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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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策略

 直江兼続。昨日までは樋口兼続でした。直江家の養子だった直江信綱は、屋根裏に隠れていた賊を捕まえようとして大怪我をしましたが、看病の甲斐がなく亡くなりました。名門直江家を潰すわけにはいかない上杉景勝はすぐさま樋口兼続に養子に入るよう命じました。


「穴山様、ようこそおいでくださいました。名を改めまして直江兼続にございます。さ、どうぞこちらへ」


 穴山は勝頼と一緒に兼続にあった事がありました。若いのに切れ者という感じでしたが、直江を継ぐとは驚きです。


「直江殿。これはまたおめでとうございます。何やら直江殿の思った通りに進んでいるようですな」


「何をおっしゃいますか?それがしのような若輩にそのような。これから色々とご指導いただきたく」


「景勝殿は城を占拠したとお聞きしました。景虎殿はご立腹でございました。これはどういう事ですかな?」


「景勝様こそが上杉を継ぐのに相応しいお方、先手を取るのは必定でござる」


「我がお屋形様が遺言状を持ってこられるまで待てなかったと?」


「不可思議な事がございました。遺言状を追っていった景虎殿の忍びが殺されていたのです」


「ほう、それが何か?」


「その忍びは軒猿と言いまして、例の甚内の一番弟子です。最初はお屋形様と甚内を殺したのはその軒猿だと思いました。甚内を殺せる者がそういるとは思えないのです」


「謙信公を殺した犯人が見つかったのですか?」


「我らには甚内の二番弟子の梟という者がおりますが、梟が申すには軒猿と梟はお互いに見張りあっていたのでお屋形様殺害には関わっていない。第三者がおると」


「ほう、それではその者がその軒猿とやらも殺したと?」


「おそらくはですが。となると誰の手配かということになりまする。景虎殿でもなく我が殿でもないとすると………?」


「武田を疑っていると?」


「そうは申しておりませぬ。ただ第三者となれば武田か北条か。それ以外」


「それ以外、ですか?」


 兼続は穴山を見て微笑んだ。穴山はそれ以外って誰の事を考えているのかわからなかったがしばらくして、


「まさか。そのような?」


「さすが穴山様です。お気づきになられるとは」


 先読み、先を読んでの城占拠か。それにしても速い。


「それはともかく城を占拠した理由としては弱すぎませんか?」


「殿の命をお護りするのが大事。どこから狙われるかわからない状態では籠城が一番安全でござる」


「いつから準備されていたのですか?」


 兼続は笑って答えませんでした。そして穴山を景勝の元へ案内しました。





「景勝殿。戻って見れば籠城とは、驚きました」


「武田殿を待っている余裕がなくなった。遺言状に景虎と書いてあったなら潔く腹を切ろう」


 景勝は凛として言い切りました。遺言状は景勝と一点の曇りもなく信じているようです。


「それでは景勝殿。お屋形様が遺言状を持ってきた際はどこに皆を集めるお考えか?皆の前で披露してこその遺言状でござる」


「遺言状は景虎殿の前で開封されたし。それがしは結果だけで結構」


 景勝は自信ありげに文句あるかとばかりに強く発言しました。穴山は目を開き驚きました。若造と思っていた景勝がここまでの男だったとは。謙信無き後の上杉などと思っていましたがそう簡単ではなさそうです。


「それでよろしいのか?」


「結構でござる。武田殿には遺言状の通り、義に則った振る舞いをしていただけるとこの景勝、信じております」


 穴山は景勝に感心して自分の陣に戻りました。そこには上杉重臣の2人、北条と斎藤が待っていました。


「これは北条殿、斎藤殿、お揃いでどうされた?」


「穴山殿。景勝殿はなんと?」


 穴山は景勝の対応を2人に説明しました。


「兼続殿はそこまで決心されていたか。我ら2人は遺言状に従います。どちらかが跡を一日も早く継がねばなりません。武田様はまだでござるか?」


 そこに善光寺からの使者が現れました。使者はゼットの紅です。


「穴山様。大変でございます。遺言状が北条の忍びに盗まれました」


「!!! 」


 北条と斎藤は顔を見合わせて震え出しました。


「あり得ん。お屋形様の遺言状を盗むなど………、」


「盗んでどうするというのだ。使者殿、北条の忍びというのは間違いないのか?」


「はい。上杉様のところの者ではありません」


 それを聞いた穴山は直江兼続から聞いた事を2人に話しました。第三者が介入していると。


「北条だとすると景虎殿の支援という事になる」


「遺言状がないとすると………、北条に継がせるわけには………、」


 穴山はぶつぶつ呟いている2人を横目に、紅に問いただします。


「紅、遺言状が無いという事になるが、お屋形様はなんと言っておった?」


「お亡くなりになられた謙信公に合わせる顔がないとおっしゃっておられました。そして遺言状を盗んだ北条氏邦を懲らしめると」


 斎藤と北条(きたじょう)は話をすっかり信じています。敵は北条、そして景虎。第三者と言っただけで北条とは言っていないのですが、話の流れで信じ込んでいます。



 これは勝頼と穴山で仕組んだ芝居です。偽の遺言状を盗まれた事を逆手に取り、上杉家だけで決着をつけさせようとしたのです。紅が絶妙のタイミングで現れるなんて出来過ぎです。結果、上杉の一部の重臣は景虎の味方をしましたが大半が景勝につきました。景虎は御舘に籠城しましたが、長くは保たず景虎は討ち取られました。穴山は見ていただけです。


「さて、こちらは決着。恐るべきは直江兼続ですな。第三者とはあの男の事、いやはや話には聞いてはいましたがまさかの登場ですな。それはともかく海津城はどうなりましたかね?」

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