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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第三章

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お饅頭を売ろう


「饅頭という食べ物を売るのですか?」

「うん、そう。せっかく作ったから反応を見てみたいし」

「つまり私達に店員をして欲しいと?」

「もしかして護衛に影響出ちゃうかな?」

「いえ、マリア様も店員をするということなので問題はありません。ただ――」

「ただ?」

「私達にできますでしょうか?」

「お金をもらって商品を渡すだけだから平気だよ。そんなに気負わなくていいから」


 リュートちゃんは無表情だけど、ものすごく困惑しているのが分かる。そして初めて見た見えない護衛さん達。皆、女の子やん。しかもメイドさんの恰好。こりゃあ、男性たちに売れちゃうね。でも、掴みはいい。これで実際に食べてもらってリピーターになってくれたら完璧だ。コト様発案だし、この饅頭が聖国のご当地グルメになればいいんだけどね。


 お饅頭を作る材料は聖都で全部揃えることができた。餡子があるとは知らなかったけど、これがあるならあんみつとかあんドーナツとかもいけそう。でも、今回はコト様が残してくれたレシピの饅頭で勝負。それに黒糖で作った饅頭と、それを揚げたかりんとう饅頭も作った。さらに今回は秘密兵器を投入した。というかしてもらった。突貫工事だったけど、こだわりのある職人さん、そして熱血巫女のラーザさんのおかげだよ。二日で作っちゃうんだもんね。コイツで女の子の心も鷲掴みだ。これで世界をとるでぇ……!


「マリア様、饅頭とはこちらにある――猫ちゃん……!」

「そこに気付くとはやはり猫好き……!」


 まあ、気付くも何も饅頭に猫の焼印をいれたんだよね。しかもラーザさんがデザインしたデフォルメの猫の顔。それを鍛冶職人さんに頼んで作ってもらったよ。猫の顔が付いた饅頭……これは売れる!


 リュートちゃんと買い食いした時にこういう遊び心のある食べ物がなかったからやってみた。今度、キャラ弁とか作ってもいいかなー。いや、その前に犬の焼印も作ってもらおう。ラーザさん、デフォルメという概念に困惑してたけどちゃんとデザインしてくれたし、干支シリーズを揃えてもらってもいいかも……猫は干支に含まれてなかったっけ。ねずみのせいらしいけど本当かな。おっと、それはどうでもいい。


「それでリュートちゃん、饅頭は銅貨一枚で販売を――」

「全部買います」

「いや、売るんだってば」

「私が責任をもって大事にします」

「せめて食べよう?」


 リュートちゃんは不思議な踊りを踊った。たぶん、葛藤しているんだろう。今日は使い物にならないかもしれないね。でも、他の護衛さん達がいるから大丈夫だろう。たしか、ホルンちゃんとテューバちゃんだっけ。二人に頑張ってもらうしかない。司祭様もなんか忙しい感じだし、ここは私達だけで乗り切ろう。


 さあ、今日はこの聖都の話題を独占だ!




 お昼前に全部売れるってどういうことやねん。三百個近くあったはずなのに瞬殺だよ。楽団の皆の手際が良かったのもあるけど、神殿、しかも巫女が自ら作った食べ物だからって話題になったからかな。美味しさが二の次になっているのは悲しいけど、売れるってことは分かったから、まあ良しとする。


 それにエスカリテ様も満足しただろう。コト様が残したレシピをちょっとアレンジして売ったけど、家族や恋人と半分こにして食べると幸せになるらしいですよ、と言ったら、すぐに半分に割って食べるカップルが多かったし。しかも半分にするのが下手な男性が大きい方を女性に渡すという行為にまで及んでいた。私の見てないところでやって欲しかったけど、幸せそうに食べてたから今日は無罪放免だ。


『うごごごご……!』

『エスカリテ様、何を変な声を出してるんです?』

『なんて表現していいか分からないから唸ってみた。でも最高! 祝福あれ!』

『よかったですね、コト様との約束が果たせて』

『それね! 雑談的な話だったのよ? ちゃんとした約束っていうよりも、そんなのできたらいいねー程度の思い付きで語ってたような話をさ、いつか私が目を覚ましてくれるって信じてレシピを残しておいてくれたの! もう! コトちゃん、もう!』


 なんかベッドの上で足をバタバタさせた上にゴロゴロ転がっているような音が――あ、落ちた。身体ごとこっちの世界に来れるのに今日はワイドビジョンで見たいとかで視界だけだったみたいだけど、暴れるためだったのでは……?


『痛い! 夢じゃない!』

『大丈夫ですか?』

『大丈夫! なんてったって神様だからね! それよりも嬉しくて仕方ない!』


 喜びが上限を突破してるね。まあ、嬉しそうなエスカリテ様を見るのは嫌いじゃない。実際には見えないけど、なんとなく行動が想像つくというか、分かりやすい。


「あら、まだ売り始めていないの?」

「ラーザさん」

「私も絵を手伝ったから反応を見たいのだけど良いかしら」

「それはいいんですけど、実はもう売り切れちゃいまして」

「……売り切れた?」

「はい、つい先ほど。周囲にまだ食べている人がいるでしょう?」


 そう言うとラーザさんは周囲を見渡してから目を見開いた。一緒にいるラーザさんの護衛さん達もキョロキョロと見てから驚いたようだ。やはり猫は可愛さにおいて最強ということよ。


「三百個作るって言ってなかった……?」

「いいました。なので三百個売れました」

「嘘……」

「猫の絵に惹かれて買う方が多かったですよ」

「そ、そう……ああいう単純と言うか誇張した感じの絵って初めてだったけど、そうなの、人気があったの……」


 確かに最初に依頼した時、リアルな猫を描こうとしてたからね。子供向けの絵のように可愛らしく描いてほしいと言ってもピンと来てなかったから説明が大変だった。というか、あのタッチで絵本を描いてほしいよ……おっと、気付いちゃった。孤児院へのお土産は決まったな……!


「もしかして明日も売るの……?」

「え? ああ、そうですね、教団の方が材料を買い込んでくださったので明日はもう少し量を増やそうかと」


 というか、教皇様がはっちゃけた。どう考えても材料を買い過ぎだよね。まあ、コト様とエスカリテ様の約束だと聞いたら教皇様が手加減する理由がないからなぁ。それにお饅頭を食べたら教団でも売り出しますとか言い出したからね。なんか教団で饅頭部隊を作って研究するとか言ってたけど本気かな。


 それに私もまだもう少し聖国にいる予定だしね。聖都に来てすぐに帰るとか何しに来たとか思われちゃうからその対策だ。


「明日は私も最初から来て良いかしら?」

「もちろん良いですよ。店員もやってみます?」

「そういうのは苦手だから止めておくわ。私の描いた猫の饅頭が、どんな感じで売れているのかを見たいだけだし」

「そうですか。あ、そうだ、売り物じゃなくて練習用の饅頭がいくつか残っているので、護衛の皆さんたちと食べてください」


 リュートちゃん達の切なそうな目が突き刺さるけど、ここは心を鬼にしてラーザさんに渡そう。今日の午後も作るから、リュートちゃん達には出来立てを渡すよ……!


 なんか、ラーザさんが饅頭に描かれた猫を凝視している。なんだろう、不思議な動物を見る目をしているけど、ラーザさん自身の絵だよ?


「あの、どうかしました?」

「いえ、不思議ね。絵って描いたら未来に残る物と考えていたんだけど、食べたらなくなるものに絵が描かれているって斬新というかなんというか」


 確かにこっちの世界だとそういう遊び心は見たことがないかも。ラテアートとかもないし、オムライスにケチャップで絵や文字も書かないし……こいつはガス兄ちゃんに相談しよう。ビッグビジネスの予感がする。


 それはともかく、絵は未来に残る、か。確かに食べたら絵はなくなるけど、この饅頭が教団で作られるようになれば絵もずっと残るんじゃないかな。


「教団で饅頭を作ろうって話もありますので、未来に残るかもしれませんよ」

「……え? どういうことかしら?」

「その猫の絵ですよ。教皇様が猫の絵が描かれた試作品を大変喜んでいましたし、ラーザさんに描いてもらったと伝えたら、別の絵を依頼しようとかおっしゃってましたので」

「きょ、教皇様が!?」

「そもそもこのお饅頭は初代教皇コト様の発案なんです。焼印の絵は追加した要素ですけど、ゆくゆくは教団の印を付けて名物にするとかなんとか。たぶん、ラーザさんに依頼があるんじゃないですかね。私が推薦しておきましたし」


 教団だけじゃなくご当地の印とか作りそう。エスカリテ様のデフォルメ絵を使ってエスカリテ饅頭とかも作るかも……カップルにものすごいご利益がありそう。


「そ、そう……え、推薦してくれたの?」

「素敵な猫の絵を描いてくださいましたし。それに芸術神ミリリン様の巫女様ですから実力的には間違いないので」


 リュートちゃん、首がもげそうになるほど縦に振らないで。何かのホラー映画っぽい。そしてラーザさんはちょっと放心状態。なにか変なことを言ったかな?


 よし、ここは少し話題を変えよう。


「ラーザさん」

「……え? あ、何かしら?」

「依頼ばかりで申し訳ないんですけど、絵本を描いてもらってもいいですか?」

「……それって何? 絵の本ってこと?」


 あれ? この世界に絵本ってないの? そっか、そもそも本がお高いんだっけ。説明はここからか。なら、もう漫画も描いて貰っちゃうか……! みんなへのお土産は決まりだね。帰ったらお饅頭作って、絵本や漫画を配ろう。


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