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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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関東圏

 勝頼は伊勢守を連れて信玄のところへ連れて行きました。結局、徳を襲った犯人はわからずじまいでしたが、伊勢守によると賊の大将は塚原卜全の剣を学んだ者だそうです。


「伊勢守、心当たりはないのか?」


「数名おりますが、当てずっぽうというわけにもいきません」


「同じ師だからか。はっきりするまではという事だな。相変わらず律儀な事よ。伊勢守、余にもお主の剣を教えてくれんか?そうだ、お主の領地は遠江に与える。高天神城って知ってるか?」


「海の近くの城、攻め落とすにはかなり難儀とお見受けしました」


「あそこをやるよ。三河まで手に入れた今、あの城の価値は薄れてはいるが駿府から遠すぎてもいかんし、北条や上杉に近くない方がいいしな」



 伊勢守を信玄に紹介?した後、勝頼達は帰路につきました。徳は今回何もいいところがなく落ち込んでいます。


「徳、帰ったら半兵衛と合流して次の武器を頼む。俺はしばらく忙しいから大崩はお前に任すよ」


 徳はそれを聞いてやる気になったようです。一行は三河に入り、武藤喜兵衛のところで一泊した後、駿府城へ戻りました。駿府城へは武藤喜兵衛も同行しています。そしてなぜか武田信豊も付いてきています。


「信豊、なんでお前まで?」


「徳様が元気なさげなので新兵器をもらいに」


「意味がわからん。お前には中砲を与えたであろう。まだ欲しがるのか?」


「喜兵衛に聞いたところ、徳様は竹中半兵衛と見たこともない新兵器を作っているそうではないですか」


「だからなんだ?」


「だから〜、おわかりでしょう。俺の性格」


「全く、つかいこなすには時間がかかるぞ。それに大将が自ら武器を持ってどうするのだ?お前には真田やそこの喜兵衛がいるだろう?」


「お屋形様、それ昔、大屋形様から言われてなかったっけ?」


「うるさい。まあここには気の知れた奴しかいないからいいが一応、言葉使いには気をつけろよ」


「かしこまりましてございます。お屋形様」


 信豊と勝頼は従兄弟で仲がいい。なので他の重臣がいない時はこんな感じで話すのだが、勝頼にとっても気楽なので許している。信豊は織田が攻めてきたときの事を考えての行動のようだ。何もなくてここまで来るような男ではない。


「ないとは思うが警戒は怠るな。有事に備えて遠江に兵は集めておく」


「こういう時なんと言うのでしたか?ラダーとか?」


「それを言うならラジャーだ。了解とか承知という意味だ、ってなんでお前まで横文字を使う?」


「喜兵衛に教わったのです。喜兵衛は赤線6本の腕前だそうで」


 赤線6本と言うのは小学6年生の教科書を覚えたと言う意味です。以前は黒、茶、赤の線で分けていましたが、わかりやすく中学生レベルは黒線、小学生レベルは赤線にしたのです。


「喜兵衛は半兵衛に対抗意識があるようで勉学や工夫を怠りません。岡崎にも喜兵衛の工場がありますよ」


 えっ、それ初耳なんだけど。武藤喜兵衛は信豊の与力として三河へ移り住んでいる。当然、大崩の秘密工場からは離れており徳や半兵衛との交流の機会も減っている。


「おい、喜兵衛。なんでそれを言わない?知っていれば途中で寄ったのに」


「お屋形様、それに殿。困ります、まだ内緒にしていたのですから。次に三河にいらっしゃる時に凄い物をお見せできるよう精進しますのでご勘弁を」


「わかった。お前、半兵衛とやり合ってるのか?」


「それはありません。お互いに切磋琢磨しお屋形様のお役に立てるよう邁進しております」


「そうか、源三郎と源二郎はどうしている?」


「健やかに育っておりまする」


 それは良かった。以前、三雄から喜兵衛の子供は歴史に名の残る知力に優れた武将になると聞かされていたのです。武田家のためには貴重な人材です。


「で、信豊、お前何しに来たんだっけ?」


 それを聞いて怒り出した信豊に徳をあてがい大崩に連れていくように言うと、目を輝かせて武藤喜兵衛とともに去って行きました。


 駿府城では重臣達が待ち構えていました。穴山信君、馬場信春、山県昌景、なぜか後ろに本多忠勝が控えています。


「今帰った。留守中皆大義であった」


 それを聞いた穴山が、


「ご無事で帰られました事、心から喜んでおります。報告が多数ございますがよろしいでしょうか?」


「頼む」


「まずは北条です。氏康殿がお亡くなりになりましたが、跡目を譲っていたこともあり内乱は起きておりません。氏政殿が仕切っておられます」


「やはりな。氏康公は先を見られているお方であった。で、遺言はあったのか?」


「はい。お屋形様とは争うなと言い残されたそうでございます」


 そうか。俺と争う展開になるかもって事ね。問題は上杉だな。


「それで、北条氏邦殿が何度か古府中へ来られ、馬場殿が応対されています」


「氏邦殿か。馬場、なんといっておった?」


「有事の際はお味方下されますように、との事でござった」


「有事とは?」


「恐らくは上杉の跡目かと」


 関東圏の勢力争いは真・三国同盟により落ち着いています。だがそれは北条氏康、武田勝頼、そして上杉謙信がいたから成立したものなのです。上杉謙信が死んだ時、関東圏を戦場にしない事、それが勝頼の当面の課題です。

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