徳と銃と敵
『川上屋』というのが本能寺の住職達のお宿です。住職達は本能寺が再建築されるまでどこかのお寺に厄介になる予定ですが、それが見つかるまでの宿泊地です。もちろんお代は武田家で負担しています。
『戦国だけど少女だけど 殿のために戦うの! 正妻なんかにゃ負けないわ♫』
徳は歌いながら踊っています。その後ろには親衛隊のゆづ、はな、かなが汗をかきながらバックダンサーとして新しい振り付けで踊っています。
曲が終わると住職からの拍手が鳴り響き、宴はお開きとなりました。
「住職様。この度は大変ご迷惑をお掛け致しました。私にできるお詫びはこのような事しかできませぬ。どうか勘弁してくださいまし」
「徳様。悪いのは賊でございます。武田家の皆様が悪いわけではありません。その上、このような事までしていただいて真にありがたき事でございます」
「そう言っていただけますとご披露した甲斐がありました。私どもは明日、駿河へ戻ります。殿の話では堺に武田商店という店を開くそうなのでもし何かありましたら、そこへご伝言いただければ話が通るようにしておきます」
「わかりました。皆様に御仏のご加護があります事を」
徳達は川上屋を出て、勝頼のいる寺へ向かって歩きはじめました。本当なら勝頼のいる寺に住職達が一緒に泊まればいいのですが、どうやら寺にも派閥があるようでそこには厄介にはなれないそうなのです。それで仕方なく宿を用意したのですが、どこの世界にもそういう事があるのですね。
暗がりを歩いていく徳、ゆず、はな、かな。その周りを徳の弟でありゼット甲チームの隊長でもある錠とメンバーの紅、桃は護衛役として周囲を気にしながら進んでいきます。ふと、徳が立ち止まりました。それとほぼ同時に錠が走り出します。
「何かが来る。姉ちゃん達を守ってくれ!」
錠は、紅と桃に向かって叫びながら懐から短刀を抜きました。どこから現れたのか、錠に向かって3人の黒装束の敵?が襲いかかります。錠は飛び苦無を投げますが敵は刀で苦無を弾き飛ばし錠に向かってきます。
「紅、桃、ここはいいから錠のところへ行って!」
「徳様、それでは徳様が」
「ゆづ達がいるから大丈夫よ。いくら錠でも3人はきついでしょ」
錠は徳の特訓で相当鍛えられているのでそう簡単には倒されはしないでしょうが、それでも数の暴力には勝てません。紅と桃が駆けつけると敵が5人に増えています。
「隊長、徳様の命令で応援に来ました。あれを使いますか?」
「ここは街中だ。被害が広がるとまずいからダメだ。通常武器だけにしろ」
錠は徳と違って冷静なようです。というより、本能寺燃やしてしまった徳を見て無茶はあかん、と思っています。3人が5人相手に奮闘していると、徳達の背後から別の敵が現れました。
「!!!、姉ちゃん!」
「こっちは気にしないでそっちに集中して!ゆづ、頼んだわよ」
敵は3人、同じように黒装束です。ゆづは懐から拳銃を取り出しました。この時代の銃は火縄が必要でした。勝頼は教科書知識から火のいらない拳銃の存在を知り、ずっと研究をさせてきました。徳が率いる研究所の面々はすでに小学五年生の知識を持っています。この拳銃は何度も失敗して作り上げたリボルバーです。
ゆづはためらいもなく黒装束の者達に拳銃をぶっ放します。あっという間に弾を撃ち尽くし、3人は死体となりました。驚いたのは錠達と向き合っている黒装束です。こちらに護衛を惹きつけているうちに徳を攫う計画でしたがあっという間に倒されてしまいました。
賊は合図の口笛を吹きました。30秒ほどでさらに5人の賊が現れました。1人だけ大将のような風格のある賊がいて、徳達に話しかけます。
「大人しくついてきてもらえれば手荒な真似はしない。その不思議な武器を置いてそこに座れ!」
「バッカじゃないの。あたいらに勝てるとでも思ってるの?」
その瞬間、屋根の上に潜んでいた敵から投網のような物が投げられ、徳達に絡みつきます。
「何よこれ、痛いじゃない」
「徳様。これでは武器が使えません。手に網が絡みついて。はな、かなは動けそう」
『無理です』
「不思議な武器を使うという噂は本当であったか。用意しておいてよかった。さて、大人しくしてもらおうか。すまんが縛らせてもらう」
屋根から投網を投げた敵も降りてきてこちら側の敵は7人になりました。錠達は何とか戦っていた5人を倒しましたが、だいぶ体力を消耗しています。徳達が捕まったのを見て動きを止めました。
「隊長どうしましょう?」
「桃と紅はお屋形様へこの事を」
そこまで言ってから小声で、
「桃はそういうふりをしてあいつらをつけてくれ。俺は一緒に捕まってみる」
と小さく呟きました。
「行け!」
と叫ぶと桃と紅が走って行きました。錠は武器を捨てて座り込みます。
「姉ちゃんが人質では手が出せない。好きにしろ!」
「姉ちゃんだと。そうか、弟を責めれば言う事を聞いていただけますかな、徳様とやら」
「何者です?」
「そう聞かれて答えるとでも?」
賊は錠を縛りつけ、その後で徳達の網を外して同じように縛り付け、どこからか現れた籠に全員を閉じ込めました。
「さて、連れていくとしよう。死体は捨てておけ、どうせ金で雇った浪人どもだ。かなりのやり手だったのだが随分とやられたな。さて、行くぞ!」
「待っていただこうか?」
!?!?!?




