戦闘開始
「矢を放て!矢が届くと同時に寺の門から侵入するぞ!かかれー!」
蜂須賀小六の声が響き渡り、野盗のような兵達が一斉に動き出した。小六も集団の後ろの方について寺へ向かった。
「矢が来ます!」
吾郎の声とともに勝頼達は素早く雨戸を外し盾とします。矢が降り注ぎますが、
「さすが雨戸だ、なんともないぜ!」
と徳が呑気な事を言っています。教科書にはそれは載ってないのでは?それはさておき、はなとかなは2人1組になって門の方を向いています。あるものを構えて。素早く屋根に乗った錠が、
「みー、ふー、いー、今だ!」
と叫ぶと門に向かってはなの肩に乗せられた、そうバズーカ砲です、弾は炸裂弾が装填されています。錠の合図とともに砲弾が発射されました。勢いよく寺に侵入しようとした兵の寸前で砲弾は爆発し、無数の菱をばら撒きました。高速で発射された菱は散弾銃のように周囲の兵を傷つけていきます。侵入しようとしていた兵は爆風と飛んできたマキビシを直撃です、吹っ飛び倒れあちこちから流血しています。それを後方から見た蜂須賀小六は、何が起きたかはわからないものの寺の中は宴中であり、大した備えはないだろうと、
「怯むな!寺の中に入って仕舞えばこっちのもんだ、突っ込め!」
と大声を張り上げます。前方の兵が倒れたのを見てビビっていた兵達が息を吹き返したかのように再び突進を始めました。
「次、急いで!」
本能寺では、はなとかなが次に砲弾を用意している間に後続の敵兵が寺に侵入しようとしているのを知ってか知らずか徳の声が響きます。それを聞いたゆづが門に目を向けると倒れている兵をどけて寺に入ろうとしている集団が見えました。
「連射連撃雨霰、いっけー!」
ゆづが用意していたのはクロスボウの連射版とでもいうのでしょうか?矢が次々と装填されて発射されていきます。地面に置かれた矢の発射台に、機関銃の弾のように矢がベルトで次々と供給され高速で矢が飛んでいきます。ゆづは発射台の後ろで両手を使って何かをぐるぐると回しています。
右手はゼンマイ、左手は空気入れのような装置です。ゼンマイ駆動と圧縮空気を使った連射クロスボウ、と言っても弓がありません。矢は発射台と呼ばれる台座に乗せられロケットのように飛んでいきます。一分間に50もの矢を一台で放つことができ、今回のような狙い先が固定されていれば一人で操作できます。
とはいえ、人力でゼンマイと圧縮空気を回しているので疲労がたまります。
連写連撃雨霰から発射された矢は侵入してきた兵に次々と突き刺さり戦闘力を奪っていきました。すでに死傷者は50人を越えています。矢は門から寺に入った兵達を攻撃しました。兵は寺の中で倒れているため後続の勢いは止まっていません。門を越え寺に入ったところで惨劇を目にします。兵は目に入った光景に驚き一瞬足を止めてしまいました。そのせいで瞬間的に門のところで兵が渋滞状態になります。
両腕をフル回転させていたゆづが、
「もう無理、限界」
腕に乳酸が溜まって疲労困憊です。徳は、
「よく頑張ったね、はな、かな。今よ!」
渋滞している兵に向かって二発目の砲弾が発射されました。爆発音とともに再び散弾マキビシが門の近くにいた兵を直撃し、兵はバタバタと倒れて呻いています。
信玄に連れられて寺の中に避難していて、その一部始終を見ていた近衛前久と菊亭晴季は目がテンになっています。横の信玄に向かって、
「信玄殿、あれは一体なんでござるか?」
「近衛様。実はそれがしも始めて目にいたしますが、あれが勝頼が開発した新兵器です。弓矢は遠距離攻撃ができますが一人で一射しかできません。多勢に無勢の状態ではほぼ無力ですが、これを使えば敵が大勢押し寄せても防ぐ事ができます」
「上杉殿もこれを?」
「最近、勝頼にもらって喜んでおったそうです」
勝頼が謙信に提供したのは中砲なので少し違いますが、この人達から見たら似たようなものです。
「女が数人だけであれだけの兵を倒すのですか?しかもあの女は先ほど踊っていた者達では?」
「菊亭殿。あれは勝頼の側室とその侍女のような者達です。それがしも話には聞いておりましたがまさかこれほどとは」
「なんですと、勝頼殿の側室なのですか?あれでは夜はおちおち寝てられません、いや失敬。ところで襲撃してきたのはどこのどなたでしょうか?狙いは近衛様なのか信玄殿なのか?」
「いや、勝頼でしょう。勝頼は目立ちすぎました。近衛様を巻き込んでしまい申し訳ない」
「信玄殿。それは武田が悪いのではない。攻めてきた者が悪いのだ。さて、ぼちぼち相手の顔が見れそうだが」
戦闘は続いています。屋根の上からは錠、紅、桃の3人がクロスボウで個々に敵を攻撃しています。寺の広場では、はなとかなは3発目の砲弾準備、ゆづは徳の横にきて何かを手渡しています。ついに敵が境内に入ってきました。敵はすでに半数にまで数が減っています。寺の中には信玄、勝頼の旗本が20名、ゼットの3人、徳と愉快な仲間たちしかいません。吾郎はすでに外で待機している残りの兵60名を呼びに行きました。数はまだまだ圧倒的に不利です。
境内に侵入した敵兵が走って徳の方へ向かってきました。勝頼はその前に立ちふさがりました。




