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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第二章

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妹(別視点)


「私に話があるって聞いたんだけど」

「……戴冠式はまだだけど、この国の女王に不敬すぎるのでは?」

「敬意を払われるようなことをしたの?」

「……むかつくわ」

「それはお互い様」


 カリアが私と話をしたいと言っていたので部屋まで来た。最初、アンタの方から来なさいよと言ったらなんか怒ったみたい。使用人たちがものすごく困ってたので仕方なく足を運んでやったけど、本当に面倒。


 久しぶりに会ったけど、全然変わってない。マリア姉さんにはこの国は五年から十年の間に終わるって話をしたけど、もっと早いかも。まあ、どうでもいいけど。


 私の姉、カリア。母は異なるけど、容姿は似ている。そのせいで幾度となく私と比較され続けた人。魔力があることだけが私よりも優れていた部分だけど、それだけじゃ足りないみたいね。つまらないコンプレックスに囚われて人生を台無しにしている可哀想な人でもあるけど、もう私にとっては血の繋がった他人でしかないし、同情する必要もないわね。


「それで話って? もう明日には帰るんだけど」

「女王になれる権利を放棄したと聞いたわ。同情のつもり?」

「同情? なんの?」

「貴方、私よりも優秀でしょう」

「だから?」

「私に王位を譲ったのは、どういう理由よ!」


 なんか睨まれてる。まさか本当に同情で王位を譲ったと思ているのかしら。だから怒ってるの? しばらく会わないうちに馬鹿になったのかしら。たった七年程度でここまでになるなんて、あの親たちはカリアに何をしたのかしらね。自分たちに逆らえないような傀儡でも作りたかったのかしら。


 まあ、あの二人は二度とこの王都に足を踏み入れることはないだろうから、しばらくすれば洗脳的なものは解けるかしら。でも、私へのコンプレックスはどうだろう。そんなことにこだわっている暇なんてもうないのに。


 マリア姉さんなら何ていうかな。激励する? 慰める? いやいや、マリア姉さんならげんこつね。そして結果はどうあれ最後には頑張ったねって褒めると思う。私にそんな器用なことはできないから、罵倒だけかしら。


「王位を譲った理由ね。言わなきゃわからない?」

「だから、それは私への同情なのでしょう!」

「そんなわけないでしょ。私に同情される立場だと思ってるの? 王位なんていらないって言ったのは、こんな国の王なんて罰ゲームでしかないからよ」

「……罰ゲーム?」

「王と王妃がやらかしたことの後始末を押し付けたってこと。まさかとは思うけど、このまま贅沢な暮らしできるとは思ってないわよね? あの王を見てたならそう思っても仕方ないけど、この後もそんなことしてたら反乱されて終わりよ。いえ、どれほど上手くやっても反乱の危険は常にあるわね。今や王族への信頼なんて地の底だから。そんなことも分からずに弟たちを王にしようと画策している馬鹿達もいるけど、幸せになりたいならアンタも王位なんて譲った方がいいわよ」

「王位を譲った方が幸せ……」


 本当に分かっていないならヤバイけど大丈夫かしらね……いやいや、私には関係のないこと。別にこの国が滅んでも、ああそう、としか思わない。むしろ隣接している辺境の土地が大きくなるならそっちの方が良いかしら。


 ……あれ? なんか私に対する怒りがなくなってる? どうしたのかしら?


「幸せって何?」

「はぁ?」

「言葉は知ってるわ。でも、どんな気持ちなのか良く分からないの」

「ええと、怒りは分かるのよね? 私に対していつも怒ってたし」

「そうね。怒りは分かるわ」

「なら、私が捨てられたときに幸せな気分にならなかった? 邪魔な奴がいなくなったって」

「倒すべき相手がいなくなってがっかりしたわ」


 ちょっと意外。というか、我が姉ながらかなり変。マリア姉さんもかなり変だけど、姉ってそういうものなの? これって特殊な例よね? こんなのが一般的だったら姉妹って妹の負担が大きすぎない?


「ええと、そういうことなら、逆に私が帰ってきて嬉しかったんじゃないの?」

「また私の邪魔をしに来たのかと怒りが湧いたけど」


 姉が不思議ちゃん的な人だった。もしかして嬉しいとか幸せだと感じたことがないの? それはそれで同情するけど。


 でも、よく考えたら、私も似たようなものだったかも。城にいた間、楽しいと思ったことはない。父親である王は私を無視、王妃には毎日のように叱咤され、姉には目の仇にされている。弟たちがいたのは知っていたけど、会ったのは昨日が初めてだ。


 母親の血筋が低いとか魔力がないとか私にはどうしようもないことでずっと疎まれていた。しかも魔力は呪いでないことにされていたし。父親がかばってくれたならともかく、私は最初から他国を侵略するためのコマでしかなかったんだろうな。お母様もなんであんな奴の側室になったのかしら。


 ロディス先生に保護された後もしばらくは何も変わらなかった。なんで私はここにいるんだろうって怒ってた気がする。孤児院の皆に八つ当たりするたびにマリア姉さんからげんこつをもらった。それすらも理不尽だと思うくらい荒れてて、皆には距離を置かれてたほどだ。


 でも、マリア姉さんは――ううん、孤児院の皆は私のために色々してくれた。


「参考になるか分からないけど」

「参考?」

「私が幸せだと思えた時のことを話してあげる」

「……え?」

「私、捨てられた後、孤児院の先生に拾われたの。その後、色々あって、この国に私が生きていることがばれた」


 私が死んだ時点で呪病が振りまかれるはずだから、死んでいないとは思っていたのかもね。でも、どこにいるのかまでは分からなかった。もしかしたら、いつか帰ってくるかもって怯えていたのかも。


 あら? カリアは特に何も言わずに聞いているわね。興味があるのかしら。


「とある商人がアデルラルドの辺境を独立させようとしたけど、失敗して私をさらったの。どこかへ売ろうとしたのでしょうね」

「……生きてたのは知ってたけど、それは初めて聞いたわ」

「でしょうね。それで、その商人には山賊の仲間がいてね、私はその山賊たちのアジトに監禁されたの」

「……それで?」

「マリア姉さんが助けにきてくれたわ。山の森で迷子になった子供を装って、山賊たちのアジトに近づき、わざと捕まったの。捕まった後に隠し持っていた鋭利な石でロープを切ってくれたわ」

「マリアってあの巫女のこと?」

「そう。私ね、捕まった時に暴れたせいで、足を怪我してて歩けなかった。だから私はいいから逃げてと言ったんだけど、げんこつを食らったわ」

「……なんで?」

「家族を見捨てて美味い飯が食えるかって怒られたわ。孤児院は貧乏でろくに食事なんてしてなかったくせにね。むしろ、食い扶持が減ったって喜んでも良かったのに」

「家族……」


 マリア姉さんは孤児院の誰よりも食事を少なくして、腐っているような食べ物を嫌そうな顔一つせず食べてた。私のお腹は鉄製だから大丈夫とか馬鹿なことを言ってたけど。お腹はともかく、家族を想う気持ちはまさに鉄の意思というか、無敵よね。


「マリア姉さんはね、私をおんぶしたまま、山を二つ越えたわ」

「山を……二つも?」

「山賊や魔物に襲われないルートはそれしかなかったらしいの。でも、当時十二、三くらいの子供よ、私も小さかったとはいえ、子供をおんぶして山を二つ越えるなんて尋常じゃないわ」


 途中は気付かなかったけど、帰ってきた時に見たマリア姉さんの足、靴は原型を留めておらずボロボロで血だらけだった。痛みも相当だったはずなのに、私にはそんな顔一つ見せなかった。


 それにマリア姉さんだけじゃなくて、他の皆も色々やってくれていた。マリア姉さんが孤児じゃなくて迷子を装えるようにいつものボロ服じゃなくていい服を用意してくれたり、アジトの場所や魔物がいないルートを大人に聞いたり、調べてくれた。ヒステリー気味で近寄りたくもなかったはずの私のために皆は色々なことをしてくれた。アジトから逃げる直前に食べた携帯食も美味しかったわ。あれはガズ兄さんが作ってくれたのかも。


 孤児院まで戻った後、ロディス先生も遠征先から戻ってきて、事情を知ったら皆を怒ってたけど、誰も悪いと思ってなかったわね。家族なんだから当然、むしろ褒めろって言ってた。今思い出しても笑える思い出よね。当時は違ったけど。


「私ね、孤児院に戻ったとき、初めて泣いたわ。ここにいたときは泣いたら負けだと思って誰にも文句を言われないくらい努力してた。でもね、私、捨てられて、初めてちゃんとした家族ができたの。そう思ったら胸の中が温かくなって自然と涙が出た」

「胸の中が温かい……」

「カリア。これはあくまでも私の例。貴方がどんな時に私と同じ気持ちになるかは分からないけど、幸せなんて人によって違う。貴方も私にこだわっていないで、自分の幸せを見つけなさいな」

「自分の幸せ……」


 私ってカリアに同情しているのかしら。どう考えても親に人生を台無しにされた犠牲者だし、そんな仲間意識が心の底にはあったのかも。どうでもいい事まで語ったような気がするけど……まあいいわ。もう会わないだろうし、餞別みたいなものよ。


「たぶんだけど」

「え?」

「私、ミシェルに勝てば幸せになると思うの」

「……なら決闘でもする?」

「そうじゃないわ。貴方がいらないって言ったこの国、私が女王として貴方が悔しがるくらいいい国にする。そうすれば私の勝ちでしょう?」

「……カリアがそれでいいなら別にいいんじゃないの」

「うん。そうする。貴方が悔しがる顔を見れば幸せになれるかもしれない。私、貴方がいなくなってからも比較され続けていた。帰ってきてからもまた比較されるのかって怒ったけど、これは私の方が優秀だと証明できるチャンスだと思う」

「……そう。なら教えるけど、私の見立てだと早くて五年、遅くても十年でこの国は終わると思ってる。カリアが私よりも優秀ならそれ以上存続させてみたら?」

「十年以上存続させれば貴方は悔しい?」

「少なくとも私が王ならその程度で終わるわ」

「分かった。なら十年以上存続させる」


 なんか、すごく生き生きしてる。まあ、頑張ってとしか言えないけど……いや、言わないけどね。ああ、そうだ、一つだけお願いがあったんだっけ。だからこんなところまで足を運んだんだった。


「最後に一つお願いがあるんだけど」

「いい国はなってもあげないわよ」

「いらないわよ。でも、欲しい物はあるの。今回それを取りに来たのよね」

「欲しい物?」

「お母様の肖像画。勝手に持っていくけどいいわよね?」

「……もちろん構わない。その代わりに一つだけ約束してほしい」

「だから、この国なんてどんなに良くなってもいらないわよ」

「あげないわ。そうじゃなくて、十年後にまた来て。そして悔しそうな顔を見せて」


 ……カリアってこんな人だったのね。今日、初めてちゃんと会話した気がする。そして変な奴だって分かった。そういうのはマリア姉さんだけでお腹いっぱいなんだけど。でも、約束か。血の繋がった姉との約束。


「いいわ。十年後ね。でも、国が駄目になったときも来てあげる。そしてカリアの悔しそうな顔を見て笑ってあげるわ」

「……絶対に私の方が優秀だって証明して見せる!」

「生半可な意思じゃ不可能だと思うけど……応援くらいはしてあげるわ」


 縁を切ったと思っていたけど、細い糸くらいの縁はあるみたいね。せめて私の姉として恥ずかしくない結果を残して欲しいわ。マリア姉さんみたいにね。


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― 新着の感想 ―
カリアちゃん、がんばれ! やっぱり悪は倒されて終わりじゃなくて、そこから芽吹くものがあるのが私は好きです。
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