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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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内乱防止

「徳!出しゃばるな!」


 それを聞いた謙信は慌てて、


「とく、わ、わか、た。かつ、よ、りも、おこ、る、な。わし、に、めん、じ、て。な。とく、て、てをに、ぎ、て、くれ、ぬ、か」


 徳は謙信の手を握ります。勝頼は徳を睨みますが、睨み返されました。目力が強いというか自信に満ちた目です。自分の行動に自信があるようです。


「徳が出しゃばりまして申し訳ない。上杉殿、甚内殿、ご勘弁を。改めまして武田勝頼より、家督相続についてご提案申し上げる。次のどちらかをお選びいただきたい」


 謙信は勝頼を見て黙って聞いている。勝頼は続けた。


「まず1つ目。家督相続をどちらかに明言していただく。もちろん、景虎殿、景勝殿、重臣達の前で。後見人としてそれがしが同席する。それで戦になったとしても片方には家督を継ぐ大義がない。その場合それがしはどちらにも味方しません。上杉内で勝手にやっていただく。もちろん、こちらの領地に影響がある場合それなりの対処はさせていただくし、もし謙信殿のご意向と異なった場合は敵国として対応いたす」


 勝頼はそこで一息付いて謙信の様子を見たが動揺はしていないようだ。結構勝手な事を言っているのだけど。ならばと、


「2つ目は、おそらく徳が考えているのもこの案のようだが、上杉は武田の属国となってもらう。上杉の領地相当は配分しよう。だが、その場合どちらかは飛騨へ行ってもらう。越後は北への備え、飛騨は美濃、近江への備えだ。国替えで信濃から離れてもらう事になる。どっちが離れるかはお分かりでしょう?」


 謙信は目を見開いている。上杉に武田へ降れと言われたのだ。徳もそれがいいと言っている。甚内も驚いている。その発想はなかった、というより最初からあり得ない。上杉の家の問題でなぜ、武田の下につかねばならぬのか?あり得ない。勝頼は驚いてもらって満足気味に話しを続けました。


「2つ目の効果は上杉内で戦にならない事。逆らう者は必ずでますがそれは武田の内紛としてそれがしの責任で片付けます。越後に残るのは景勝、景虎は一大名として飛騨へ行ってもらう。ただこの場合、武田に降る事を景勝、景虎両者が納得せず武田と上杉の戦になるかもしれません。その場合は手加減はいたしません。謙信殿は勝頼に任せると仰った。俺に任せるということは俺の物にするという事です。そして俺は戦は好まない!」


 さあ、どうする?軍神 上杉謙信よ。




 謙信は目をつぶって考えています。長尾家に生まれ、上杉の姓を手に入れました。関東の宿敵北条家と争い、小田原城を10万の軍勢で包囲もしました。武田信玄には何度も邪魔をされ信濃衆を救う事が出来なかった。一向一揆との戦いに時間を取られた。そう、謙信の一生は戦いに明け暮れた人生だった。

 勝頼は戦を好まないと言う。戦を好まない男に軍神がすがる、面白い事だ。この戦国はいつまで続くのか?勝頼なら終わらせることができるのか?


 徳が手を強く握ってきました。目を開くと謙信の顔を見つめています。優しい笑顔で微笑みかけています。あなたはよく頑張った、あとは勝頼に任せれば大丈夫、と言っているかのようです。




 その場では結論は出ませんでした。謙信はもう少し生きそうです。死ぬまでに結論を出して欲しいところですが重たい話ですのですぐには難しいだろうと与えられた部屋に引き上げました。部屋に戻る途中、勝頼は徳の手を握ります。


「あれでいいのよね」


 徳は小声で話しかけます。


「よくやった。あれでいい」


 徳は景虎と景勝が戦になるのを避けたいと勝頼に先ほどのやり取りを申し出ていました。謙信説得に芝居を打ったように見えますが、本心です。この2人の思いは同じでした。なんとか2番目を選んで欲しいと。


 部屋に戻ると穴山が北条氏邦と話し込んでいました。


「景虎殿に聞いたのですか?随分と行動がお早いですな、氏邦殿」


「これは武田様。謙信公のご様子はいかに」


 ふーん、さてどういうつもりか?勝頼は越後に来る前に曽根を使者として北条家の当主 氏政に文を届けさせました。内容はシンプルです。上杉謙信の口から跡取りを明言させに行く、武田家はそれを尊重する、と。曽根からは氏政はわかったとだけ言って引っ込んでしまったと連絡がありました。氏邦はそれを聞いてからここに来たのか?それだと早すぎるから景虎に頼まれたのか、もしくは独断か?


 北条家の中でこの氏邦は有能な武将だったと聞いています。できれば味方にしたいところです。


「お元気であられた。多少言葉が不自由になられているが会話は可能だ。養生すればまだまだ長生きされるであろう」


 それを聞いた氏邦の顔が嫌そうに変わるのを勝頼は見逃しませんでした。どうやら穏やかにはすまなそうです。氏邦は自分では気がついてないのか、


「そうですか。それは何よりです。北条家といたしましても謙信様にはまだまだ長生きしていただかねば困ります。それがしも面会を申し出たのですが景勝殿がうんと言わずご挨拶ができていないのです。武田様からおとりなしをお願いはできませんでしょうか?」


「それは無理だ。ここは上杉の家だ。余所者がとやかく言うことではない」



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