夢と現実
ここは諏訪大社、三雄と勝頼のミーティングはまだ続いていました。三雄は勝頼にお市の秘密についてわかった事を伝えています。
「俺の昔の彼女、恵子が俺と勝頼の関係を聞いて他にもそういう事が出来ないかと考えたんだ。あいつは学者だろ、すぐに原理を追求しようと、あ、ごめん。学者ってわかんないよな?」
「先生の事ですよね?」
「ちょっと違う。なんだろう、それ専門にこだわる人達、それじゃあオタクじゃんか。まあいいや、とにかく俺にこういう現象が起きるなら他にも起きてもいいと考えた。そして、勝頼の時代の有名な人の子孫を探したんだ。そしたら、偶然友人に織田の子孫がいた」
「織田信長の子孫ですか?三雄殿の時代まで繋がりがわかるのですね」
「過去を調べたりするテレビ番組があるからか、結構興味を持つ人が多くて。それでその子孫は鈴木茶々さんというのだが、こっちの歴史ではお市の娘が徳川秀忠っていう将軍様に嫁ぐんだ。秀忠は恐妻家で側女が持てなくて、子供はお市の孫という事になる。次の将軍もそれからも、途中まではお市の血を引いてるんだ。その関係でお市の子孫は多いのだが、鈴木茶々さんの親御さんがそれを知って娘に茶々と名前をつけたそうだ」
「嫁いだのは茶々の妹ですね。茶々が秀吉、妹が将軍、すごい一族です」
「そうなんだよ。歴史上これだけの家族はなかなかいない。それはともかく、茶々と名付けられた女性は名前の由来を知って茶々という女性の一生を調べた。そこで歴史学者の恵子と知り合うのだけれど、詳しい事を知った茶々さんは、歴史を変えたいと思うようになった。茶々の一生って時代に引っ掻き回された、なんていうか、不幸ではなかったけど不憫というか。普通の女の子でいられたらって思ったらしい」
「普通の女の子?ですか」
普通の女の子とはなんだろう?俺と知り合う前の徳みたいな女の事だろうか?
「茶々さんは考えた。お市の最初の旦那は信長に殺された。これは仕方がないと思うと考えたそうだ。あのタイミングで信長に逆らったらそうなるっしょ、っと現代っ子らしくドライに。問題はその後だ。そのまま子供3人とゆるりと生活ができればよかったものを政治の道具にされた。秀吉はお市を手に入れようと必死に頑張ったが柴田勝家に取られてしまった。その結果お市を殺す事になる。物凄く落ち込んでいたその時、大きくなった茶々を見た。その瞬間、驚き喜び、そしてお市の面影のある娘に手を出した。そして茶々の人生はそこから狂った」
「狂ったのでしょうか?この時代の女子は皆そのようなものです。確かに不憫ではありますが、当たり前のように思えます」
「鈴木茶々さんはそうは思わなかった。秀吉、こいつが全てを狂わせた。自分の名前の意味を考えた。なんでこの名前なんだ、きっと意味があると思い込んだ。その思いが同じ名前のご先祖様の事を、同じ女性として悔しいとおもった。そして恵子から俺の夢の話を聞かされた。恵子は恵子で学者魂というか、俺と勝頼のような関係を再現したがっていた。そして茶々さんに夢でお市に話しかけるように言ったんだ」
「それでお市が夢を見るようになったというわけですか?」
「ところがそんな簡単ではなかったらしい。なかなかお市と繋がらなくて、色々試したそうだ。お市がいた小谷城の跡地とかで野宿したり、俺と勝頼が諏訪大社だったと聞いて熱田神宮へ行ったり。で、諦めかけた時に台風が来て停電になった」
「台風と停電がわからないのですが?」
「そうか、そうだな。台風というのは暴風雨の事だ。夏から秋に多い。その時代だと河川が氾濫したりするだろう。それと同じと思えばいい。停電というのは電気の供給が止まってしまう事で、台風とかがくると起きるんだ。そうだ、電気の調子はどうだ?」
「蓄電池は順調です。高天神城の研究所では電気を使った乗り物や道具の開発を続けています。竹中半兵衛が指揮をしています」
「半兵衛はそろそろ戦場に復帰させたらどうだ?武田は大きくなって将が足りないだろう。氏邦や大道寺を助けたのもそういう意味だろう?」
「三雄殿のいう通りです。それで停電ですが?」
「おお、そうだった。この時代では発電所というところで電気を作って各地に送ってるんだ。それが暴風雨で線が切れて電気が来なくなったんだ。この時代は生活が電気に依存していてな、夜は暗いしテレビはつかないし、大変なんだ」
「夜が暗いのは普通では?」
ガクッ、それはそうなんだけどさあ。
「そうなんだが、まあ聞いてくれ。茶々さんは一人暮らしをしていてな。夜真っ暗で凄く怖かったらしい。そして電気が復旧して灯りがついた途端、ホットしたのかその瞬間に脳に何か刺激があったというんだ。なんとなく何かが変わった感じがして、それから夢の中でお市と繋がるようになったそうだ」
「どういう原理ですか?」
「わからん。茶々さんはお市にこちらの時代に伝わっているお市、茶々がどうなるかを夢で必死に伝えたらしい。そして」
「秀吉を殺せ、ですか」
「そうだ。茶々さんはこの間病気で亡くなった。もうお市が夢を見る事もないだろう。お市は見つかったのか?」
「それが………、」




