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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第四章

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最強の参謀が来た


「マリア姉さん」

「あ、みっちゃん、待ってたよ。アイレダちゃんもありがとうね」

「いえ、ミシェル様のいるところが私のいる場所ですので」

「重い重い……というか物理的に重そうだけど?」


 教会で掃除をしていたら、みっちゃんとアイレダちゃんが入り口から入ってきた。ただ、二人とも大きなリュックを背負っているけど、何事?


「魔国に行くわけだし、準備は必要でしょ。それに孤児院の皆から預かった物もあるから荷物が増えたの」

「準備は分かるけど、預かった物?」

「孤児院の皆はね、マリア姉さんからのお金だけでのんびり暮らそうなんて思ってないってこと」

「うん?」


 詳しく聞くと孤児院で作った物とかを魔国でも売れるかどうか感触を試すらしい。こういうのは商人さんに任せるのが一番なんだけど、魔族との取引はなかなか難しいらしく、お願いしようとすれば中間マージンを結構取られるので、孤児院で独自のルートを開発したいとのことらしい。


 皆たくましいなと思ったらみっちゃんの発案だった。魔国との独自ルートを作ることができれば相当な儲けになるとか。商人ギルドを通さないルートなのでやり過ぎると問題だけど、孤児院は商会ではないし、先生の庇護下にある孤児院なので文句は言えないだろうとのことだ。


「それに女神エスカリテ様の巫女であるマリア姉さんがいた孤児院だよ?」

「それが?」

「今、世界で一番勢いのある神様の巫女様だからね。ルガ王国もそうだけど、マリア姉さんが気分を害するような真似をする馬鹿はいないってこと。いたら本当の馬鹿ね」

「そうなの?」

「そうなの。というか、なんでマリア姉さんが知らないのよ」

『エスカリテ様、知ってます?』

『え? 知らないけど、そうなの?』


 私だけでなくエスカリテ様も知らないじゃん。知らないって答えたら、ソナルクさんに言い寄ってた商人のことがあって、商人界隈でも私の名前が有名になっていると教えてくれた。どうやら、清廉潔白な商人は少ないようで、私に手を出したら神の力でその不正を暴かれるのではないかと怖がっているらしい。


 しかもルガ王国での所業というか、宝物庫から勝手にお金を奪って炊き出しした件もなにやら変な噂が飛び交っているようで、私という人間がどんな人なのか分からなくなっているとか。ただ、一つ分かっているのは、怒ったら神の力を行使することに躊躇しないということらしい。


 悪女ムーブはしたけど、なんでそんなことになっているのか。みっちゃんの話だと、この国と教団が私がすごい的な噂を振りまいているとのことだけど、そこにルガ王国が私が怖いという噂も乗っかっているようで、なにやらヤバイ人という形が形成されているらしい。


 悪女どころかヤバい人って、ただの悪口じゃねーか。これで聖女にしようなんて動きはなくなるだろうけど、彼氏のハードルが上がるのは変わんないのでは? エスカリテ様に理想の彼氏を見つけてもらっても「無理」とか言われたら困るんだよ。何してくれてんだ。


 くそう、今度は少し評価を上げないと駄目なのかも。聖女ムーブが必要か。私は心清らかな乙女でもないから聖女ムーブなんてできないんだぞ。なんとか徳を積むように頑張るしかないか……世の中ままならないね。


 それはそれとして事情は分かった。魔国と取引しても商人ギルドが孤児院に対して何かを言ってくることはないとのことだ。将来的に分からないので今のうちに稼ぐだけ稼ぐってことらしいけど、実際に良い稼ぎになれば孤児院も安泰だからね。


 それにみっちゃんの話だと、辺境は魔物が多いのでもっと性能が良い武具が必要とのことだ。辺境では魔力を帯びた鉱石が良く採れるけど、魔国ではもっと良質な物が採れるし、この国には加工技術もそこそこあるから上手く回れば戦力アップにつながるとか。辺境も魔物に殺されちゃうような冒険者は減ったけど、怪我する人は多いからね、戦力アップは大事かも。


 みっちゃん、色々考えているんだね。その結果が背負っているリュックの大きさってわけだ。さすがは我が最強の参謀よ……!


「それでマリア姉さん、いつ頃魔国へ向かうの?」

「みっちゃんたちが行けるならいつでも。でも、教団の皆さんと調整が必要かな」

「私達の方はいつでもいいから、すぐに調整して」

「大丈夫? 疲れてない?」

「これくらいで疲れる子があの孤児院にいると思う? アイレダも平気でしょ?」

「あと十キロは走れます!」


 いやいや、走らないで。というか、あの孤児院での力仕事は女の子でもしてるからね。ならすぐにでもイルディちゃん達と調整かな。なんか教団からの依頼ってことで魔国へ行くことになっているから馬車とか色々用意してくれるとか言ってたし。


 リュートちゃんにそれを頼むと、すぐに見えない護衛さんが教団へと向かってくれた。いつもありがたい。後で美味しい食べ物を差し入れしよう。


「ところでマリア姉さん」

「なに?」

「さっきからそこでこっちを見つめて震えている黒い鳥は何? 食用?」

「ああ、こちらは――」

『なにこの子!?』

「うわ、びっくりした」

「マリア姉さん?」

「あ、いや、こっちのこと、ちょっと待って」

『ヤバくない? 原石どころか宝石がそのまま道に落ちてる感じなんだけど!?』

『ミナイル様は何を言ってるんです?』

『この子よ、この子! 私には劣るけど美が詰まってる! 私には劣るけど!』


 私には劣るを二回も言ってるけど、みっちゃんを見て興奮しているのは分かる。なるほど、ウチのみっちゃんに目を付けるとはさすが元神、お目が高いぜ。


『しかも隣のメイドの子も何!? うわ、磨きたい……! 死ぬほど磨いて究極の美を追求したい……!』


 アイレダちゃんも対象に含まれたか。みっちゃんは王族、アイレダちゃんは貴族の血筋だしね。私としてはリュートちゃん達も美人だとは思うけど、美の方向性としてはみっちゃんやアイレダちゃんの方が正統派か。


「みっちゃん、アイレダちゃん、こちら、ミナイル様。ギザリア様みたいに転生した元神様」

「また増えたの!?」

「増えたって、いや、間違いじゃないんだけどさ。化粧品を研究、開発したのがミナイル様で、それを見てエルフの国から飛んできたみたい。ちなみにフェニックス」

「フェニ……」

『私は美の女神ミナイル! 二年! いえ、三年で貴方を世界がひれ伏すような美人に仕立て上げるわ! 覚悟しなさい!』

「よろしくって言ってる」

「よろしくお願いします……なんでマリア姉さんはミナイル様に蹴られてるの?」

「……ちゃんと言わなかったからだと思う」


 細い脚だし腰が入ってないからダメージはないんだけど地味にうざい。


「なんかミナイル様があと三年で世界がひれ伏すような美人さんにしてあげるって言ってるんだけど、どうする?」

「……必要ないかな」

『なんで!?』

「なんでって聞いてるけど」

「私は力で世界をひれ伏せるから必要ない」


 腕を組んで仁王立ちしているみっちゃんのドヤ顔がまぶしい。実際にやれそうだから怖いよ。十五歳なのになぁ。それにその隣で何度も頷くアイレダちゃんもどうかと思う。忠誠心がカンストどころか上限を突破してるって怖いね。


『その意気や良し!』

「うわ、びっくりした。だから急に大きな声を出さないでくださいよ」


 頭の中に直接響くから耳を塞ぐって行為ができないんだよね。鼓膜で聞いているわけじゃないから平気なんだろうけどびっくりしちゃうよ。


『いいわね! そう、女は世界をひれ伏せるために存在するの! 美も力もその一つにしかすぎないのよ! この子は世界の真理を理解している!』

『どこかの団体から怒られそうなことを言わないでくださいよ』

『世の中にはね、支配する者とされる者、その二種類しか存在しないの……!』

『会話のキャッチボールって分かります?』

『どうせ支配されるなら美しい者に支配されたいでしょう!?』

『聞いてくださいってば』


 そもそも支配されたくないですけど。ミナイル様の謎理論はともかく、この辺に獣医っているかな? それともフェニックスだから魔物医? ちょっと色々診てもらった方が良いかもしれない。


「マリア姉さん、ミナイル様はなんて?」

「その意気や良しって。あと女は世界をひれ伏せるために存在するとも言ってる。精神科医に診せることも視野にいれるつもり」

「……ミナイル様とは気が合いそう」

「嘘でしょ!?」

『私もそう思ってたわ! 共に高みを目指すわよ!』


 ミナイル様はそういうと、大きな翼を広げ、左の翼でみっちゃんの肩を抱くようにしてから、右の翼で空を指すようにして共に高みを目指そうって感じのポーズをとる。室内なのに。そしてアイレダちゃんはその後ろで小さく拍手している。よく分かってないはずなのに何かを感じ取ったんだろうか。そしてエスカリテ様とギザリア様は『うわぁ』としか言わない。


 お客様の中にこういうのを止める人はいませんかー? ……いないね。お姉ちゃん、妹のことがちょっと心配です。


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