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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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訓練

 勝頼は重臣達と打ち合わせした後、菅山村や大崩には寄らずに古府中へ戻りました。上泉伊勢守と本多忠勝が同行しています。この2人は元々は敵です。穴山は不安そうでしたが勝頼は全く気にしていません。それだけこの2人を信用していて、頼りにしているのです。そもそもなんで駿府城に忠勝が来ていたのか?勝頼は忠勝を使って旧徳川に従っていた国衆を取り込みました。その功績で忠勝を城持ち大名に取り立てたのですが、それ以外の者達にも手厚い待遇を施しました。勝頼の旧徳川勢への対応に感謝の意を示したく勝頼を待ち受けていたのです。


 槍で武田軍を苦しめた本多忠勝、武に優れ戦略でも半兵衛や喜兵衛に引けを取らない上泉伊勢守、人は宝なのです。堂々と歩く勝頼を見て、信頼されていると感じた2人はいい主人を持ったと改めて思いました。


 古府中に着くと、勝頼は父親に戻り信勝、信平に会いに行きました。すくすくと育っていて一安心です。正妻の彩の部屋で一晩過ごした翌日、部下の報告を受けた後訓練が始まりました。


「お屋形様は剣の筋がいいようですがどなたかに師事されたのですか?」


「いや、独学だ。子供の頃から諏訪の山を駆け巡りやんちゃに過ごしていただけだ」


 伊勢守の問いに息をゼーゼーさせながら答えます。この爺さん、全然疲れてねえーじゃん。どうなってんの?筋がいいと言われたものの勝頼はもうボロボロです。伊勢守の動きには無駄がありません。攻める時も守る時も最低限の動きで最も効果を出しているように見えます。


「もしや、足さばき?」


 勝頼の独り言に伊勢守は頷きました。伊勢守は観戦していた本多忠勝に、


「本多殿。お手合わせをお願いしたい」


「おうよ、望むところだ」


「お屋形様、見るのも修行です。本多殿とご自分の動きをよく比べた上でそれがしの動きをご覧ください」


 本多忠勝は木刀を取ります。力任せの剛剣とでもいうのでしょうか?見ている勝頼のところまで刀を振った勢いで風圧が感じられそうな力強さの剣です。それを伊勢守は避け、時には受け、時には薙ぎ払います。そして忠勝の隙を見つけるとパーンと木刀を振り落としていきます。


「参った、もうひと合わせお願いしたい」


「参った、もうひと合わせお願いしたい」


「参った、もうひと合わせ…………」


「本多殿。お手前と違って拙者は年寄りなのでそこそこにしていただきたい」


「伊勢守様、忠勝とお呼びください。これより忠勝は伊勢守様を師と仰ぐことにいたします。誠に見事な太刀筋、それがしの剛剣を真っ向から受け止められたのは初めてでございます」


 そうなんだよな。避ける時はしなやかに、なんていうか川の上を浮かんで流れていく木の葉のような?


「それでは忠勝殿。少し休憩した後、次は槍を持ってください。槍の方が得意なのでしょう?」


「そうですが、槍の方が有利ではありませんか?」


「必ずしもそうとは限りません。武の道は長く深いのです。さて、お屋形様。それがしはあえて3種類の動きをお見せしました。違いがわかりましたでしょうか?」


「なんとなく、だ。避ける時の動きには一切の無駄がない。風になびく柳のようでもあり、川面を流れる木の葉にも見え、舞う桜の花にも見えた」


「その通りでござる。この動きを練習して下さい。陰流奥義、柳風舞桜につながりますゆえ」


「それと薙ぎ払った時だが忠勝の力に逆らわず、見事に受け流していたというのはわかったのだがうーむ、そうだ、これも足の動きだ。いなしていた」


「お見事でござる。陰流の技は足捌きにあります。もう一つ残っております。忠勝殿の刀を真っ向から受け止めたこれはどう見られたか?」


「普通なら踏ん張って受け止める。流石の伊勢守もこの時は力が入っていたように見えた。だが、忠勝の力任せの剣をまともに受け止めることは至難の業。どうやったのかわからなかったが、今の会話でわかったよ。真っ向から受け止めていないのだな?」


「参りました。ではどうやったのか、お分かりか?」


 勝頼は伊勢守の動きを思い出していました。なんだ、どこがどう違う?と。伊勢守も驚いていました。あれだけ見ただけでそこまで理解できるとは、武田勝頼、ただの武将ではない、と。伊勢守は北条氏康にも上杉謙信にも会った事がありました。2人とも威厳というか威圧というか武将としての凄さを持っていましたが、勝頼から感じる物とは何かが違います。


「知性?」


「ん、何か言ったか?」


「いえ、なんでもありません。わかりましたか?」


「一歩前に出ていなかったか?」


「そうするとどうなります?」


「力が集中しなくなるのではないか?位置をずらす事によって力をいなす」


「お屋形様。お見事にございます。それではそれを習熟していただきたく。それがしとの訓練はその後に」


「わかった。忠勝、お前も励め。それと剣の修行が終われば次はお主に槍を教えてもらおうと思っている。頼むぞ!」


忠勝は槍を持って伊勢守に向かっていった。勝頼は訓練をしていた庭から離れ高遠の山に向かった。





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