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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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十兵衛の策

『ダーン、ダーン!』


 馬防柵の後ろに並んだ鉄砲隊から無数の銃弾が荒木軍に襲いかかる。備えのない状態で銃弾を食らった兵達は悲鳴を上げながらバタバタと倒れていく。鉄砲は一度打ったら次弾を装填するのに時間がかかる。それを狙って荒木軍の兵達は馬防柵へ近寄っていくが、撃ち終わった鉄砲隊が下がっていき再び別の鉄砲隊が前面に出てきた。


「なんだと、うわあ」


『ダーン、ダーン!』


 鉄砲隊が再び入れ替わる。兵が次々と倒れていくのを見た荒木村重は、


「引けー、体制を立て直す。下がれ!」


 と、叫びながら鉄砲の射程距離から離れ、なんとか陣を組み直し始めようとしていると、一度退却したはずの佐久間信盛の兵が左右から押し寄せてくる。


「仕方ない、退却だ。秀吉の本陣まで下がる」







 信長は報告を聞いてご機嫌だ。


「荒木は退却するぞ、十兵衛、どうする?」


 明智十兵衛は、蒲生氏郷の顔を見て


「蒲生殿、砲弾はあと何発残ってる?」


「2発にございます」


「荒木が逃げる前方へ打ち込んでくだされ」


「承知」


「ほう、お前も嫌な策を使うようになったな。あの綺麗事ばっかり言っている十兵衛が」


「上様。敵はあの木下秀吉、何をしてくるかわからない嫌な奴でございます。ならばこちらも同じように嫌な奴にならねば勝てませぬ」


「ふん。まあいい、初戦はお前に任せたのだ。好きにやればいい」




 荒木が全兵に撤退を命じて走り出すと、再び大筒の砲弾2発が荒木軍を襲う。砲弾に驚いて足を止めた兵は佐久間隊に討たれていく。


「怯むな、走れ!」


 ここにいてはいいようにやられてしまう。荒木は逃げの一手だ。佐久間は深追いはしなかった。向こうには秀吉が控えている。荒木の首を取れなかったのは残念だが初戦はこれでいいと判断した。


 荒木村重はなんとか本陣へ逃げ帰った。一万いた荒木軍の兵は五千にまで減っていた。




「またいいようにやられて、荒木殿とあろうお方が」


 秀吉は戻った荒木に冷たい言葉をかける。


「面目ない。あれは毛利の焙烙玉のような物、あれを陸地で使われるとは思ってもいなかった」


「だとしても、鉄砲はいただけませんな。あんな見え見えの策に引っかかるとは」


「まんまと乗せられた。面目ない」


「面目ないばかりですが、ご自分の立場をお分かりか?この醜態をどう挽回するお積りか?」


「秀吉、そんなに責めるな。次に機会をくれれば必ず佐久間の首を」


「勘違いされては困りますな。それがしは毛利の重臣、織田配下の秀吉ではござらん。あまり馴れ馴れしくしないでいただきたい。それに挽回に佐久間の首など、小さい小さい。そんな小者の首を取ったからといって何になる?信長の首をここで取らねばこの戦、勝ちにはならん」


 そこに口を挟む邪魔者が。


「木下殿。荒木殿はよく戦われた。そんなに責めなくてもよかろうに。荒木殿、一度休まれよ。次の機会に戦果を上げてくれ」


 足利義昭である。義昭は自分に味方をしてくれる者がいて嬉しいのです。


「公方様、ありがたきお言葉にございます。次こそは必ずお役に立ててご覧にいれます」


 荒木は下がっていった。秀吉は面白くない。なんでこいつが出しゃばってくるんだ。義昭は話を続けた。


「さて、木下殿。この後はどうされるお積りか?」


「公方様。この戦に勝ちたいのであれば口を挟まないでいただきたく存じます。それよりも先ほどの約束を進めていただきたくお願いいたします」


 先ほどの約束とは、明智十兵衛の寝返りです。そんなに簡単にいくわけがなく、そっちに専念してくれれば出しゃばってはこないと思っていたのですが、見込違いでした。


「それならば藤孝が動いておる。相手が相手ゆえ、時間もかかろう」


 うるさい。なんとかならぬものかと思っていたら、宇喜多直家が息子の秀家を連れていいタイミングでやってきました。


 宇喜多直家は腹黒さでは天下一品です。家臣の子に生まれた直家は、当主に濡れ衣を着せたり毒殺したり、いいように上手に振舞って成り上がっていきます。一国を治める大名となり今は仕方なく毛利についていますが、まだまだ成り上がる気満々でした。ところが、この戦に出向く際、体調を崩してしまい自分の命が長くないと考えた時、急にこの地位がもったいなくなりました。自分が苦労して得たこの地位を守りたくなったのです。


 誰を頼るか?と考えました。毛利、織田、誰につけば生き残れるのか?悩んだ結果、木下秀吉につくことに決めました。秀吉も同じような成り上がり者です。同じような境遇であれば悪いようにはしないだろうと考えたのです。その後、直家の体調は悪化するばかりでこの戦にはなんとか加わったのですが、そこで秀吉に息子の家氏を紹介し、素直に自分の気持ちを打ち明けました。秀吉は自分につくなら悪いようにはしないと言い、家氏に自分の秀の字を与えて、秀家に改名させました。この時、秀家はまだ9歳です。


「宇喜多殿。そのようなお身体で出向いていただかなくても用があるならそれがしが出向きましたのに」


「木下様。そうは言っても荒木殿のご様子では次にこの宇喜多に戦をご命じになられるのでしょう。秀家を預けに参りました」


 人質という事か。荒木があの様では次は勝たねばならぬ。ならば、


「公方様。宇喜多殿の陣へ出向き、足利将軍の旗印の元、織田と戦ってはいただけませんか?」




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