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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第四章

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元神のことを聞こう


『昨日から静かだと思っていたら、そんな風に思ってたんですか』

『だってコトちゃんがさぁ、皆のために色々やってくれててさぁ』

『確かにお二人の意思を継いで人と魔族が争わないようにしてましたね』

『状況的に頑張ったんだなとは思ってたけど、色々やってくれてたんだなって』


 エスカリテ様が昨日からずいぶんと静かだなと思っていたら、みっちゃんの話にあった二千年前のことを聞いて、初代教皇のコト様の行動に感動していたらしい。私も聞いたのは初めてだったけど、勇者さんと魔王さんのことがあったとはいえ、あの状況で魔国に単身乗り込むって普通じゃないよね。


 それもこれも姉だった勇者エイリスさんのためだったんだと思う。天使たちを神として崇める取引をして、天使どころか神すら殺せる可能性のある勇者エイリスさんが死んだと思わせるようにした。さらにはエスカリテ様が邪神と呼ばれないように画策と色々やってるね。


 その意思を継いだのが今の教皇様たちだけど、私もエスカリテ様の巫女として、その一端を担っているわけだ。エスカリテ様に対する信仰心を稼ぐためにもっと色々しないといけない。ウチの子達の提案でエスカリテ様のエピソードが題材の絵本が出来たし、あみぐるみもできたので子供心をくすぐっていこう。それらを他国で売ろうとしている商人もいるし、これは結構いい感じに他国でも信仰心を集められる気がする。でも、こんなんじゃ足りないね。次の一手を考えないと。


「ここに居たのか」

「あ、先生」


 皆が色々やっているから邪魔しないように訓練場に来てたんだけど、先生もやってきた。エスカリテ様が天界にあった剣を持ってきてからというもの、毎日素振りなんかをしているみたいだ。今日もそうかと思ったけど、私を探していたみたいだ。


「私に何か用事ですか」

「ああ、そろそろ遺跡へ向かうから、その挨拶にな」

「え? もう行くんですか?」

「マリアもそろそろ王都へ戻るのだろう?」

「はい、明後日には帰ろうかと」

「俺は誰かを見送るような奴じゃないからな、その前に俺が行く」

「そういえばそうでしたね」


 誰かが孤児院を卒業して出ていくときも基本的に先生はいない。どうでもいいと思っているわけじゃない。私のときだっていなかったけど、なけなしのお金を使って馬車を用意してくれたし、今までもそうだった。別れの際の何かが嫌なんだろうね。


『それにエスカリテに礼を言いに来た』

『え? 私? なんの礼?』

『俺に何もしなかっただけでなく、剣を持ってきてくれただろう?』

『それくらい別にどうってことないわよ』

『お前にとってはそうかもしれんが、俺にはこの剣が信頼の形だと思えた』

『信頼の形?』

『お前の期待を裏切らないとこの剣に誓おう』


 おおう、なんかすごい会話だ。聞く人が聞いたらこれもカップルのような会話に思えるかも。まあ、私はそうは思わないけど。私が知っている先生は律儀な人だからね。恩には恩を、仇には仇を、そんな感じだから、先生はエスカリテ様に剣を渡されたという信頼を信頼で返そうとしているんだと思う。


『貴方、本当に変わったわね。二千年前に変わっておきなさいよって言いたいけど』

『遅くはなったが、神でも考えを変えられるという実績は作れただろう?』

『もう神じゃないでしょ』

『そうだったな。今の俺は孤児院のロディスだった。しかし不思議なものだ』

『なにが?』

『神だったころの肩書よりも、今の方が大事に思える』


 おっと、先生が口元を緩めて笑顔になった。最近だとよく見る表情だけど、やはりレア。もしかしたらエスカリテ様と話して心のトゲみたいなものがなくなったのかもね。まあ、いい事だと思う。


『信頼の代わりにもう一つ伝えておきたいことがある』

『伝えたいこと?』

『ナギスダも転生している』

『……なんですって?』


 エスカリテ様の声のトーンが下がった。ナギスダってたまに聞くエスカリテ様がぶっ殺しちゃった神の名だったっけ? 一番むかつく神でいまだにはらわた煮えくりかえるとか言われてた神だ。


『三十年ほど前に会った。はるか昔に転生していたようで、当時でもすでに天使と同じだけの力をもっていたぞ』

『……そう。記憶も残っているってこと?』

『そうだな。一緒に神に戻らないかと誘われた』

『なんて答えたの?』

『興味ないとだけ言った。その後は会ってない』

『そう、アイツ、記憶を持ったまま転生して今は天使と同等なの……』


 声だけで殺気がこもっている感じだね。おそらくだけど、二千年前に勇者さんと魔王さんを相打ちにさせた首謀者みたいなものなんだろう。神々の勢力争いのために人を使って色々やっていたみたいだけど、勇者さんと魔王さんが平和な世界を創ろうとしたときにものすごく反発したらしいからね。


『おそらくだが、ルビルラやサイザ辺りにも声をかけているはずだ。アガロやヌナードは知らないが』

『他にも転生している神が?』

『ルビルラとサイザだけは会ったことがある。二人は……考えが昔のままだったな。記憶も残っていた』

『そう、あの二人も……』


 ルビルラって前に像を破壊したことがあったかな。たしか悪夢を見せるとかどうとか。それに呪いと言えばサイザって神だと聞いたような気がする。もしかしてエスカリテ様にぶっ殺されちゃった神たちって全員が転生している?


『おそらくだがナギスダは輪廻の渦に何か細工を施していたと思う』

『あれに?』


 輪廻の渦ってエスカリテ様が神々をぶっ殺して放り込んだ場所だった気がする。よく分からないけど魂を循環させるシステムとかなんとか。


『勇者と魔王のことでエスカリテが怒り狂うことを分かっていたのだろう。だからその対策をした可能性がある。アイツは常に保険をかける奴だからな』

『その保険だって輪廻のシステムに関しては初めてでしょうに』

『ギザリアが記憶を持ったまま猫に転生したことで思ったことがある』

『え? 何を?』

『ナギスダはギザリアたちで試したんじゃないか?』

『……輪廻の渦の実験台にしたってこと!?』

『ギザリアが転生したのが千年ほど前とか聞いたが、他の奴らはもっと早く転生している可能性がある。それを見て渦の設定を調整した。たとえば確実に人間に転生できるように、とかな』


 エスカリテ様が絶句している感じだ。そりゃそうだよね。私だって同じ人間を実験台にするような真似には絶句しちゃうよ。マッドサイエンティスト的なことだし。いくら転生できるとはいえ、そんなことを試すような考えに至るのが怖い。


『神格に関しても何らかの手があるかもしれん』

『可能性は……あるのかしら?』

『エスカリテはすべての神格を持っているのか?』


 エスカリテ様は答えない。それが答えなんだろう。


『天界の動きに気を付けることだな』

『……天界の動き?』

『ナギスダはすでに天使と同等だといっただろう。すでに天界へのゲートを通り、今はそこに住んでいると言っていた。天使たちを扇動してお前を殺そうとしている可能性はある。天使たちが本当の神になるためにお前は邪魔だからな』

『コトちゃんの子孫からそんな話を聞いてはいたけど、そう、ナギスダがね……』


 教皇様がそんなことを言っていたかな。それにディアナさんの話だと天使様から見てエスカリテ様は災厄だったらしいからね。他にも転生者と魔王さんも。これに勇者さんも生きているから災厄となるわけだけど、その辺りを天使たちに煽ったのがナギスダって神なのかな。


『まあ、お前なら大丈夫だろう』

『え? なによ、いきなり?』

『ナギスダが何をやろうともお前に勝てるとは思えん。たとえ恋人たちを眺めているだけの神だとしても、色々な意味で格が違うような気がする』

『それ、褒めてる?』

『もちろん褒めている。ただ、気を付けろ。お前は無事でも周りは違う。特にマリアはうちの大事な子だ』


 先生……! なんだかんだ言って大事に思ってくれているよ。嬉しいねぇ。


『孤児院の稼ぎ頭がいなくなったら皆が困るからな』

『先生! なんでそんな余計なことを言うんですか! そういうとこですよ!』

『冗談だ……いや、本当に冗談だから』


 普段冗談を言わない人が言う冗談って重いんだよね。普段からもっと練習しておいて欲しい。


『私も貴方の信頼に応えるわ』

『なに?』

『マリアちゃんや皆を必ず守る。もう私は昔の私じゃない。世界に介入することを悪いことだとは思わない。私は神だけど、この世界の一部で皆と変わらない存在、笑いもすれば泣きもするし、気に食わない奴はぶっ飛ばすわ!』


 エスカリテ様がやる気になってる。カップルを見ている時のように鼻息が荒いよ。


『そうか。なら大丈夫だな』

『ええ、だから安心して遺跡で魔道具とか神器を見つけてきて』

『任せろ。マリアもエスカリテを頼むな。たまに暴走するから』

『分かりました』

『ちょっとマリアちゃん? 暴走したことなんてないからね? ないよね?』


 怒りで神々をぶっ殺しちゃった神様が何を言っているんだろう? それに長い付き合いの先生が言ってるんだから暴走する可能性は十分ある。そんなことにならないためにもエスカリテ様をしっかり見てないとね。たぶん、エスカリテ様は自分より周囲が傷つくことで暴走する可能性が高い。そうならないためにも、危ないことに巻き込まれないようにしよう。その上でしっかり信仰心を稼いでいかないとね。


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