豚の繁殖
軍師は言いました。今はまだ力を蓄える時だと。この後起きる戦についても教わりました。まずは桶狭間の戦いです。ここでは今川義元が死ぬという歴史が動く大事件が起きます。そして次は川中島の戦いです。勝頼の兄、武田太郎義信が失態を犯し武田家がピンチになるそうです。ですがなんとかなるので何もするなとの事でした。勝頼はそんな話を聞かされて何もするなと言われても、何言ってんのこの人!という気持ちでしたがその通りになるかを確かめたい気持ちもあり素直に従いました。勝頼のこの素直さが後に効いてくるのです。人間素直が一番ですね。
それよりも豚の繁殖に力を入れるように言われました。現在は高遠の山の中に小屋をいくつか建ててその中で豚の飼育をしています。そこには諏訪、高遠、伊那の百姓で跡を継げない者達が勝頼に雇われて働いています。豚は勝手に増えるので繁殖といっても世話係のような物です。勝頼は小屋を増やし生産量を増やしていました。育った豚は領地内での消費だけではなく晴信へ売り付けています。
「今の3倍の規模になるように」
「はっ」
勝頼は豚の畜産業を辰造に任せています。辰造は里美の紹介で手に入れた配下です。元々は豚小屋を作るために木曽で木こりをしていた者を当てたのですが、人を使うのが上手なので取り立てました。勝頼は軍師から人を集めるように言われていました。
勝頼は食糧を生産し、商品として晴信へ売りつけ、その金で部下に給金を払い増築増強し、そしてまた生産するという今でいう事業拡大の最中です。そして領地の外からも高遠に行けば稼げるという噂を聞きつけた移民が多く出稼ぎにきています。
「伊織、移民達の中に間者は紛れ込んでいないか?」
「はっ、すぐに見分けるのは難しいので移民達には監視を付けております」
「怪しい者達は豚小屋へ回せ。決して工場と五箇山には近づけるな。吾郎と相談して罠も用意しろ」
「承知仕りました」
勝頼と話をしているのは諏訪分家の妾の子で玉井伊織という若侍です。剣が得意なので勝頼の護衛も兼ねて近くへ置いていましたが、機転が利き優秀なのに気づき、参謀的な役割をやらせています。勝頼は移民を集めています。高遠へ行けば食いっぱぐれる事はなく、仕事をすれば給金まで貰えるという噂を流させたのも勝頼です。
この時代、戦があると戦うのは農民です。農地を耕し食物を生産するという本来の仕事を放棄して戦へ赴いていました。戦に勝てば、成果を上げればご褒美が貰えます。ですが、戦に負けたりすれば何も貰えません。さらに怪我をして働けなくなったり死んでしまう事もあります。領主はそういう事態も想定して補償まで考えなければいけないのですが、実際はなかなか難しいのです。ただ、武田家は、いえ武田晴信は民の事をよく考えた政治を行っていました。今回の飢饉も乗り越えて民の株は上がっています。
勝頼は、農民が戦に出向くのをやめたいと軍師に相談をしました。
「三雄殿、どうすればいいか?」
「分ければいいよ。戦う人と作る人を」
「それではいざという時に戦力が足りません」
「人を増やせばいいじゃん」
という事で、他の領地からも人を集めていたのですが、晴信からお叱りを受けました。武田の他の将の土地からも人が来ていたのです。それは怒られますよね。そのため、敵地へ吾郎を使って噂を広めました。美濃や遠江からも出稼ぎに人が集まってきています。それ故に敵のスパイが紛れ込む事を心配していました。出稼ぎに来た人達には、どこの出身で何をやっていたかを記帳させ、見習いから始め適材適所に配置をするようにしています。力のある者は兵に、手先が器用な者は工作に、田畑開発、水車製造、蕎麦・小麦の粉挽き、ソーセージ製造、そして草と呼ばれる忍びに。出稼ぎに来ていたつもりがいつのまにか領民になっていました。名付けて勝頼移民政策。
移民達は適材適所に配置された後、訓練されて各々のポジションで熟練していきます。怪しい者達は豚の養殖に回されました。地味な作業で動きも制限され、外部との接触も出荷時のみになります。間者らしき者達は外部へ連絡を取ろうとしてボロを出し、人知れず処分されていきました。
この頃、勝頼は組織を作り上げていっています。
・第一工場担当 諏訪隆重
水車、粉挽き機、パン焼き器等の製造。手先が器用
・田畑拡張担当 助蔵(里見の遠縁)
伊那、高遠での米、小麦、蕎麦の増産
・軍事担当兼参謀 玉井伊織
勝頼の旗本育成
・生活担当 祢津幸昌(祢津分家で薬師)
保存食、薬の開発、治水工事
・情報担当 吾郎
伊那忍びの育成、各地での情報収集。そして各部隊の監視
・家畜担当 辰造
豚の繁殖、食材開発
・第二工場担当 次郎衛門 (鍛冶師)
秘密◯◯の開発
さて、軍師こと諏訪三雄と影の支配者?大石恵子は勝頼にどうやって生き延びてもらうかを考えています。桶狭間、川中島、三方ヶ原、そして本能寺。いつどこで誰が何をすればいいのかをです。上杉謙信、織田信長、徳川家康、そして豊臣秀吉。誰を味方に誰をいつ倒す?勝頼は無事に家督を継げるのか?
そして桶狭間が起こる年になりました。




