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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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反乱

「船を見せてくれ。それとここにお市様がいると聞いたのだが?」


 造船所には所長の次郎衛門がいました。次郎衛門は勝頼が子供の頃から仕えている家臣で元々は鍛治師です。諏訪で徳から教科書を習い、兵器開発に勤めていましたが大崩に引っ越して来てからは船の設計、開発、製造を担当しています。研究所の所長は徳、造船所は次郎衛門が所長です。竹中半兵衛は両方の顧問となっています。


「船でございますか?失礼ながらお聞かせくださいませ、お屋形様からはどういったご指示でございますか?」


「いずれ水軍を任すと言われた。ゆえに見聞をしておこうと思ってな。先の軍議では戦艦富士と駿河という船に大砲を装備したと言っておられた。どの船が富士だ?」


 おかしい。流暢に話していて普通なら疑う要素はないのだが、お屋形様は最近海軍と言うようにと徹底されている。またここで水軍という言葉を使うのだろうか?


 次郎衛門は疑問には思いましたが話は筋が通っていて、しかも相手がご兄弟の盛信という事もあり深くは考えなかったが

 一応用心する事にした。ー


「わかり申した。戦艦富士へご案内いたします。大型船なのでここからこの船に乗っていただきます」


「ここには富士はないのか?」


「はい、富士をここに入れるには他の船を全て沖に出さないと入りませんので」


「そんなに大きな船なのか。それは楽しみだ。配下の者を全て連れて行く。用意してくれ」


 また大勢連れて行くのだなと思いましたが、ここを任せられるならばそれもあるかと船を3隻用意するよう部下に指示をします。


「盛信様、それがしがご案内仕ります。船の事は熟知しておりますので」


「それはありがたい。ところでお市様が見当たらないようだが、息災か?」


「お市様はここにはいらっしゃいません」


「隠すでない。古府中からここに来たと聞いたぞ」


「はあ、仰る通りここに滞在されておりましたが、居なくなったのでございます」


「どういう事だ?お屋形様の正室であるお方が居なくなったとは、一大事ではないか?我ら家臣にはなんの話もないぞ」


「それはお屋形様が口外しないようにとの事でしたので。盛信様はどこからこの話を?」


「古府中では噂になっているそうだ。それはお市様を見かけなくなればわかるだろう」


 ここも筋は通っている。考えすぎか。





 3隻の連絡船に乗り込んだ盛信達は海上に浮かぶ大きな船、戦艦富士に近づいた。


「大きな船だ。これが富士なのだな。もう一隻の駿河はどこにある?」


「駿河は訓練中で今清水の沖合いにおります。徳様と半兵衛殿もそちらに出かけております」


「この間の軍議が終わった後の宴会で徳様が変わった唄と踊りを披露された。あれは何という物なのだ?」


「さあ、ムージックとか言われておりますが、それがしにはわかりません」


 お市も徳もいないのか。だが邪魔をしそうな戦艦駿河がいないのは好都合。





 船に乗り込んだ盛信と部下達は戦艦富士について説明と案内を聞いた。非常に丁寧にわかりやすく教えてはもらったのだが、わからない事が多い。


「そもそもこれはどうやって動くのだ?こんなに大きい船を人が漕ぐのか?」


「はい。漕ぐ事もできますが、それだけだと長期航海は大変ですので風を利用します。そこの大きな木、マストと言いますがそこに布を張って風で進む事ができます。凧上げの原理です。それと………… 」


「面白いな。これも兄上の発想なのか?」


「お屋形様と徳様です」


 教科書の事は秘密になっている。これはたとえ重臣でも話してはいけないのだ。


「富士の乗組員は操作はできるのだな?」


「はい、訓練もしておりいつでも出航できます」


「よし、では出航しろ」


「いえ、それは」


「水軍を任された俺がいうのだぞ、出航だ」


 おかしい、やはり何かおかしい。


「仁科様、お屋形様の許可なしに出航はできませぬ」


「うるさい。乗組員を集めろ、俺が話をする」




 次郎衛門は仕方なく乗組員を甲板に集めました。


「仁科盛信である。皆も存じておると思うが武田信玄公は我が父だ。さて、皆に質問がある。ここにいる者は元々武田の者は少ないと聞くがそうだな、今川家、徳川家が存在していた時には敵だった者、手をあげい」


 次郎衛門は焦った。何を言いだすのだこのお方は。甲板にいる8割の者が手をあげた。戦艦富士の乗組員は伊豆、興津、焼津の水軍経験者が多い。研究所や造船所の者は徳と半兵衛に飼いならされているが、船員は海の上でしか生きられない者が多くちょっと異色だった。陸に上がれば酒と女、船では過酷な生活、誰が上司でもお屋形でも構わない連中が多い。


「このまま船を出航する。目的地は大阪だ。そこで毛利水軍と織田水軍がぶつかる。それを遠くから見る任務だ」


「お待ちください、仁科様。そのような連絡を受けてはおりません。お屋形様に確認させてください」


「その必要はない。逆らう者は今すぐ船から降りろ!ここからは俺が仕切る」


 それを聞いた盛信が連れて来た兵達が刀を抜いた。船員がどよめく。盛信の強引さに抵抗する者が現れて喧嘩になった。盛信の兵は船員を容赦なく斬り殺す。


「何をする?まさか、謀反では?」


「次郎衛門、その通りだ。俺はこの船を手土産に毛利へ行く。皆の者、ついて参れ。悪いようにはしない」


 船員達は、


「家族が興津にいる。毛利ってどこだ?」


「安芸だ、西だな」


「俺は降りる」


「面白そうだから俺は行くぞ」


 勝手に話出します。次郎衛門は懐から銃を取り出しました。それを盛信へ向けます。


「それは何だ?」


「鉄砲、こんな事もあろうかと用意だけはしておきました。お屋形様は我らを水軍とは呼ばないのです」


「鉄砲だと?火縄がないではないか。お前達、次郎衛門を殺せ!」




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