謙信危篤
「木下殿、というわけでな。俺に賛同した水軍をここに連れて来た。逆らった者は皆殺しにして鮫の餌にした。口封じも兼ねてな。それでこれがその鉄砲だ」
次郎衛門は盛信に向かって発砲したのですが、家来が体を張って銃弾を受け止めました。その場にいる者は皆、初めて見る火縄のない鉄砲に驚いて固まっていましたが、盛信の部下が、
「殿、危ない」
と人の盾を作ったため、盛信は命拾いをしました。そして人数に勝る盛信派が船を制圧したのです。
秀吉は鉄砲を見て、
「火がなくてどうやって弾が飛ぶんだ、こりゃ?」
「原理は分からん。だが現物があるのだから鍛治屋にでも同じ物を作らせてみればいい」
「弾は?」
「1発残っている。弾も分解した方がいいと思い撃たずにとっておいた。そこに指を入れてそれを引くと弾が出る仕組みだ。で、木下殿、俺の待遇はどうなる?」
「まずは毛利輝元様に会っていただく。下話はしてある。大阪湾の海戦の結果を話せばいい。まだ、負けた事は知らないはずだ」
大阪湾で毛利水軍、九鬼水軍双方が全滅し大騒ぎになっている頃、戦艦駿河が演習から戻ってきました。徳はホクホク顔です。
「ツインスクリューのガソリンエンジン駆動が上手くいったし、対船用の武器も実戦で使える。もうこれで海に敵はいないわね」
「徳様。今開発しているミサイルというやつはどうですか?」
半兵衛の問いに徳は、
「飛ぶんだけどね、もう少し命中精度が上がらないと実戦では使えない。それでね、空母を作ろうと思うの」
この2人、恐ろしい会話をしています。戦国ですよね。戦艦駿河は初期型ではなくマークIIと呼ばれる改良型にモデルチェンジしています。駆動、武器が大幅に改良されていて、海軍の主力部隊はこの船に乗っていました。
船が駿河湾に入り、造船所の沖に着いた時に異変に気付きました。造船所が砲撃されたように崩壊しています。
「徳様、大変です。甲板へ上がってください。造船所が!」
「!!!」
船員の声に驚いて目にした物は、廃墟と化した造船所でした。
「第一次警戒態勢、小駿河全機発進準備。360度監視開始、とにかく情報を集めて。半兵衛殿、指揮を頼みます。ゆず、はな、かな、小駿河にのり込んで上陸、被害状況を確認して!」
徳は一気にまくし立てて船長室に入ります。一体何があったの?
徳の親衛隊、船員を乗せた小駿河と呼ばれる10人乗りの小型船、と言ってもガソリンエンジンで動く優れものです。大型のモーターボートに武器を搭載した小型戦闘船です。小駿河はゆっくりと陸に近づいて様子を見ましたが、動いている怪我人が見えました。敵の姿はありません。
「上陸しましょう」
ゆづの指示でデッキに船を付けてまずは先行で3人が探索し安全を確認します。ゆず、はな、かなはボーガンを持って攻撃態勢に入っています。先発隊は攻撃される事もなく敵はいない事がわかり全員が上陸しました。
「怪我人の救助を優先に。はなとかなは研究所へ。急いで」
ゆづの的確な指示の元、全員が素早く動きます。見事に訓練されています。ゆづは勝頼から特別リーダー教育を受けていました。今のところそれを受講したのは、徳、ゆず、錠の3人だけです。
研究所は無事でした。敵は研究所に気がつかなかったようです。ただ、研究所の職員は皆、一つの部屋に籠りバリケードを作って助けが来るのを待っていました。そのため何がどうなったのかはわかっていませんでした。
怪我人の事情聴取で海から砲撃を受けた事がわかりました。戦艦富士の大砲だと言っています。
検問の兵に聞くと、仁科盛信が通ったそうです。お屋形様の命令で来たと言っていましたとの事。
それを上陸してきた徳と半兵衛に報告すると、半兵衛が
「仁科様は?怪我人の中にはいないのか?ご家来衆も誰一人いないだと!これは、まさか」
「考えたくないですが、お屋形様に報告を。もしお屋形様の命令が嘘であったなら、そういう事になります」
ゆづは悔しそうにしています。そして、
「追いかけなくていいのですか?仁科様は戦艦富士を盗んだのでしょう?」
「ゆづ。気持ちはわかりますがこの広い海のどこを探すというのですか?それに勝手に動く方が問題になりそうです。ここはお屋形様にすぐに知らせましょう。早馬を用意してください。まずは駿府城へ向かいます」
勝頼は古府中に滞在しています。毎日、各地の草から情報が入って来ていて整理するだけで大変です。そしてついに恐れていた報告が飛び込んできました。
「上杉謙信公が倒れたとのことでございます。厠で用を足している時に倒れ、危篤でございます」
「そうか。真田、馬場、内藤、穴山、小山田を呼べ。余も出陣する。それと徳、半兵衛、ゼットの連中もだ」
謙信が危篤か。このまま死ぬのだろう。家督ははっきりさせないという意志はかわってはいまい。さっさと景勝支援を明確にして終わらせないと面倒臭い事になる。できれば上杉内の戦にしてもらい、遠方支援で済ませたい。あとは北条氏政がどう出るか。
「北条へ文を出す。使者は、うーむ。曽根にしよう」
三河勢は使いたくない。織田と毛利の戦がどう転ぶかわからん。とそこに徳が突然現れました。
「早いな、今お前を呼び寄せようと………… 」
「仁科盛信、謀反。戦艦富士を奪い造船所破壊の後、逃亡」
なあにいいい!




