夢の正体
中年の女?だれだろう? 三雄は少し考えてから話しはじめました。
「俺とお前みたいな関係なのか?お前は最初俺の夢を見たんだよな。そして俺が諏訪湖に落ちてうなされた時にご先祖様が出てきて諏訪神社でこうやって話せるようになった。どういう理屈なのかは全く分からんけど、そこから考えるとお市さんの子孫がこの時代にいて、その人を通して未来を見たという事になる。俺たちと大きく違うのが夢の中で語りかけた事だ。俺はそれをしていないし、できる気もしない。この時代に生き残っているお市さんの子孫だとすると、織田家では有楽斎の関係?それと、徳川秀忠の嫁さんもか?そうやって考えると結構な数いそうだけど、でなんで恵子なんだ?」
「以前、恵子殿が何か企んでいると言っていましたよね。お市の話を聞いた時にその事を思い出したのです」
「ああ、最近あいつなんか変なんだよ、それでこの間そんな話を勝頼にしたっけな。わかった、聞いてみるよ。ちょっと待ってろ」
三雄はポケットからスマホを取り出します。
「ああ、俺。あのさあ、今勝頼と話してるんだけど」
勝頼は三雄がスマホという機械を使って会話を始めるのを見ています。以前も見せてもらったことがあり、三雄が持っているスマホが欲しくてたまりません。聞いたら電波がないと使えないとの事でしたが、電波が何なのかすらわからないのが今の勝頼です。三雄は恵子と話を始めました。
「そうなんだ。勝頼と同じように未来の夢を見た人がいる。だれだと思う? 驚くなよ」
「もしかして、お市じゃない?」
「何でわかるんだ、やっぱり何か知ってるな?」
「やっぱりって何よ?」
「勝頼が恵子が何か知ってるはずだってさ」
「ふーん、頭が回るわね。でも何で勝頼ちゃんが私じゃないお市の事を知ってるのよ。武田勝頼とお市って接点ないでしょう。えっ、まさかまたあんたなんかしたの?」
「またってなんだよ、俺は何もしていないよ。勝頼が自分で考えて動いた。そしたらお市がついてきたんだそうだ。いま、お市は古府中にいるってよ」
「全く歴史が違いすぎてどうなっちゃうのよ、でもそうか。だったらお市は安心だ。勝頼ちゃんに伝えておいて。お市を大事にしてねって」
「それは答えになってないぞ。これしか話ししてないのになんで話が通じるんだよ、おかしいじゃん。なんか全部わかってるみたいだぞお前」
「うーんとね。私も色々調べたのよ、じゃあ今忙しいから。またね」
「て、おい! 切りやがった。なんなんだよ、もう。勝頼、すまん。今度ちゃんと聞いとくよ」
勝頼は2人の会話を聞いて、
「わかりました。お市を大事にすればいいのですね。ではこの件はこれで。次の話ですが」
勝頼は戦況を説明しました。真・三国同盟は効果絶大で上杉、北条で関東以北を牛耳っています。南部、伊達、相馬、岩城はまだ抵抗していますが大勢に影響はなさそうです。武田は飛騨を取りました。西へ出るには越前ルート、近江ルート、美濃ルート、三河ルートがあります。今のところ三河ルートを考えていると話しました。
織田信長は将軍をバックに勢力を拡大しています。朝倉と比叡山延暦寺が手を組んでいる事を知り、朝倉攻めを行いそうです。
武田と織田、徳川の同盟は一応継続しています。このままいくと武田側から破棄する事になりそうです。
「俺の知っている歴史と似ているところもあるけど。畿内あたりは大体同じかな?中部、関東が違いすぎてわけわからん。で、家督は継いだのか?」
「来月継ぐ事になります。それをきっかけに三河を攻めるつもりです」
「徳川は織田信長の朝倉攻めに応援に行くのではないかな?そうなれば三河はガラ空きだぞ」
「恐らくはそうはならないでしょう。気になるのが北条の動きです。どうも徳川と北条でやり取りがあるようで。徳川は動かないかと」
「そうか。徳川と北条はこっちの歴史でも組むんだ。そういえばぼちぼち氏康が死ぬ頃だぞ!確か元亀2年だ」
氏康が死ぬのが来年か。父上が死ぬのは三雄殿の歴史では3年後だけど労咳が治ってるから多分死なないとおもってる。とは言っても別の死因もあり得るからその前に上洛を成し遂げたいところだ。今、徳川を今攻めると織田は朝倉攻めをやめるだろう。三河が武田に取られたらまずいのは誰にでもわかる。
「勝頼。真・三国同盟を結んでいる以上、北条は手出ししてこないだろう。徳川が朝倉攻めに行ったら攻めたらどう?」
「こちらが動けば相手も動くでしょう。横文字でいうところのタイミングが難しいのです」
「織田、徳川は上杉、北条を利用しての武田包囲網を作るのに失敗した。謙信は勝頼贔屓みたいだし。そういえば信長はお市を探していないのか?」
「もうお市が消えてから一年経ちました。気にしていないでしょう。三雄殿、例のやつは持ってきていただけましたか?」
「ああ、本屋で買ってきた。写していきな。お市を利用する気は無いのか?確か秀吉が惚れてたはずだけど」
「お市は秀吉を嫌っております。浅井長政を手にかけたのが秀吉なのです。元々嫌いな男に旦那を殺されてやっと立ち直って俺に心を開きました。できればそっとしておいてあげたいと思っています」
お市かあ。そっとしておけるとは思えないけど。三雄はそれを言葉にはしませんでした。勝頼の思うようになることを願うことにしたのです。
勝頼は必死に本を写し始めました。これができればきっと役に立つ時がくる。いつかはわからないけど。三雄は帰り際に、謙信が死んだ時に真・三国同盟は崩れるぞ、その時にどうするか考えておけと言って帰って行きました。崩さない方法は……………、ありますね。




