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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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不承知!

 一通り自己紹介が終わった。といっても皆、名前だけ言っただけだ。お互いに牽制し、睨み合い、威嚇している。こんなのどうやってまとめるのだろう?


 足利義昭は、不安と恐怖にかられていた。将軍である自分を中心に皆を従え政治を行う、その第一歩の会合のはずだった。それが真ん中に座っている義昭など気にせずに睨み合っている。一生懸命に考えてきた挨拶がどっかにいってしまった。


 皆は睨み合いながらも義昭が話し出すのを待っていた。睨み合いをするために集まったわけではない。将軍の招集に応じただけだ。最初はこいつが信玄か。隠居したのは嘘みたいだな、とか、島津は色がやけに黒いが南の方はそんなに暑いのかとか考えていたが、なかなか始まらない会合にイライラし始めた。控えていた明智十兵衛はその雰囲気を感じ、これはまずいと信長の横に行き、


「織田様。公方様の代わりにお話下さいませ」


 と場を進めようとした。その一言に上杉謙信がチャチャを入れた。


「明智殿であったか?なぜ織田信長殿が場を仕切るのだ?我ら大名は公方様に招かれてこの場に集まったのだ。おかしいであろう?」


「上杉殿。お初にお目にかかる。織田信長だ。余が公方様の上洛をお手伝いし、この二条の館も建設した。場を仕切って当然であろう」


「ふん、たまたま京の近くにおっただけであろう。まあいい、ここは織田殿の顔を立てて話を聞こうではないか」


「不承知だ。九州から出てきてなんで織田の話を聞かねばならんのだ。公方様が目の前におられるのだぞ。公方様が話せば良いではないか?それに、だ。上杉謙信と言えば毘沙門天の生まれ変わりとか軍神とか南国の方には聞こえてきていたが、随分とお優しい事よ」


 島津義久。薩摩、大隅、日向を治めている。一度京へ行ってみたいと思っていたところに招集がかかり、物見気分で上洛しました。といってもただの物見であるはずもない。途中の他の大名の国々を視察しながらの上洛でした。特に毛利の水軍の調査が主の目的で、わざと海沿いを通って見て回りました。薩摩にいては織田信長など名前を聞いたことがある程度しかありません。大国といえば敵である毛利です。


 謙信は島津を相手にしません。足利義昭はそのやり取りを聞いてもまだ心ここにあらずです。しょうがねえな、と勝頼が助け舟を出します。


「島津殿のいう通りでござる。義昭様、落ち着いてくだされ。色々とご準備なさったと聞いております。なぜ、各地の大名をお集めになったのか?お教え願いとう存じます」


 ん?信玄の跡取りが喋ったぞ、確か勝頼とかいったな?この中で勝頼を知っているのは足利義昭、織田信長、上杉謙信だけです。その実力をわかっているのは謙信だけでしょう。


「勝頼。その通りとは余が腑抜けという事か?」


 謙信がわざと絡みます。本当にどこが軍神だよ!あの川中島で初めて謙信を見た時の恐ろしさは忘れられません。


「上杉殿。そんなわけないでしょう。義昭様、皆集まり義昭様のお話を待っております。この場を収められるのは義昭様しかいません」


 勝頼は謙信の考えが読み切れていませんでしたが、流れに乗って話しました。ところが義昭の反応がありません。皆の視線が勝頼に集まります、場の雰囲気でそれを感じた勝頼は気にせずこの後どうしようか考えはじめています。すでに展開は想定外、それにしても足利義昭、わかってはいましたが困ったものです。


 やっと義昭がどこか遠くから帰ってきました。大きく深呼吸をしたあと、棒読みのように話始めます。


「各々方に命ずる。今後、私利私欲のための戦を禁ずる。これを破った者は国に逆らう罪人として幕府の名の元に処罰を行い。そのかわり今まで戦で勝ち取った領地を現領地として認める。但し、毎年取り立てた年貢の一割を国庫に献上すること」


 皆黙って聞いています。公方が急に話したと思ったら変な事を言い出しました。義昭の考えなのでしょうかか?それとも明智か?


 反応がないのをいいことに義昭は話を続けました。今のうちに一気に言いたい事を言ってしまおうという作戦のようです。


「ここに集まった者たちは余への忠誠心に満ちた忠義者だと理解している。朝廷にお願いし、それぞれ官位を授けたい。織田信長を副将軍に、上杉謙信、武田勝頼、毛利輝元を正四位、朝倉義景、長宗我部元親を従四位上、そのほかの者は従四位下とする」


 場はシーンとしている。官位か、くれる物はもらってやろうという者。なんだ、織田信長が副将軍だと、どういう事だ、という者、様々でした。勝頼は謙信の顔を見ました、アイコンタクトです。謙信は納得がいかない顔をしていましたが、勝頼のアイコンタクトを見て頷きました。そして足利義昭に向かって、


「公方様。副将軍には織田信長殿ではなく、そこにいる武田勝頼殿がふさわしいと存ずる。それがしは織田には従わん。関東管領上杉謙信。武田勝頼殿以外の副将軍は認めんし、従う意志もなし」


 おーい!謙信さーん、俺のアイコンタクトはそういう事ではないよーーー! 謙信は続けます。


「公方様の元、馳せ参じたからには御意志に従い邁進いたす所存で参ったのですが、あまりにも突拍子もないご命令。この上杉謙信、恐れながら不承知でござる」



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