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第九章 水に映る記憶

今回から3巻分です。

「・・・・・ここはどこだろう?」

 スカイブルーの髪の少年は見知らぬ場所にいた。

 あたり一面、真っ暗な空間。そこにぽつんとひとり立っている。

 景色は陽炎のように揺れていて、足元さえはっきりしていない。

「そうだ・・・・・探しものをしていたんだっけ」

 何もかもがぼんやりしている世界の中で、そのことだけはどうにか分かる。

 何かとても大切なもの。

 それは、ここではないどこかにあるはずだ。

 おぼつかなげに足を踏み出す。あてもなくさまよっても景色は変わらない。

「どこに行けばいいんだろう?」

 本当にこっちでいいのだろうか。

 不安を感じた時、前方で何かがきらりと光った。

「光?」

 金色の輝きに導かれるように、少年の足取りは力強いものになっていく。

 やがて、一人の男が少年の前に現れた。

「あなたは誰?」

 目を凝らしても、男は影のように立っているだけでその表情は分からなかった。

 けれど、不思議と怖くない。

 男は両手を広げながら、優しく少年にささやきかける。

「もう、大丈夫だ。 さあ、一緒に行こう」



 

「・・・・・どうしてよ!」

 長い甘栗色の髪を二つに大きく分けている少女――テレフタレートは人差し指をビシッと突き出し、言い放った。

「どうして、ここにあんたがいるのよ!」

「それはこっちの台詞だ」

彼女が指差したのは、オーダリ王国の城の城門。そこには彼女より四つか五つ年上のエルフの青年――ソクスデスがただすんでいた。

「いい! 私達はね、今から『海の秘宝』について詳しいことを知っているっていうジュリア=アワーっていう人に会いに行くんだからね!」

「それもそのまま返そう」

 憮然とした表情でソクスデスは答えた。

「何よ? あんた、ジュリア=アワーに何か用事でもあるわけ?」

「ジュリア・・・・・ってあれ、前にどこかで聞いたことがあるですね?」

 怪訝そうに首を傾げて訊ねるテレフタレートに、ファティが不思議そうにつぶやいた。

「・・・・・俺の妹だ」

「・・・・・あっ、そうでしたです!」

ファティは今思い出したかのように手をポンと叩く。

「おい、忘れていたのかよ・・・・・」

呆れたようにメイルがつぶやくと、ファティは「もちろんです」と力強く答えた。

「・・・・・あのな」

 メイルは深く大きく溜息をついた。

「・・・・・どうするんだ?」

 言い捨てて、ソクスデスはプイと横を向く。

「えっ?」

「・・・・・一緒に来るのか?」

 きょとんとしたテレフタレートに、ソクスデスがぼそっとつぶやくと、彼女はオーバーアクションで疑いの眼差しを向け始めた。

「どういう風の吹き回しよ! いつもは関係ないとか言ってくるくせに!」

「・・・・・どうせ、ほっといても貴様のことだ。 情報集めとか言って、あちらこちらで騒ぎを起こすのだろう」

「なっ、なんですってっ!」

 今にも彼に襲いかかってしまいそうなテレフタレートの剣幕に、レシオンは思わず、目をぱちくりさせてしまう。

「あの、止めなくていいんですか?」

 レシオンの言葉に、ソーシャルは困ったように微笑む。

「・・・・・・うーん」

 進退窮まったレシオンとソーシャルだったが、道はエレジタットのこんな一言で開かれた。

「ふふふっ、なら貴様が何をたくらんでいるのか、この俺様が確かめてやる!」

 あまりにも意外なその台詞に、レシオン達は一斉にエレジタットを見た。

 ・・・・・いや、別に意外ではなかったのだが、ただ誰も突然、そんなことを言い出すとは思っていなかっただけなのかもしれない。

 そこに一人の門番が会話に割って入ってきた。

「・・・・・君達、話しているところを悪いんだが、ここはオーダリ城の城門だ。 悪いが別のところで――」

「ふっ、そこの門番! 街で聞いた噂だと、何でも貴様、イカサマのバクチをやっているそうだな」

 エレジタットは門番の言葉をさえぎって、ビシッと人差し指を突き出した。その途端、門番は目に見えるほどうろたえた。

「な・・・・・何をおっしゃられているのですか!?」

「あくまでもしらを切りとおすか。 なら、貴様がイカサマをしていたかどうかこの俺様自らが見極めてやる!」

 そう宣言すると、早速、エレジタットは彼のポケットに入っていたサイコロを取り出し、いきなり剣で砕いてみせたのだ。

「ああっ!」

 門番はたまわず悲鳴を上げる。

それを見ていたレシオン達も思わず、目を疑った。

 割れたサイコロの中には、なんとなまりが含まれていたからだ。

「これは、サイコロの中になまりが入っているのか!?」

 レシオンは呆気に取られたような表情でエレジタットを見た。

 エレジタットさんは、この人がイカサマのバクチをしていることを見抜いていたのか!?

 ・・・・・というか、いつのまに知りえたのだろうか?

 ・・・・・いやそれよりも、これがソクスデスさんを疑うことと何か関係があることなのだろうか?

 何もないような気がするけれど・・・・・。

 ぱんとエレジタットは手を叩いた。

「うむ、なまりがあるのか。 この国ではなく別の国の出身のようだな」

「そのようですね」

 エレジタットの言葉に同意するように、フレデリカは頷いた。

「「はあっ!?」」

 エレジタットの的外れな見解に、レシオンやテレフタレート達だけではなく、ソクスデスも思わず眉を寄せた。

「エレジタット様、これを」

 そう告げると、フレデリカはエレジタットに先程奪ったサイコロと同じようなサイコロを手渡した。

「さらに別のサイコロを所持していました」

「なくなった時の予備だな。 用意周到なことだ」

「それに」

 渋い顔で門番を値踏みするエレジタットに、フレデリカはさらに続ける。

「何でも彼はバクチをする時、部屋の床下に必ず、人を配置しておくらしいです」

「おおっ!」

 と、エレジタットは驚愕する。

「そんなところに住んでいる奴がいるのか? 大変だな」

「「はあっ!?!?」」

 完全に的外れな見解に、レシオン達は唖然、呆然を通り越してまさに愕然としていた。

さすがのソクスデスも不本意そうにぼやく。

「・・・・・おい」

 だが、そんなこととは露知らず、エレジタットはうむっと大きく頷くと、フレデリカに呼びかけた。

「フレデリカ」

「はい」

「結局、イカサマがどうか、分からなかったな」

「そうですね」

 数瞬の間、レシオン達は言葉が出なかった。

どう見ても、イカサマをしていたとしか思えないのだが、彼らにはそうと見て取れなかったらしい。

だが、レシオン達のその重苦しい沈黙の扉を押し返したのはやはり彼女だった。

「どう見てもイカサマでしょうが!」

 いつもと同じ調子でテレフタレートはそう叫んだ。

 ・・・・・その言葉がレシオン達に勇気と日常性を取り戻させた。まず、レシオンがテレフタレートに続き、

「明らかにそうだよな・・・・・」

 といえば、

「うん。 それにソクスデスさんとは関係のないことだよね?」

「本当だよな」

「・・・・・・・・・・全くだ」

 と、ルーン、ソーシャル、ソクスデスも続いた。

 だが、当の本人であるエレジタットは、大きく頷いて告げた。

「うむ! 事件解決だな!」

「さすが、エレジタット様です!」

 フレデリカも嬉しそうに、それに同意する。

「違うでしょうが!」

 と、テレフタレートは即座にそれを否定した。

「大切なことはこれからどうするかよ! こんな小悪党なんかに構っている場合じゃないわよ!」

 憤懣やるかたないといった様子でテレフタレートが叫んだ。

テレフタレートに小悪党呼ばわりされた門番の男が激しく落ち込んでいたが、それは置いとくとして。

「ああ」

と、ファティの隣でメイルは呆れながらも頷いてみせた。

「そんなことないですよ、テレフタレートさん。 エレジタットさんの活躍でこの国の平和は守られたです!」

 「エヘヘ」と笑いながら、ファティはテレフタレートの抗議を受け止めた。

「ねえ、メイル?」

「・・・・・いや、それは違うだろうが」

満面の笑みで言うファティに、メイルは呆れたように溜息をつくしかなかった。


   


「テレフタレート=コルレリア! あなたを逮捕します!!」 というのが、銀髪のエルフの女性――ジュリア=アワーの第一声だった。

ソクスデスより一つか二つ年下の年齢だろうか。

 ソクスデスの案内で、オーダリ王国のとあるギルドにいるという彼の妹であるジュリア=アワーに会いに行ったレシオン達だったのだが、そこでいきなり彼女から人差し指を突きつけられてこう告げられたものだから、テレフタレートは激しく怒り爆発寸前になっていた。

「ちょっと、あんた、いきなりどういうつもりよ! どうして、私が逮捕なわけ!!」

 憮然とした態度で、テレフタレートはジュリアの言葉に応えた。

 ジュリアは意外なことを聞かれたとばかりに苦笑を浮かべ、手にした自分のグラスを口元へと運んだ。そして、また口を開いた。

「うふふ、納得できないのかしら?」

「当たり前でしょ! どこのどいつが自分が罪人だって言われて、はい、そうですか、って納得できるって言うのよ!!」

 テレフタレートのもっともな言い分に、ジュリアは小さく溜息をつき、首を横に振った。そして、懐から封筒らしきものを取り出した。

「仕方ないわね。 罪状を読みますか」

「って、そういうことじゃなくて!」

 あくまでも無表情なままのジュリアに、テレフタレートはぷるぷると肩を震わせる。

だが、そんなテレフタレートの抗議など聞く耳持たずといった感じで、ジュリアは単調な口調にてその文面を読み上げた。

「テレフタレート=コルレリア。 罪状、テレフタレート=コルレリア・・・・・以上・・・・・と」

「なッッッッッ!?!?」

 あまりにもあまりな暴言に、テレフタレートは怒りを忘れて絶句した。

「なるほどな・・・・・」

 レシオンが苦しげにぽつりとつぶやいた。

「・・・・・罪状がテレフタレートさん自体ではどうしようもないです」

 そう言ったファティには、どこか痛ましいものを見るような表情が浮かんでいた。

「ちょ、ちょっとあんた達・・・・・!」

テレフタレートはムッと表情を曇らせた。その瞳に、いつもの鋭い怒りの光が戻る。

「それでは無罪を勝ち取るのは難しそうですね・・・・・」

 フレデリカが悲しげに言う。

「いや過去の所業を考えたら、有罪なのは当たり前だ」

 エレジタットが当然のことだとばかりに言う。

「過去の所業って何よ! だいたい、今は『海の秘宝』のことをこいつから問い詰める方が先決でしょうが!!」

 むくれた顔のまま、テレフタレートは不本意だと言わんばかりに噛みついた。

「あっ、言われてみればそうだな・・・・・!」

 レシオンはどよめいた。

「あまりに貴様=『大悪人』説の説得率が高かったんで、危うく騙されるところだった!」

 誇らしげに胸を張って、エレジタットは豪快に笑い始めた。

「本当ですね、エレジタット様」

 フレデリカが大仰に頷いた。

「・・・・・・・・・・だ、誰が大悪人ですって!」

 ワハハと高笑いするエレジタットに、テレフタレートは空恐ろしいほど鋭い視線を向けると不満げに口をとんがらせた。

「と、とにかく、どうしてテレフタレートが逮捕なのか、理由を教えてもらえませんか?」

 レシオンはとりあえず自分を鼓舞するため、力強く拳を握りしめた。

「理由を説明してもらえないと何が何なのか、分からないし・・・・・」

「そ、そうよ! どうしてよ! ・・・・・最も、もしまた私なだけで逮捕とか言ったら暴れさせてもらうけれどね!」

 レシオンの言葉に、テレフタレートは半ばヤケになって叫んだ。

「・・・・・え、ええ。 そ、そうね・・・・・、ずばり――」

「ずばり、何よ?」

 ジュリアの台詞を、テレフタレートは不愉快そうにつぶやく。

 かくして、ジュリアは告げた。

「ずばり、テレフタレート=コルレリアだからよ!!!」

「ふ、ふっふっふっふっふ・・・・・・」

 それは、テレフタレートにはあまりにも似合わない笑いだった。テレフタレートは肩を震わし、天を仰ぎ見て、そしてジュリアを睨みつけた。

「・・・・・そう・・・・・」

 と、テレフタレートは言った。

「・・・・・そうなのね」

「お、落ち着けよ。 テレフタレート・・・・・っておいっ!?」

 ソーシャルが困ったようにそうつぶやいたのだが、テレフタレートは俄然憤懣やるせないという勢いのまま、ジュリアに殴りかかろうとしたのだ。慌てて、ソーシャルはそれを止めに入る。

「落ち着けるわけがないでしょうがぁぁぁぁぁっ!? こいつはぶっ倒すっ!! 絶対に許さないぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 説明のへったくれもないジュリアの弁明を、テレフタレートはばっさりと切り捨てた。まあ、無理もないことだろう。

「・・・・・冗談はほどほどにして、いい加減、話をしてやってはどうだ?」

 ソクスデスがそう言うと、ジュリアは頷いてみせた。

「そうね」

「じょ、冗談ですってっ!?」

 ソクスデスの言葉に、別の怒りを覚えたテレフタレートだった。

 ・・・・・というか、冗談って分かっているのなら、早く言って下さい。

ソクスデスさん・・・・・。

 レシオンは悲しげにしみじみと思ったのだった。


「・・・・・で、『海の秘宝』についてだったかしら?」

 テレフタレートは何も言わず、未練がましそうにジュリアを見ていた。

 当然、先程の恨みがはれないのだろう。

「知っているとは思うけれど」

 と、ジュリアは続けた。

「ソクスデスが新たな『海の秘宝』を見つけたというのは私のデタラメ!」

「じゃあ、新たに見つかった『海の秘宝』っていうのは・・・・・?」

「・・・・・すべて嘘だ」

 レシオンの問いに、ソクスデスがあっさりと無情なことを告げた。

 ・・・・・期待はしていなかったけれど、やっぱりそうなんだな・・・・・。

「だけど、『海の秘宝』は、『イドラ』と関係があると思うのよね。 ギルドマスターとしての私は」

「ギルドマスター・・・・・ですか?」

 唐突にジュリアの口から出た単語に、ファティは首を傾げた。

「と、とても、そうは見えないな」

 メイルは唖然としてしまう。

 ジュリアは言った。

「そもそも『イドラ』は封印の魔女ユヴェルの遺産なの。 で、『海の秘宝』の噂が流れ始めたのもちょうどその頃なのよね。 やっぱりこれって何かの因果関係があると思うのが当然でしょう」

「じゃあ、『イドラ』って何なんですか?」

 レシオンはもう一度、同じ疑問を口にした。自分で意識してそうしたわけではないが、のどから出たのは搾り出されたような声だった。

 以前、ソクスデスさんに聞いた時は分からなかったけれど、もしかしたらジュリアさんなら何か知っているかもしれない・・・・・!

「封印の魔女が残した遺産。 特殊な能力とされているわ」

レシオンの問いに、あくまで真剣にジュリアは答えた。

 少し考えて、レシオンは口を開いた。

「・・・・・特殊な能力?」

「そう、封印の魔女ユヴェルの力による能力よ。 だから、封印の魔女と『イドラ』は密接な関わりがあるんじゃないかと思うのよね」

 レシオンは言葉を失った。ファティ達も驚愕する。ジュリアの台詞はこれ以上ないというぐらい的を得ていた。

 『イドラ』が、その封印の魔女ユヴェルと密接な関わりがある――?

 どういう意味なんだろうか?

 俺やファティさんが狙われているのは、封印の魔女ユヴェルを復活させるためにその能力が必要だということなのだろうか?

「それってつまり・・・・・」

「私やレシオンさんが持っている力のことですね!」

 ファティはレシオンの言葉を遮り、どこか楽しげに言った。

それを見て、メイルは頭を抱えながらぼやく。

「あのな・・・・・――って!?」

突然、上空に巨大な魔力を感じて、ファティとメイル、そしてルーンははじかれたようにハッと空を見上げた。

「エレジタットさん、そこ、危ないです!」

「分かっているさ!」

 ファティの悲鳴に、エレジタットが鷹揚にそう応えた時だった。


何の前触れもなく、

 突如、外からの攻撃を受け、ギルドの天井が吹っ飛んだ。


「な、なんだっ!?」

 レシオン達が遅れて、上空を見上げる。

 そこに浮かんでいたのは、ピンクベージュの髪の少女と黒いコートの男。

一人は以前、レシオン達が戦った少女――レイチェル。

もう一人は、彼女より年上の黒いコートを羽織った男だった。

「『イドラ』よ。 インフェルスフィア様がお待ちかねだ。 一緒に来てもらおう」

 言いながら、男は一歩踏み出した。オーラに気圧されて、レシオンは無意識のうちに一歩下がってしまう。

 ダオジスの時とはまた違う、謎めいた恐ろしさがこの男にはあった。

男が言った。

「問答をするつもりはない。 無理やりでも貴様らを連れて帰れとの仰せだ」

 冷たいものがレシオンの背中を流れ落ちた。ぬけぬけと言い放つ男の顔は、自信の塊そのものだった。同時にレシオンには不吉の象徴のようにも映った。

 この目の前にいる男は・・・・・、ダオジスを凌駕する力を持っているかもしれない。

いや、もしかしたら魔王さえも――

「こ、断る!」

 勇気を振り絞って、レシオンは叫んだ。

「私もです!」

 それに同意するかのように、ファティも男の要求をはねのけた。

「言ったはずだ。 貴様らに選択権はない、と」

 無表情のままそう告げると、男は全く予備動作なしに、突然、両手から光弾を放った。レシオンとファティの回りが、瞬間的に黒いドーム状の球体に包まれる。

「・・・・・・・・・・っ!?」

 ソーシャルが、ルーンが、そしてテレフタレートも息を呑んだ。そばで見ていたテレフタレートにもまるでわからなかった。いつのまにか、音もなくレシオンとファティが黒い球体に包まれていたのだ。

「戻るぞ、レイチェル」

「・・・・・はい」

 男はレイチェルにそう告げると、黒い球体とともにその場から姿を消した。


 それは時間としては、ほんの数分の出来事だった。

 だが、その間に『イドラ』であるレシオンとファティは捕らえられ、テレフタレート達は何もすることもできないまま、その場に立ち尽くしているしかなかった。

「・・・・・どうするのよ!」

 その場にわだかまる沈黙の重さに耐えかねて、テレフタレートが口を開く。

「レシオンとファティがあいつらに連れて行かれてしまったじゃない! こんなところでぼっーとしている場合じゃないでしょうが! ねえ、ちょっと、フレデリカ、何かいい手とかないわけ!」

「そ、そう言われましても・・・・・。 あ、あの、エレジタット様・・・・・どうしましょう?」

 そう言いさしたフレデリカの隣で、エレジタットはものの見事に気絶していた。

「ああっ!? エレジタット様っ――――!!!!」

 フレデリカが悲痛な叫びを上げる。

 まぶたを見開いて、ソーシャルがエレジタットを見つめる。

「・・・・・エレジタットさん、もしかしてあの爆発に巻き込まれていたのか?」

「・・・・・もう、だからファティが逃げろって言ったのに!」

 憤懣やるせないといった表情で、テレフタレートはそう言い放つのだった。


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