超急展開
ここは春日山城に用意された勝頼の部屋。甚内が挨拶に来たところです。
勝頼は甚内から秀吉が氏政をなんらかの理由で味方にしたと聞かされました。氏政は秀吉の草と頻繁に会っていたそうです。らだ、警戒がきつくそれ以上の事は甚内もわかっていませんでした。
「氏政と秀吉に接点があるようには思えないのだが。秀吉というのは本当に恐ろしい男だ」
「理由はなんにせよ、北条家はこの上杉家督争いをキッカケに関東、そして武田領へ攻撃を仕掛ける様子。勝頼様へはそれだけをお伝えしたく参りました」
「お前はどうするんだ甚内?」
「謙信様についています。北条にしても謙信様の居城は攻めないでしょう。この春日山城にいて謙信様をお護りしてまいります」
「ん?という事は」
「はい。景勝様へはそれとなく話をしております。あとは景勝様の器量次第かと」
甚内はお辞儀をして部屋を出ていった。甚内は、景勝に早々に春日山城を取れと言っている。いくら北条でも謙信がいる春日山城は攻め難い筈だ。
勝頼はまだ諦めずなんとか戦にならない方法を考えている。どこで間違えた?一体秀吉は何をしたんだ?もう時間がない、明日には謙信は跡取りを景勝に任命するだろう。それを聞いた景虎は城を出て北条とともに攻めてくるという事か。やはり無理か、もう戦は避けられない。残念だが甚内の言う通りのようだ。勝頼は今できる事をやりはじめた。
勝頼は吾郎を呼んだ。
「すまぬが今から文を書く。これを伊達と蘆名に頼む」
次に穴山を呼び、各武将への指示を頼んだ。北条との国境強化を。信豊と武藤喜兵衛には織田と毛利の動きを見張らせ、武田領への侵入を防ぐ事に専念するように再度指示をした。喜兵衛は織田を攻める絶好機と言っているが、今は外の戦に手出ししている場合じゃない。それに織田の弱体は秀吉を助ける事になる。
翌朝、事件が発覚した。朝、謙信の様子を見に行った小姓が、
「大変です。お屋形様が!」
声を聞いた勝頼、景虎、景勝は謙信の部屋に向かいました。3人が部屋の襖を開けると、
「なんと」
「なんと言う事だ」
「こんな事が」
3人が見たものは、斬り殺された謙信と甚内の死体でした。
城は大騒ぎとなり、重臣達が大広間に集められました。
景虎は、
「誰が父上をやったのだ?絶対に許さんぞ!」
といえば、景勝は
「その通りでござる。すぐに門を閉め誰も出れないようにしています。なんとしても誰がやったのかを突き止めなければなりますまい」
とそこに景虎派の重臣、本庄秀綱が口を挟みます。
「確かに下手人を捕らえる事は大事でござる。ですが、上杉家の頭領を決めることも大事」
それを聞いた景勝派の重臣、家督を継いだばかりの直江信綱は、
「確かにそうであろうが、そもそもお屋形様に手をかけて得をするのはどなたかな?」
「どう言う意味でござるかな?返答によっては聞き捨てならぬぞ!」
「下手人と申されたのでな。城の者であれば損得を考えるのは道理でござろう」
「暗に景虎様を疑っておると言う事であろう」
「そうは申してはおらん。本庄殿には思い当たる節でもあるのか?」
景虎派、景勝派の言い合いが始まりました。あまりの醜さに勝頼が間に入ります。
「一同お静かに願う。今は争っている時ではなかろう。犯人を見つける事も大事、跡取りを決める事も大事だ。跡取りについては本来なら謙信公自らが皆様を集めて話をされるところであったがこうなってはそうもいくまい」
「武田様。武田様は景勝殿に妹君を嫁がせておられる。景勝殿を推されるのではないか?」
景虎がストレートに聞いてきた。こういうところは嫌いではない。だが秀吉に付いた北条に味方はできない。
「それはない。余は中立だ。上杉家の内紛に付き合うつもりはない」
それを聞いた景虎はそうくるであろうとばかりに
「そう仰ると思っておりました。それならば恐縮でございますが武田様にはお引き取り願いたく。これは上杉家の問題でござる」
これは想定内。
「ごもっとも。だが、そうもいかん」
「なぜでござる」
「上杉家の跡取りについては謙信殿から遺言状を預かっているからだ」
「おおっ!」
「なんだって!」
一同ざわざわしています。勝頼は一同の顔色を観察しています。怪しいのは………、
「一昨日、謙信公の部屋に呼ばれて遺言状を預かった。どうやらこうなる事を予期されていたのかもしれん。余は万が一の時の事として受け取ったのだ。使う事がない事を信じてな。この警戒厳重な春日山城でこのような事が起きるとは思ってはいなかった。それに謙信公をお護りしていた手練れの忍び、甚内までも殺されている。普通では考えられない」
勝頼は皆の顔色を見ながら話しています。まさか、そんなはずはと顔に出ているのはあの男でした。その時、控えていた徳が突然天井に向かって発砲しました。
『ダーン!』
一同突然の発砲音に驚いて固まっています。激しい足音がして天井から血が落ちてきました。だれか潜んでいたようです。徳が叫びました。
「曲者です。捕まえてください」




