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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第二章

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仕事を提案しよう


「トッカさんは巫女としてどんなことをされているんですか?」


 虫神様だから虫を操るとかそんなことができるのかも。でも、そんなことができたらかなりの戦力になるかもしれない。この国に残っているってことはスカウトされていないわけだし、そういう力があるわけじゃないのかな。


「虫と……」

「虫と?」

「お話ししてる……ごめんなさい……!」


 なんで謝った? 悪い人じゃないんだけど、なんかやりづらい。でもね、ウチの孤児院にも似たような子はいっぱいいるよ。親がいなくなる事情はそれぞれだけど、それでふさぎ込んじゃう子も多い。だからこそ、私達は仲間だぞってアピールして距離を詰める。そのテクニックを使ってトッカさんとの距離を詰めるぜ。


「すごいですね」

「……ふえ?」

「虫ならどんな種類でも話せるんですか?」

「うん、すごいちっちゃい子は無理だけど、だいたい話せる……」

「ならすごくないですか?」

「すごくない。ほぼ単語でしか会話できないし……それしかできないから、全然信仰されてない。そもそも虫が嫌いな人の方が多いし……可愛いのに」


 私も苦手な虫はいる。ムカデとか……あれ? ムカデって虫だっけ? 昆虫ではないような? ミミズとか蜘蛛も違うんだっけ? 私からすればお前ら姿形は違っても似たようなもんだぞと言いたい。


 トッカさんは虫を可愛いと言える感性があるから巫女になれたのかもしれないね。それよりも、単語だけの会話でも、虫って括りで話せるってなら色々やれるんじゃないの? 益虫って言葉もあるわけだし。


「話ができるなら交渉できるのでは?」

「交渉?」

「蜂に蜂蜜をくださいとか」

「……蜂蜜」

「もちろんただではくれないでしょうけど、クマに襲われない安全な場所を提供するから蜂蜜を少し分けて欲しいって交渉できそうな気がするんですけど」

「……おお……やはり神……!」

「巫女です」


 詳しく聞くと、そういうことはしておらず、普通に世間話をしているだけらしい。単語だけで世間話ってのもすごいけど、この神髄は情報収集のような気がする。もちろんプライベートのことまで探られちゃ嫌だけど、世界中どこにでもいる虫に仕事をお願いできるなら滅茶苦茶役に立つと思うけど。


 それを言ったら驚かれた。トッカさんはもちろんのこと、司祭様やクフムさんまで驚いている。


「でも、できても言わない方がいいですね、虫はどこにでもいますし、プライベートを知られていたら嫌でしょうから」

「虫たちは私達の細かいところまでは分からないから大丈夫。何かしてても、何をしているのか理解できないみたい。そもそも人の区別ができても人の言葉は分からないから細かい情報収集は無理かも」


 その辺は良く知らないけど、蜂は人の顔を認識できるんだっけ? でも、そっか。トッカさんと話ができるのはあくまでも虫神様の恩恵であって、虫たちが人の言葉を理解しているわけじゃないんだ。虫からみたら人間なんて、なんかデカい奴、くらいにしか思ってないのかも。


 でも、何かを認識できるなら色々やれそう。


「虫に頼んで、危険な場所にある薬草をとってきてもらうとかもできますかね?」

「まぁ!」

「ど、どうかな。そんなに重い草じゃなければいける気はするけど……むしろ食べないか心配……あの子達、結構グルメ……」

「まぁまぁ! それができるならこの辺りでは採れない珍しい草を採ってきて欲しいわねぇ。お薬に使える草かどうか私が判断するわよ」

「う、うん、できるかわからないけど、ちょっと聞いてみる……!」


 意外と巫女同士のシナジーがありそう。エスカリテ様の鳩でも草を持ってこれそうな気はするけど、そこそこな大きさだから魔物に捕食される可能性が高いんだよね。それならリアルステルスの虫の方が良さげな気はする。


 あ、そうだ、聞きたいことがあった。


「虫型の魔物とも話せますか?」

「え? 虫型の魔物……?」

「はい、辺境にある森には魔物扱いの大きめな昆虫がいるんですよね。有名どころだとキラーマンティスとかですけど」

「キ、キラーマンティス!?」

「大きなカマキリですね。さすがにあれは狂暴で危険ですから話す必要はないんですけど、ちょっと大きめのカブトムシとか。一メートルくらいかな」


 前世を思い出した今なら言える。大きい虫はキモイ。記憶を取り戻す前だと、あれが日常だったから別に何とも思ってなかったけど、今思うとなかなか来るものがある。孤児院の男の子たちはカッコイイとか言って大喜びなんだけど、私は乙女だからぶん投げることしかできない。畑を荒らす奴は許さん。


「大きなカブトムシ……」

「人を襲ったりはしないんですが、畑を荒らすんですよ。装甲が堅くて追っ払う程度しかできないんですが、話ができるならなんとか交渉できないかなって」


 アイツら空を飛べるし、パワーもあるからちょっと大きいドローンみたいなもんだ。荷物の配達とかしてくれないかな。それなら樹液代わりに畑の何かをあげてもいい。スイカはやらんが。


「え? ロシダス様? ……はい、はい……ロシダス様が言うには可能だって」

「本当ですか? なら今度辺境で交渉をお願いしますよ。なにか役に立つなら食べ物を分けるし、向こうからお願いを聞いてもいいですしね。クワガタとの縄張り争いが厳しいから助けてと言われても困りますけど」

「あ、お願いっていえば……」

「お願い? 何かありました?」

「数日前、王都にいる蝶がもっと花が欲しいって言ってた。聞き流したけど……」

「そういうお願いを叶えれば、こちらのお願いも聞いて貰えるかもしれませんね」

「……おおおお……!」


 トッカさんのジト目がキラキラ輝いている。心なしか肌も綺麗になった気が。まあ、虫がそこまで義理堅いかどうか知らないけど、蝶なら鱗粉とかくれそう。あれも薬の原料として使えるとか聞いた気がする。


『虫……虫……』

『エスカリテ様? もしかして虫が苦手なんですか?』

『そんなことはないんだけど、いきなり目の前に来たらひっぱたくわね!』

『それは条件反射みたいなものですよ、好き嫌い関係ないです』

『そうなのよ、いきなり目の前に出されたから、エスカリテぐーぱんを食らわせ――あー、思い出した!』

『え? 何をです?』

『家にいつも小さな動物とか虫を連れてきてた悪い神がいたのよ! カエルとか蜘蛛とか! いきなり目の前に出されて可愛いだろって言われたけど、可愛いうんぬんの前に驚くわ!』


 エスカリテ様の周りには変な神しかいない。むしろ良い神の方を聞いた方が早いような気がする。でも、なんで思い出したんだろう?


『その子にオゾオンって神の天使だったか聞いて貰っていい?』

『トッカさんにですね? わかりました、聞いてみます』


 エスカリテ様の言葉だと言ってトッカさんを通して虫神であるロシダス様にオゾオンという名前を聞くと、間違いなくオゾオン様に仕えていた天使だと言うことが判明した。なんでもこの世界にいるすべての生命体を集めて研究していたとか。ロシダス様は虫を担当して集めていたらしい。


『あー、やっぱりね。なんか色々研究してたからついでにアイツの家に行って研究結果の資料も持ってくるわ』

『え? いいんですか?』

『乗りかかった船ってやつよ。なにか面白い情報があるかもしれないし。それがあればこのトッカちゃんも虫と話して色々できそうだしね』

『確かに。私には気づかないようなことができるようになるかもしれません』

『うんうん。それじゃちょっと行ってくるわ。一日くらいかかると思う。それじゃ、マリアちゃん』

『はい? なんです?』

『少しは落ち着いた?』

『え? ああ、そうですね。ちょっとだけ落ち着きました』


 嘘です。完全に忘れてました。いかん、怒りが持続しないのが私の欠点だ。皆と色々話していたら楽しくなってきてた。みっちゃんがあんな目にあってたんだから姉の私が怒りを燃やし続けないといけないのに。


『いい? 報復は必ずするんだから焦っちゃだめよ。怒りに身を任せるなんてダメだからね?』

『怒りに身を任せて神様たちをぶっころしちゃったエスカリテ様に言われてもなぁ』

『それは言わない約束でしょ!?』

『そんな約束はしてませんが、エスカリテ様が戻るまでは何もしないと約束しますから安心してください』

『うん、よろしい。それじゃ、ひとっ飛び、行ってくるわ!』

『はい、いってらっしゃい。お気をつけて』


 天界だとエスカリテ様って飛ぶんだな。それとも比喩? まあいいか。それじゃ約束通り、心を落ち着けておこう。


 その後もクフムさんやトッカさんと一緒に色々話していたら、あっという間に夕方になってしまった。


 それじゃいったんお開きということになったら、部屋の扉が勢いよく開いた。みっちゃんとアイレダちゃんだ。ものすごく焦ってる感じだけど、どうしたんだろう。


「マリア姉さん!」

「みっちゃん? どうしたの、そんなに慌てて」

「な、なんかルガ王国で疫病が発生したみたいなの!」

「え? ああ、もしかして呪詛返しの結果かな。まあ、自業自得だね」

「そ、それが、感染がものすごい勢いらしくて、ルガ王国だけじゃなくて、周辺国全部に広がってるみたいなの! この国でもすでに感染が始まっているって!」

「ええ!?」


 くそう、ルガ王国の王族だけじゃなくて、その国民や周辺国まで巻き込んだ呪詛返しかい。エスカリテ様には落ち着けって言われたけど、落ち着いている場合じゃなくなっちゃったよ。でも、エスカリテ様がいないし、どうしたものかな?


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