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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第四章

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先生の話を聞こう


 先生が元神様だったらしい。神だったころの名前はバルノア。詳しくは知らないけど、あの戦神マックス様が仕えていた神様になる。そしてエスカリテ様が二千年前に怒りに任せてぶっころしちゃったという過去がある。


 今は一触即発な雰囲気。私には見えないけど、おそらくエスカリテ様が立っているだろう場所をロディス先生は見ている。久しぶりに見た先生は相変わらずの白髪に白い髭、そして筋肉。地面に突き刺さった巨大な剣の柄に手をかけていて、いつでも引き抜ける状態だ。


 自分をどうするつもりかと先生は言った。私がエスカリテ様の巫女になったと知った時、いつかこんな日が来るとも。それはどういう想いだったんだろう。私が知っている先生は戦うことしかできない不器用な人ってイメージだ。そして細かいことは気にしない。だからこそ、致命的なまでに孤児院がダメダメだった。


 でも、私にとって先生は先生。言ったことはないけど、父親のように思ってるし、皆もそうだろう。なにかしてもらったような記憶はあまりないけど、ロディス先生という強力な後ろ盾があったからこそ、あの頃の孤児院でも色々やれた。


『何も言わないのかエスカリテ。ならば俺から言おう。俺はまだ死ねん!』


 え? ちょ――


 先生が飛び出したと思ったら、巨大な剣を重さなんてないと言わんばかりに振り回した。ほとんど見えないけど剣技というよりは滅多打ちって感じで、技ではなく力任せに叩き潰すって感じだ。でも、速いし重いからそれだけでどんな魔物も倒せる。


 ただ、エスカリテ様は倒せないんだろう。なにかに阻まれて剣が止まる。そのたびに甲高い音がなっているだけだ。


『そこまで鍛えたのは賞賛に値するけど、その剣じゃ私に届かないわ』


 エスカリテ様の声が聞こえたと思ったら、先生の剣が粉々に砕け散った。


 あの剣って先生が希少な魔鉄――魔力を帯びた鉄で作った滅茶苦茶硬い剣だったと思うけど、それが簡単に砕けちゃったよ。


『記憶が残っているならわかっているはず。神を殺したければ、同じ神格を持つか神器を使うしかない。人の身のまま人が作ったもので神は殺せないわ。いえ、分かっていて襲ってきたわね?』

『やはり届かんか。ならば良い。好きにしろ』

『……うわ、びっくり。本当にバルノア? アンタ、手足がもげようとも戦うタイプだったじゃない?』

『俺も少しは成長したということだ』


 なぜか先生が私の方をちらっと見た。


 え? それは何の視線? ここで助け船を出せってこと? 状況が状況だけにどうしたらいいのか分からないんだけど。ここで丸投げは困るよ、先生。でも、なんとか場をつなぐべき? そもそもエスカリテ様がどこまで怒っているのか、分からないんだよね。勇者さんも魔王さんも生きているわけだし、以前よりは怒りも収まったかな?


 いや、状況はともかく、まずは話し合いだ。私としても先生には生きていて欲しいし、エスカリテ様にも恨みがあるとはいえ、殺すなんて良くない。せめて河原で殴り合いくらいにして欲しい。


『あの! エスカリテ様! 何をどうするにしても、まずは話をしませんか!』


 はて? なんで先生は不思議そうな顔をするんだろう? 視線の意味を考えて助け船をだそうとしてるんだけど? もしかして違った?


『話かぁ……バルノア、貴方のことはマリアちゃんから聞いてるわ。不思議ね、まったく昔のイメージがない。人になって丸くなったの?』

『そんなことよりも、俺を殺さないのか?』

『貴方が記憶をもったまま転生しているなんて思ってなかったから何も決めてないわ。だいたい、その殊勝な態度はなに?』

『一度殺されているとはいえ、生きていると知られれば、また殺されるとは思っていたからな』

『なんで?』

『俺はそれだけのことをしたと思ったからだ』

『……信じらんない。もう一度聞くけど、貴方、本当にバルノア?』

『間違いない。二千年前、お前が見守っていた奴らを操り、そのせいで怒りを買い、殺されたバルノアだ』


 なんだろう、一触即発って感じじゃなくなったけど、気まずい雰囲気が漂い始めた。大体の状況は知っているけど、二人の関係性とか、そういうのは知らないから何とも言えない。


 ここは聞き手に回ろう。エスカリテ様の気持ちは分かるけど、先生は神だったころのような性格じゃないみたいだし、私の父親みたいなもんだからね、何もしないわけにはいかないよ。


『あの、状況が分かりませんから、詳しくおしえてください。神だったころの先生ってどんな感じだったんですか?』

『バルノアは戦闘狂ね。誰それ構わず喧嘩を吹っかけて戦ってた。目が合っただけで剣を振ってくるような奴よ』

『そんな時代もあったな』


 前世でも古いタイプの不良だね。実際にそんな人がいたかどうかは知らないけど、そんな尖ったナイフのような生き方をしている神様なんて嫌だな。


 色々聞いてみたけど、大体こんな感じだ。


 先生――バルノア様は戦いの神として信仰されていたらしいけど、どちらかといえば戦禍の神っぽい。理由はなんでも良い、むしろ理由なんかなくても良くて、戦うことだけが目的になっているちょっと危ない神様としての信仰の方が多かったとか。今はそんな風に言われていないというか、名前すら失われたけど、大昔は混沌神の一柱とか言われていたみたい。先生、なにやってんですか。


 そして二千年前、ナギスダという神と共に勇者さんと魔王さんを操り、相打ちにさせたという。理由は争いのない世界が嫌だったから。平和を作ろうとした二人が邪魔だったらしい。紛うことなき戦闘狂だね。


『理由はまだある』

『というと?』

『本気のエスカリテと戦えると思った』

『エスカリテ様と?』

『原初の神エスカリテと一度本気でやり合ってみたいと思っていた。気にかけていたあの二人に何かあれば、エスカリテは必ず怒り、戦いになる。だが……』

『だが、なんです?』

『戦いにならなかった。怒り狂ったエスカリテと目が合ったと思った直後、俺は胸を拳で貫かれ神格を奪われた』


 先生が昔の不良っぽいと思ったら、エスカリテ様はその上を行ってたよ。いや、まあ、気持ちはなんとなくわかるけどさ。


『違うの! 普通はもっと穏やかなの! 若気の至りってやつだから!』


 そんな話じゃないと思うし、神様に若気ってあるの? それにエスカリテ様、強すぎない? それに原初の神って何? 神様は神様じゃないの?


『記憶をもったまま転生したのは五十年ほど前か。この国で生まれ、そして育った。また強くなっていくことに喜びを感じながら魔物を倒していたら、いつの間にか英雄と呼ばれていてな、そして孤児院の先生とやらになった。面倒ではあったが、孤児院の中から強い奴が現れるかもしれないと思ったから引き受けた』

『その割には孤児院をいい加減に運営してませんでしたか……?』

『どんな環境でも弱い奴は死ぬし、強い奴は生き残る。それだけのことだ』

『えぇ……』


 それはちょっとショック。不器用ではあったけど、色々と気にかけてくれていたと思ってたのに。そんなことを言われたらグレるぞ。


『……だが、面白い奴が来た』

『面白い奴?』

『お前だ、マリア』

『え? 私?』


 元神様の先生におもしれー女扱いされちゃったよ。話を聞くと、私が孤児院に来たとき、すぐに死ぬと思ってたらしい。さっきから先生への好感度が下がっていく一方だよ。エスカリテ様にもう一度本気を出してもらおうか……!


 ただ、武力的な強さはまったくなかったけど、それでも私は強かったらしい。生き残る強さっていうか、孤児の皆をまとめ上げて、集団の強さを手に入れて、あの過酷な環境を生き延びたというのは間違いなく強いんだとか。


 そりゃ、必死だからね。当時は彼氏も出来ずに死ねるかと思ったとは言うまい。もちろん、縁あって家族になった皆を助けようと頑張ったというのが本音だけど。


『そんなマリアや他の皆を見ていて、ふと思った』

『何を思ったんです?』

『お前達のもっと先を見たいと思った。強いマリアもそうだが、あの環境を生き延びた皆が何を成すのだろうと興味が湧いた』

『嘘でしょ!? 貴方が戦い以外のことに興味を持ったっての!?』


 エスカリテ様が驚きの声を上げている。月が割れたというくらいの驚き様だ。神様だったころの先生はやんちゃだったんだろうね。


『エスカリテがあれほど怒り狂ったことを最近ようやく理解できるようになった……と思う。同じ気持ちなのかは分からないが、今の俺も孤児院の皆に同じことをされたら怒り狂うだろうからな』

『……そう。貴方、本当に変わったのね』

『俺も、そう思う』


 そう言って先生は口元に笑みを浮かべた。


 これはかなりレア。戦っている時に浮かべる笑みはもっと怖いし、孤児院だと皆に振り回されて困惑した顔が多いからね。でも、そうか、先生は色々と思うところがあって昔より良くなったんだろう。


 おっと、先生が真面目な顔になった。


『あの時のエスカリテの気持ちを完全に理解したとは言えない。だが、何度殺されても文句を言えないことをしたとは思っている。そして虫のいい話だが、俺はマリアや孤児院の奴らの先を見たい……まだ、死にたくないのだ』


 なるほど、だから、負けると分かっていてもエスカリテ様を攻撃して生き延びようとしたわけか。ワンチャンあると思ったのかな……そんなチャンスはなかったけども。


 事情は分かったけど、エスカリテ様はどうするんだろう。やっぱり許せないかな?


あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


本作「女神(邪神)様はカプ厨!」ですが、今後の更新スケジュールを月、水、金の20:00にする予定です。可能な限りストックを溜めながら推敲もしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

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