接収したものもあり十分にございます」
「十兵衛!」
「はい」
「次の策だ。もう相手は出てこない。馬防柵は取り払え。こちらは三万、敵は二万だ。籠城されると厄介だぞ、どうする?」
「草の情報では向こうには公方様がいらっしゃるそうです。利用しない手はありますまい」
「義昭か。まだ生きておったのか。佐久間、十兵衛、荒木と猿の首じゃ。わかったな?」
10日後、戦場に足利将軍の旗印が掲げられ、義昭を大将にした兵一万五千が蜂矢の陣型を取っています。かたや信長の方は二万五千の兵が魚鱗の陣型です。その後ろに信長本陣があり予備兵として五千が控えています。秀吉と官兵衛は別行動をしています。
「官兵衛、あの陣形はなんだ?初めて見るが」
「盛信に聞いた武田八陣が1つ、蜂矢の陣。あの山本勘助が諸葛孔明の文献を読み解いて作ったそうだ。一度試してみたくてな」
「面白い。盛信も役に立ったな。小早川はどうしてる?」
「戦艦富士改め、戦艦安芸に乗って伊勢に向かってるよ。筒井が心配なのでな。まあ間に合うまい」
「滝川を足止めしてくれるだけで十分だ。で、こっちの準備は?」
「上々だ」
2人がいるのは摂津池田城の裏手にある五月山です。ここからだと戦場がよく見えるのです。
荒木村重の隊を前面に、宇喜多、毛利混合兵の指揮は足利義昭に仕える細川藤孝がとっています。作戦は黒田官兵衛が立てました。本陣には足利義昭が軍配を持って大将を勤めています。本人は、自分の下に毛利軍がいて織田信長を征伐しようとしていると信じています。いや、信じたいのです。心のどこかではわかってはいても。
「攻めかけい!」
義昭が軍配を振るうと、細川藤孝が合図をしました。それをキッカケに荒木隊が前進をはじめます。荒木はもう失敗は出来ません。ここで死ぬ覚悟でした。
その気迫ある戦いは素晴らしく、織田軍の佐久間信盛軍、前田利家軍を圧倒していきます。蜂矢の陣は中央に兵が集中していて、中央突破には向いているのですが、勢いで信長本陣近くまで前進します。
「我らには後がない、突き進めー!」
荒木の声が戦場に響き渡ります。ところが荒木の隊が先走り過ぎて細川率いる毛利軍の間に距離ができてしまいました。それを見た明智十兵衛は、兵の数を活かす陣形を取ります。荒木隊を円陣で取り囲み、毛利軍は残りの兵を前に出し迎え討ちます。
荒木は敵に囲まれた事に気付きました。
「もはやこれまで。ならば取るべき道は1つ。織田信長を討つ!全軍、続けー!」
荒木は信長本陣目掛け全速力で円陣の一角に突っ込んでいきました。
「しまった!その手があったか?」
十兵衛は焦りましたが、信長本陣にはまだ予備軍の五千の兵が残っています。そこに荒木隊が突っ込み乱戦となりました。
「上様が危ない!」
佐久間信盛は毛利軍を抑えていましたが、本陣付近から聞こえてくる戦場の音に気が気ではありません。そこを細川が見抜き攻撃を集中します。佐久間隊は崩されますが、円陣を組んでいた部隊が応援に駆けつけたお陰でなんとか持ち堪えます。
前田利家軍は毛利の蜂矢の陣の弱点である側面迂回攻撃を仕掛けようと、兵五百づつを左右に分けて展開しています。中央で佐久間が踏ん張っていて、そこを崩すのに集中している毛利軍は、前田利家の動きに気付いていません。
荒木村重の周りを旗本が囲みつつ全速力で信長に向かって進んでいます。1人、また1人倒れますがその度にほかの兵が加わり主人を守りながら信長目掛けて一直線、
「ええい、何をしておる。余が直々に成敗してくれるわ」
信長は槍を持って立ち上がり、構えます。その信長に荒木村重はどんどん近づいていきます。信長の周りにいる護衛の兵達もぜんいんの視線が荒木村重に集中しています。荒木が信長の10mまで近づいた時、信長の旗本の槍が荒木村重を貫きました。
「とのー!」
荒木の兵が叫び、荒木を突いた織田信長の旗本を倒します。その時、
『ダーン、ダーン』
と銃声がし、皆が音をした方を見ると織田信長が倒れていました。




