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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第三章

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巫女の本分を聞こう


 ラーザさんと名乗った巫女さんは、私よりも年齢がちょっと上くらいの人だ。私と同じように金髪で肩までの長さだけど、毛先にはパーマが掛かってて、こっちの世界だとずいぶんと手入れに力を入れているように見える。服装は黒と赤が主体のフリフリがついたゴシックロリータ調。おまけに小さなシルクハットの帽子を頭にかぶっていて、さらには右目にモノクル。なんかすごいな。


 護衛さん達が何人かいるみたいだけど、皆が両手に袋を持っている。なんか疲れている感じだし、それで護衛ができるのかと心配になるね。まあ、いざとなったらその袋は地面に置けばいいんだろうけど。なんというか、ご苦労様です。


 しかしね、ラーザさんはなんでこんなに購入しているんだろう。袋の中がちょっと見えたけど、招き猫を買ってるぞ。埴輪もある。飾るの?


「ちょっと、何をジロジロと見ていますの? 貴方は?」

「すみません。巫女のマリアと申します。こちらの司祭様は同郷でして、この辺りを案内してもらっているところでして」


 嘘は言っていない。一緒に聖国まで来たとか余計なことは言わない。そもそもね、教団の人だからと言って他人の連れに荷物を持てなんてちょっとどうかと思う。司祭様もびっくりして声が出ない感じじゃないの。


「貴方が巫女……?」

「はい。最近巫女になったばかりですが」


 そう言って巫女の証明であるカードを見せる。身分証になるからいいよね、これ。しかもいろんなところで移動のフリーパスになる。巫女様の権力はすごいんだぞ。


「本物ね」

「ご理解いただけたと思います。なので、司祭様は――」

「貴方! 巫女であるならそれらしい服を着なさい!」


 アンタにだけは言われたくねぇ――おっと危ない。口に出して言いそうになってしまった。いやでもね、巫女の服に指定はないけどさ、そのゴスロリ風の服はどうなの。狙ってるとしか思えん。これは高度なボケ?


「貴方のその服! 安物に見えますわよ!」

「自分ではかなり奮発したんですけど」

「いい? 巫女は神様にお仕えするという重要な役目があるの。貴方が貧相な服を着ていたらお仕えしている神様まで侮られてしまうのよ」


 む? そういう考えはなかったけど、そういうこともあり得るのかな? 確かに貧相な服を着ていて、エスカリテ様まで貧相な神様だと思われたら嫌だけど。


「補助金は申請したのでしょう? 巫女としてまずは身だしなみを整えなさい。貴方、見た目は悪くないのだから――あら? ちょっと待って……?」


 え? なに? ラーザさんが右ひじを左手で抱えながら右手を顎に当てて、私のことをジロジロ見始めたけど。なんだろう、前世でファッションチェックする人みたいなポーズをしているけど、採点でもされてんの、これ。


「貴方、最近流行っている石鹸や化粧品を使っているわね? 世間の目は誤魔化せても私の目は誤魔化せないわよ!」


 最近流行ってる石鹸とか化粧品ってソナルクさんが錬金術で作ってくれたあれかな。確かに愛用してるけど、最近流行ってるんだ? まだ王都や周辺国くらいでしか出回ってないと思ったけど。


「ええと……」

「貴方がまだ若いというのもあるけど、お肌はプルプル、髪はサラサラでかすかに柑橘系の香水を使ってるわね……焼き鳥のタレの匂いもするけど」


 焼き鳥はさっき食べました。でも、かなり的確な指摘だ。ソナルクさんが作った石鹸とシャンプー、リンス、そして基礎化粧品程度だけどお肌にもそれなりの物とミカンの香りがする香水をちょっとだけ振りまいた。最近まで野宿だったけど、昨日の夜はお風呂付の宿に泊まれたから奮発したんだよね。それを見抜くとは。


「合格!」

「え? 何がです?」

「私としたことが貴方の貧相な服装に騙されてしまったわ。服ではなく自分の身体に投資しているとは……なるほど、貴方はそうやって相手を振るいにかけてるのね。これを見抜けない奴は相手にする必要はないと!」

「いえ、してませんけど――」

「いいのいいの、みなまで言わなくていいわ。私にも分かる。相手をする必要がない人って多いですものね」


 今のところ私の中でその筆頭なのがラーザさんですけどね。一人で納得しているんだけど、もう帰ってもいいかな。


「同じ巫女でも相手にするべきかどうか迷うことが多いのだけど、貴方――マリアさんは合格よ! このラーザが話をする価値がある人と認めましょう! 何か困ったことがあったらいつでも相談にきなさいな!」


 うぜぇ――おっといけない。乙女がそんな言葉を使っちゃいけない。少々――いや、かなり面倒くさい人ではあるけど、悪い人じゃないような気もする。巫女とはこうあるべきという信念が強すぎる気はするけど。


「というわけで、そちらの司祭様も荷物は運ばなくていいですわ! マリアさんをちゃんとエスコートして差し上げなさいな!」

「え、ええ、ありがとう、ございます……?」


 司祭様、なぜかお礼を言っちゃったよ。まあ、そういうのを言わせちゃうような雰囲気がある人だよね、ラーザさんは。ディアナさんとは方向性が違うだけでなんか貴族的なオーラが出てるよ。これが覇気か。


「ですが、困りましたわ、買い過ぎてしまった私が悪いのですが、荷物を全部持っていくには人手が足りませんわね。ここは神殿から応援を呼ぶしか――」

「あの、それでしたら私が運びましょうか?」

「……マリアさんは巫女ですわよね? それにこの辺りを散策しているのでは?」

「とくに目的があったわけではありませんから。司祭様だけに荷物運びをさせるのは駄目ですが、私も一緒なら問題ないです」


 エスカリテ様がカップルウォッチングを嗜みたいって話はあったけど、それは今日じゃなくてもいいしね。今回は偵察みたいなもんよ。この辺はカップルが多そうだし、また明日来ればいい。


「司祭様もいいですよね?」

「……マリアさんがそう言うなら」


 なんか残念そう。でも、ラーザさんは悪い人じゃなさそうだし、巫女同士仲良くなっておくべきだと思う。それに教皇様の教団の仕事が落ち着くまでは時間はあるわけだし、それまで明確な目的もないし。


「リュートちゃんも大丈夫かな?」

「問題ありません。焼き鳥は食べ終わりました。美味しかったです」


 早いね。残りは持ち帰りかな。熱々じゃなくなるけど部屋でこっそり食べよう。


「というわけで荷物を持ちますよ」

「……素晴らしいわ、マリアさん!」

「うわ、びっくりした」


 両手で思いきり両肩を押さえつけられたよ。そんなに力はないんだけど、いきなり接近されたから驚いちゃったね。


「困っている人がいたら助ける、それが巫女の本分! たとえお仕えする神様のお力とは違うことであっても、誰かを助けようとする気持ちはとても大事ですわ!」

「はぁ……」

「そのあたりをはき違えている巫女がなんと多い事か! マリアさん、貴方は巫女になってまだ日が浅いとのことですが、ちゃんとした巫女ですわよ! 自信をもってくださいまし!」

「は、はい、ありがとう、ございます……?」

「その気持ちはずっと大事になさい。誰からも尊敬され、慕われる巫女になれるよう、お互い頑張りましょう!」

「あ、えっと、はい、頑張ります……」


 意外と熱血だった。漫画的な表現で言えば目が燃えてるね。こういう巫女さんもいるんだねぇ。そうだ、どんな神様にお仕えしているのか聞いておこう。


「あの、ラーザさんがお仕えしている神様はなんと言う方か伺っても?」

「もちろんです。わたくしがお仕えしているのは芸術神ミリリン様ですわ」

「ミリリン様ですか」


 私でも知っているほどの有名な神様だ。芸術家に慕われる神様であり、価値のある絵画はほとんどがミリリン様の巫女が描いたと言われているほど。私は一度もその絵を見たことはないけど。


「マリアさんがお仕えしている神様はなんというお方なの?」

「私がお仕えしているのは女神エスカリテ様です」


 ここで言って大丈夫かな? まあ、もう言っちゃったんだけどさ。


「エスカリテ様と言うのね。初めて聞く名前だけど、何がお得意な――え? ミリリン様? なんです? 頭を下げろ? それはどういう……はぁ、それを伝えればいいのですか?」


 ミリリン様はエスカリテ様をご存じの様だ。いや知らない天使はいないのか。マックス様とは私が気絶中に戦ったみたいだけど、今回はそんなことないよね?


「ミリリン様は以前、ミナイル様に仕えていたとのことらしいですけど……ミナイル様って誰かしら?」

「え? ミナイル様?」

『うわぁ……いやいや、本人じゃないのね。なら同情するのが正解かしら。とりあえず、分かったとだけ伝えてもらえる? あと大変だったわねって』

「エスカリテ様は分かったと言ってます。あと、大変だったわねって言ってます」

「大変だった……? ミリリン様、なんで泣くのです?」

『ああ、それと、ミナイルの家からコスメのレシピ以外にも色々持って来てるから、あとで芸術関係の本を渡すって伝えて。私が持っててもしかたないし』

「それとミナイル様の家にあった芸術関係の本を渡すってことらしいです」

「家? ミナイル様って昔の巫女のことなのかしら? え、ちょっとミリリン様!? 号泣!? なぜ!?」


 なんかミリリン様がパニック状態だね。ラーザさんがなだめている感じだけど、このままだと埒が明かないので、まずは荷物を運んでしまおう。


 それじゃ私は埴輪を持とうかな。リュートちゃんはすでに招き猫を抱えているからね。ギザリア様の代わりかな……司祭様も色々入った袋を手に取ったみたいだ。そしてなぜかチラチラと私の方を見てる。何のアイコンタクト?


「あの、マリアさん、出来れば明日も――」

「ああ、はい。明日は今日の続きってことでもう一度店を見て回りましょう。今度はオシャレな飲食店でも行ってみましょうか」


 色々な国の人が集まっているわけだからガズ兄ちゃんへの土産話ができるかもしれないからね。はて? なんか司祭様が嬉しそうだ。まあ、嬉しいならいいかな。さ、ぱぱっと運んじゃいますかね。

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