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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第一章

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保険をかけよう


「ありがとうございました」


 そうお礼を伝えると、冒険者さん達は「これくらい余裕余裕」と言って笑いながら帰って行った。余裕とは言っても石でできた等身大の女神像だからめっちゃ重いはず。それを数人がかりで教会まで運んでくれたんだからありがたいよね。


 さすがに無料というわけにはいかないので、心づけ程度に銅貨を多めに渡した。それで美味しいものでも食べてください。ガズ兄ちゃんのところは男性だけで行くのは難しいので、カフェの方を紹介しておいた。夜ならお酒も出るしね。


 そんなこんなで運び込まれたギザリア様の像。正面にはエスカリテ様の像を置きたいので、その右隣だ。うんうん、少し見栄えが良くなったかな。今日は色々あったけど終わりよければすべてよし。明日は明日の風が吹くってね。


 よし、ギザリア様の像をちゃんと拭こう。その後にお酒を捧げればいいかな。ギザリア様の像を拭いていると、エスカリテ様が『うーん、うーん』と唸っている。声だけなんだけど、ものすごく邪魔です。


『どうかしたんですか? ちょっと――いえ、かなりうるさいです』

『あ、ごめんね。昔のことをちょっと思い出してたから……ギザリアってこんなに綺麗だったかな? ちょっと盛ってない?』

『そこに疑問を持つんですか?』

『大昔のことだし、ちょっと記憶が曖昧なんだけどね。でも、こんなんだったかな。そもそも私達ってこの世界に顕現することはほとんどないから盛ろうと思えばいくらでも盛れるんだよね』

『神様なのになぁ』

『神だっていい感じに見られたいの!』


 そりゃ、信仰心を集めたいなら見た目が良い方が集まりやすい。でも、嘘は良くない。実際に顕現した時に違うじゃんとか言われたらエスカリテ様だってショックだろうに。大体、神様が見栄を張ってどうするんだろう?


『エスカリテ様の場合は忠実に再現しますから安心してください』

『そこはちょっと盛ろうよ!』

『もしかしたら顕現する日が来るかもしれないじゃないですか。そんなときに見栄を張ったと言われていいんですか?』

『……それは嫌かも。信仰心が下がりそう』

『なら決まりです。エスカリテ様の像を見つけて、どこか盛られていたら修正しますから、きちんと申告してください。あとで嘘が分かったら見栄張りの女神って言いますよ。それはもう声を大にして言います』

『マリアちゃんは私の巫女なのになぁ』


 ブツブツ言っているエスカリテ様を放っておいて拭き掃除の再開だ。でも良かった。エスカリテ様は怒りが収まったようだ。これも邪神像を破壊したことや、ギザリア様の像が見つかったおかげかな。嫌なことを思い出しても、楽しかった頃も思い出したから相殺されたのかも。まあ、エスカリテ様はそんな風にしている方がいいよね。怒ってばかりいるような神様の巫女にならなくてよかったよ。


 その感謝の気持ちも込めて丹念に拭こう。でも、お酒好きの神様か。それならカフェの店長さんのところにも置いてもらおうかな。石工職人さんに小さい像を作ってもらってお酒の守り神ってことで販売……なかなかの儲けが出そうな気がする。


 おっといけない。そんなことよりも天使たちのことだ。よく考えたら状況は分かったけど、これからどうするのか決めてなかった。私の中では決まっているけど、エスカリテ様と相談しながら決めないと。


『エスカリテ様』

『なぁに? やっぱり盛ってくれる?』

『いえ、そうじゃなくて、これからどうしましょうか。神と名乗っている天使たちのことですけど』

『放っておきましょ。別にどうでもいいし』

『いいんですか?』

『何かできるとは思えないしね。天使たちが全員揃ったって私のいる場所には来れないし、来れたとしても私を倒せるとは思えないから』

『そうなんですか?』

『人から見たら天使だって神に思えるほどの力はあるだろうけど、神と天使にも同じくらいの差があるからね。たとえ眠っていても負けないと思う。なんで勝てると思ったのかは知らないけど、たぶん、勘違いしちゃったんだと思うよ』

『辛辣ですね』

『それくらい神と天使には差があるんだってば。たった二千年でそんなことも忘れちゃったのかな』


 神様や天使の感覚ってよく分からないけど、二千年が、たった、か。人の感覚だと二十年くらいなのかも。エスカリテ様がそういうなら問題ないのかな。戦神マックス様……まあ天使なんだろうけど、その傘下につくと言うのは天使の力を貸すようなことなんだろう。たとえ、マックス様に全部の天使が力を貸してもエスカリテ様には勝てないらしい。どこまで力の差があるのかは知らないけど、冗談で言っているようには思えないから、本当にそれくらいの差があるんだろうな。


『そんなことよりもさ』

『なんです?』

『エイリスちゃんのお墓もそうなんだけど、いつかベルトちゃんのところへ行きたいなって思ってるんだけど、お願いしていいかな?』

『もちろん構いませんよ。今は魔国にもお金さえ払えば入国はできますからね。それにも巫女特権で無料とかあればいいんですけど』

『相変わらずの即断即決ね! すっごく嬉しい!』

『そこまで無茶な話じゃないですから。それに謝罪しに行くんですよね?』

『それもあるけど、聖剣の結界を解いてあげようと思って』

『え? でも神様でも結界が解けないとか言ってませんでした?』


 司祭様の話だと聖剣が魔王さんの生命を維持していると同時に神々でも解けない強固な結界が張られているとか。確か今は廃墟となっている魔王城にあるとか言ってたかな。


『その神って天使のことでしょ。今の私でも無理だとは思うけど、信仰心が集まればやれそうな気がする。むしろ、信仰心があれば神にできないことはない! もちろんできないこともあるけど、それくらいならできるはず!』

『そういうことですか』


 信仰心さえあればエスカリテ様はなんでもできる……あれ、でもそれって天使たちも同じじゃないのかな?


『あの、天使たちも信仰心が集まればやれそうですよね?』

『そもそも天使はできることが少ないから信仰心を集めたところでどうにもならないと思うよ。それが神と天使の差でもあるし』

『え? そうなんですか?』

『うん、ほら、今の神って何かをアピールしてるでしょ、戦の神とか。あれってそれしかできないっていう意味じゃないかな。天使って神に力の一部を与えられているだけだし、そこまで万能じゃないんだよ』

『なるほど』


 そういえば、戦神マックス様も信仰はされているけど、やってくれることは戦神の加護を付与してくれるくらいか。それに神様は助言をしてくれるくらいしか聞いたことがない。それでも相当な物なんだけどね。


 それにしても天使はなんで神様を名乗っているんだろう。エスカリテ様が天界の上層から出てこなくなったから自分たちが神になり替わろうとしているのかな。そうなるとエスカリテ様を倒して本物の神様になろうとしているのかね。トップがいなくなれば自分たちがトップになれるという思考なのかも。


 しかしね、神様も天使も人よりも上位の存在なんだから、もうちょっとちゃんとした存在であって欲しいよ。やってることが人と変わらないじゃん。なんというか残念だよね。神様といえば、全知全能、清廉潔白、秩序最高みたいな感じだと思ってたんだけど、勢力争いとかどこかの大企業なのかと言いたい。


『マリアちゃん!? なんか信仰心が下がってない!? なんで!?』

『エスカリテ様がってわけじゃなくて、神様とか天使が俗っぽいと思ったので』

『あー、そういうこと。神も人も、結局、力の差があるくらいで本質はあまり変わらないのよ。だからこそ、神は人に介入しすぎない方がいいんだけどねー』


 はて? エスカリテ様のテンションが下がった?


『どうかしました?』

『なんでもないよ。その考えも今はちょっと違うかなって思ってるし』

『はぁ、そうなんですか?』

『そうなのよ。まあ、そんな話はどうでもいいじゃない』


 あまり触れられたくないのか、エスカリテ様は話を終わらせたいみたいだ。まあ、神様が介入して勇者と魔王が相打ちっぽくなったしね、神様は人の世界に介入しない方がいいと思っているのかな。


「マリア様」

「え?」


 いきなり声をかけられたと思ったら、教会の入り口のところに数人の騎士っぽい人たちがいた。国の騎士様じゃなくて、ディアナさんの護衛だ。こんな時間に何の用だろう。


「ディアナ様の遣いできました。夕食を共にしたいとのことです」

「えっと、断れる話なのですか?」

「断れると思っているのですか?」

「ですよね」

「馬車を用意してあります。どうぞ」


 断れるとは微塵も思ってないけど、同じ巫女だしワンチャンあると思うじゃない。でも、信者の数に差があり過ぎて巫女の力関係に影響してる感じだ。あんたらの神は神じゃないぞと言いたいけど、そんなこと言ったら教団に異端審問されちゃいそうだし、そんなことはできないよね。


 それにしても夕食か。話を聞いたのは今朝だし、よく考えろって言ったくせに、大聖堂に行ったことは分かっているからとっとと回答しろってことなんだろう。どう考えても無理やり傘下につくように言ってくるよね。司祭様は断っても大丈夫とは言ってたけど、保険はかけておきたいな。


「すみません、用意するので少々お待ちください」

「いえ、ディアナ様を待たせるわけにはいきませんので」

「そこをなんとか。ディアナ様に失礼があってはいけませんのでせめて髪を梳かすなどの身支度を。田舎者でマナーはなってなくとも、それなりの礼儀を尽くしたいと思います。許可をいただけませんか」

「……承知しました。できるだけ早めにお願いします」


 時間稼ぎおっけー。その間に可能な限りの保険をかけよう。小さい掛け金で大きな保証、いざとなったら大聖堂へ逃げられるようにしておこう。教団がどう考えているのかは知らないけど、司祭様は味方になってくれるはず。


 自室に戻ってパパッと櫛で髪をとかして服のホコリを払ってから手紙を書く。


『エスカリテ様、鳩たちは夜でも飛べますか?』

『そんなことより大丈夫? 強そうな人たちがたくさんいるんだけど』

『だから保険をかけておくんですよ。ガズ兄ちゃんと司祭様に手紙を届けてください。最悪の場合は孤児院の先生にもお願いしたいんですけど』

『あー、そういうこと! 大丈夫、鳩たちも夜目がきくようにしておくから!』

『どこに連れていかれるかも分からないので、まずは鳩に追跡を。私が危険な目に合いそうなら鳩に手紙を届けるように頼んでください。そして手紙を渡したら案内を。手紙には簡単に事情を書いておきますので』

『分かったわ! 鳩たちもまかせろって言ってるから安心して!』

『頼みます』


 ディアナさんの性格から考えて断ったら怖い目に遭いそうだよね。というか、脅しで無理矢理従わせようとするかも。でもね、やりたくないことはやらんよ。大体、エスカリテ様を倒そうとしている奴の傘下につくわけがないからね。しかし今日は長いね。さっき、終わりよければすべて良しって言ったのになぁ。




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