怨み
木下秀吉と蜂須賀小六の会話です。
「なんだと! お市様が見つかったというのか?」
「おう、信長が話しているのをうちの部下が聞いたのだがどうやら武田勝頼のところにいるらしい」
「武田だと!なんでそんなところに?浅井長政が死んでやっとお市様が手に入るかと思えば行方不明だ。おい、小六。もっと詳しく調べてこいや」
「わかった。少し時間をくれ」
織田信長から追放された木下秀吉は毛利輝元を頼りました。『織田信長の一の家臣であった秀吉を味方にすれば織田信長など怖くはありません、織田軍の全てをお教えします!』と、調子のいい事を言ってとりあえず客分扱いになっています。今は、毛利軍の一員として本願寺や比叡山延暦寺を唆し、信長を牽制しようとしています。
秀吉は浅井長政を殺した事がばれて織田家を追放されました。誰かがその現場を見て、いわゆる密告をしたはずなのですが、それが誰なのかわかりません。こうなったら今は信長を倒し、そのうちに毛利を乗っ取る事を目標にしています。
蜂須賀小六はお市を攫うつもりが何者かに気絶させられてしまいました。小六は誰にやられたのか調べましたが、はっきりしません。秀吉にしこたま怒られましたが、その秀吉も追放になってしまいました。とにかく2人とも面白くなくなんとか仕返しを、と色々調べていくうちにお市の話が出てきたのです。ですが、2人ともわからない事があります。
「お市様と武田勝頼の接点はなんだ?なぜ、お市様は武田を頼ったのだ?」
配下の者達を使って武田勝頼を調べはじめました。ところが、忍びの護衛が付いていて勝頼には近づく事が出来ませんでした。ただ、お市が武田にいて今は居なくなっている事はわかりました。そこで、勝頼本人ではなく、旗本や護衛の者達に近づいて会話を盗み聞きしたり、酒を振舞って聞き出したりしたところ、驚くべき事実がわかってきたのです。蜂須賀小六を気絶させたのは勝頼で、それが縁でお市が武田に来たらしいと。
つまり探していた敵は武田勝頼という事です。秀吉、小六共通の敵、武田勝頼。秀吉は小六にこいつを殺せ!と命じました。
小六は京へ入りチャンスを伺っています。前は勝頼に簡単に気絶させられました。つまりそれだけ強いという事ですが、前回は不意をつかれただけだと見栄を張りつつも今度は大勢でかかる気でした。やっつける機会を狙っていましたが周囲にも護衛がつき、忍びの警戒も厳重でなかなか近づけませんでした。いっそ大名まとめて葬ったろかと大名集結を利用して一気に、とも思いましたが明智十兵衛の護衛が行き届いていて二条御所へは近づく事が出来ませんでした。
そんな中、本能寺で勝頼が近衛前久と会うという事がわかりました。これこそ絶好機です。小六は兵を集めて民間人を近づけないように仕掛けをしてタイミングを待っています。本能寺からいい匂いがしてきたとの情報が入ってきました。食事でしょうか?
「酒は出ているか?」
小六は物見に聞きました。物見は民に化けて寺の入り口を見てきています。
「はい。宴のようです。聞いたことのない唄とよだれが出そうないい匂いが漂っておりました」
「護衛はどうだ?」
「護衛の者達も食事を楽しんでいるようです。寺の前には見張りもいましたが警護は貧弱でした」
「よし、半刻後に仕掛ける!」
伊那忍びの吾郎は徳に頼まれてお市を探していました。徳の話では新兵器を使って秀吉を殺しに行ったというのです。手がかりは秀吉、という事で秀吉を追って廣島まで行き、その後も遠巻きに秀吉の後を追いましたがお市の影はありませんでした。秀吉の周りには蜂須賀小六という男が付いています。しばらく見張っていると小六が兵を集めて京の方向かいました。秀吉は本願寺に向かっています。吾郎は秀吉を追うことにし、しばらく見張っていましたがやはりお市は現れません。
そのうちに小六の動きが気になりました。そういえばそろそろ勝頼が京へ到着する頃です。見張っていても変化がないので、小六の後を追うことにしました。そして京で小六を見つけ、勝頼を狙っている事に気付きました。
「ま、まずい。早くお屋形様に知らせなくては!」
すでに本能寺へ向かって300の兵が向かっていました。蜂須賀小六は呟きます。
「敵は本能寺にあり」
吾郎は慌てて本能寺内に入り、勝頼へ危機を知らせました。
「お屋形様、野盗の群れが、いえ、蜂須賀小六率いる300の兵がお屋形様の命を狙って攻めてきています。すぐにお逃げください」
蜂須賀小六だと。どこかで聞いたような、あ、あいつか!確か秀吉の部下だったな。
「吾郎、お市はどうした?」
「まだ見つかっておりません」
「そうか。秀吉のところへ向かっているはずなのだが。それは後にしよう。徳、あれを使え。ゼットの面々を召集、第一戦闘配置だ!」
「はいな!ゆづ、あれを出して!錠、桃と紅にあれを!」




