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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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桶狭間前夜

 今川の勢力を削るにはどうしたらいいのでしょうか?武田晴信は、今川義元が2万の軍勢を連れて西上すると聞いてから1週間考え続けました。そこに山本勘助が目通りにやってきました。


「お屋形様に申し上げます。義元公より武田家に応援の要請がございました。京へ上るゆえ兵を出せとの事でございます。ついでに武田家の重臣の顔を朝廷に繋いでやろうとの思し召しでした」


「ふん。義元め、図に乗りおって。だがこれで腹は決まったわ。勘助、余は考えていた事があってな」




 晴信は親戚筋の穴山信君に兵500を与え、今川義元の元に応援に行かせました。別働隊として山本勘助以下20名の忍びをつけて。


「えっ、そんな説あるの?初めて聞くんだけど」


「それはそうでしょ。誰にも言った事ないし。本当にそうなるかは後で勝頼君に聞いてね!」


 恵子は話を続けました。



 今川義元が駿府を出て浜松に差し掛かった頃、天竜川沿いを下って穴山信君隊が到着しました。この頃、遠江は今川領なので特に問題もなく合流できています。穴山は勘助を連れて挨拶へ赴きます。


「今川様、穴山信君にございます。武田晴信の命令により参上仕りました。この度はご出陣おめでとうございます」


 勘助は後ろに控えています。義元はその勘助の顔をちらりと見てから、


「穴山殿。久しぶりだな、お主が来るとは晴信殿もこの義元を軽くは見ていないという事か」


「お屋形様は三国同盟を重んじており、此度もそれがしに武田の名に恥じぬ戦いをするよう命じられました。どのようなお役目でもお引き受けいたし申す」


「勘助。晴信殿への伝令ご苦労であった。そなたのお陰で穴山殿が来てくれた。まさか穴山殿に来ていただけるとはな。で、穴山殿へお願いしたい事がある」


「はっ、なんなりと」


 穴山信君は武田家の外務大臣のような役割をしております。穴山家は武田家と縁組をしており父親は晴信の姉と結婚しています。つまり信君は晴信の甥にあたります。そしてこの後、信君は勝頼の姉を娶ります。もうグチュグチュですね。

 その関係でご親戚衆として武田家では高い位置にいて、重要な役目を行う事が多かったのです。今までも何度か今川義元と交渉するために駿府へ出かけた事があり、今川義元は今回の戦に穴山が来た事に満足していました。そして、ならばと思いつきで指示を出します。


「この後、我が軍は沓掛城へ向かう。そこで軍議を開く。三河の松平を知っているか?」


「元康殿ですか?一度寺でご挨拶だけですが」


「その元康を先鋒に砦を攻めさせる。そなたには松平を監視していただきたい。余は松平を使いたいのだが重臣の中にいつ裏切って織田へ付くかわからんという声があってな。念のためだ。戦には参加しなくて良い。行く末だけ見届けて報告してもらいたい。勘助!」


「はっ!」


「穴山殿について行くがよい。報告は毎日頼む」


 面会は終わり、今川軍と一緒に沓掛城へ入りました。その間、穴山と勘助の間では密談が何度か行われています。

 1560年6月6日、今川義元は沓掛城に入りました。重臣が続々と集まり軍議が開かれました。今川義元以下朝比奈、井伊、由比、蒲原、松井等今川家自慢の有力武将たちは各々の意見を出し合います。


「織田信長はどこにおるのじゃ。小戦は起きているようだが所詮小競り合い、さっさと片付けてしまおう」


「清洲にいるという情報がある。草によると籠城するようだ」


 草というのは忍びの事です。各地に長年住み込み草のようにひっそりと情報を集めています。戦国では各武将が戦に備えて草を各地に配置していました。


「籠城か。信長はうつけ者だというがこの軍勢に向かってくるほど阿呆ではないという事だな。ならば城、砦を落としつつ清洲へ向かうべし」


 軍議は織田信長がどう出てくるか、それに対してどう戦うかについて行われました。軍議も4日目になりました。その間にも草からの情報が寄せられていきます。


「織田信長は毎晩酒を飲んで軍議にも出ずにおるそうな。織田の重臣達は勝手に籠城の準備を進めているそうだ」


「うつけ者というのはただの臆病者という事なのか?織田信長、大した男ではないな」


「織田信長は家督を継いでから領地を広げている。今までも織田には何度もやられやり返しているではないか。何か企んでいるのではないか?甘い相手ではないと思うが」


 その通りなのです。今回の戦の目的は織田家の抹殺です。今川義元は最近の織田との小競り合いをウザいと思っていました。そして長年人質となっていた松平元康を家に帰してやり手柄を立てさせてやりたいと思っていました。織田と組む噂があるなら織田を失くしてしまえば良いのです。ですが、譜代の重臣達はそうは思っておりません。松平を先鋒にし使い捨てのつもりでいたのです。その思いの差がひっそりと悲劇を呼ぶのです。


 6月10日の軍議には、穴山信君と山本勘助も呼ばれました。この2人が軍議に参加した事は記録には残っていません。この後の出来事が全てを闇に葬ったのです。





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