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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第一章

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突然の来訪

 

『お酒が美味しいだけで信仰心が上がるのねぇ』

『ギザリア様に感謝ですね』

『仕方ない、私の部屋を散らかして帰った恨みは忘れてあげるわ!』

『二千年以上前の話ですよね?』


 部屋を散らかしたくらいで何年越しの恨みですか。たぶん冗談だとは思うけど、エスカリテ様のことだから恨みに思っていてもおかしくないような気もする。まあ、恨みというか、いい思い出って感じなんだろうな。エスカリテ様ってマジ切れすると神様をぶっ殺しちゃうからね。


 カフェの店長さんが言うには、昨夜、ギザリア様のカクテルは評判が良かったようだ。レシピはあってもその通りに作れるのは店長さんの腕がいいからだろう。店長さんはレシピ通りにやれば誰にでも作れるよ、とのことだが、そんなわけあるかい。あのカップをシェイクする技は熟練の技術が必要だと思う。


 そしてそのカクテルはエスカリテ様に教えてもらったともしっかり伝えてくれたようだ。神様の助言、恩恵は寄付が必要なこともあって裕福な人達しか受けられない。なので庶民はそこまでの信仰はしていないとのこと。エスカリテ様は無料で色々やってくれるから簡単に乗り換える人も多いようだ。やっぱり無料って素敵だ。


 戦神マックス様みたいに恩恵を受けやすい戦神の加護、いわゆるバフ効果があるけど、あれにも寄付が必要だからね。寄付の値段によって加護の強さが変わるって逆に面倒なような気がするけど、あれは巫女様が調整しているのかな。そんなわけで最近はエスカリテ様の株が急上昇だ。エスカリテ様の株は配当金が高いぜ。


 それはさておき、店長さんには申し訳ないけど女神の吐息の材料が揃いそうだから、執事さんが持ってきたらすぐに作ってもらいたい旨を伝えた。もちろん依頼料としてお金を払う旨も伝えたんだけど、昨日のレシピだけで金貨数枚のおつりがくるからいらないと言われてしまった。むしろ、このカフェでは永続的にお酒は無料でいいとまで言われた。まだ飲めないんですけど、二年後に後悔しないようにしてください。


 せめてものお礼としてカフェを掃除することにした。そんなことさせられないと言われたけど、することがないんだよね。というか、汚れが気になる。我がモップさばきの前に消え去るがいい。


『ねぇねぇ、マリアちゃん、すっごい豪華な馬車がこっちに来るわよ?』

『え?』


 店内の掃除をしてからその後はカフェの前でホウキを持って掃除していると、エスカリテ様が言うようにお店の前に豪華そうな馬車が二台停まった。その後ろには馬に乗った騎士様が五人ほどいて厳重に護衛をしているみたいだ。かなり場違いで、店の近くにいる人達もなんだなんだと馬車の方を見ている。どう考えても貴族様が使うような馬車なので恐る恐るって感じに見ているわけだけど、私は逃げたくなってきた。間違いなく執事さん絡みだとは思うけど、まさか主さんが来た?


 一番前の馬車から執事さんが出てきて、私に頭を下げてくれる。そして馬に乗っていた騎士様たちも馬から降りて真ん中の馬車の近くに並ぶ。さすがにこういう時にどうすればいいのか分からない。助けてみっちゃん。


 ぼーっと見ていると、二台目の馬車からびっくりするくらい気品のあるおばあ様が降りてきた。歳はおそらく七十歳は越えていると思う。綺麗な白い髪がびしっと整えられていて、服装はもとより何から何まで全くスキがない。こういう時は馬車を降りるときにエスコートすると思うんだけど、それがなく、普通に降りてきた。よく知らないけど、それはいいの? というか、私はどうすれば? 五体投地?


 どうすればいいのか迷っていると、おばあ様が私をちらりと見た後に執事さんへ視線を送る。執事さんが笑顔で頷くと、おばあ様も笑顔になった。


「はじめまして、マリアさん」

「あ、はい、えっと、巫女のマリアです」

「そんなに緊張しないで。今の私は何の肩書もない、ただのおばあちゃんよ」


 無理です、それを口にしなかった私は偉いと思う。そして辛うじて微笑むことができただけでも自分を褒めたい。一応、これはお忍びなんだろう。誰がどう見てもそうじゃないけど、お忍びなのだ。暗黙の了解的な感じだけど、それに全力で乗っかるしかない。後で不敬とか言ってギロチンされるのは困るけど、普通にしているなら大丈夫なはず。普通ってできるかどうか分からないけど。一応予防線は張っておこう。


「その、私は辺境育ちの孤児でして、なにか無礼なことがあったとしても田舎者の不作法だと笑っていただけましたら――」

「まあ、あの孤児院の。でも、貴方は神にお仕えする巫女様。たとえ相手が国の王だったとしても貴方のすることに無礼なことなどありませんのよ」


 巫女という特権階級がすごすぎる件について。王様と巫女って同等なのか。でもね、神様は偉くても巫女はそうでもないと思う。


「私がお仕えする女神エスカリテ様はそうかもしれませんが、私は神様の声を聞けるだけの巫女でしかありません。そして私自身は貴方様に可能な限りの敬意を払いたいと思っております。その、行動が伴わないこともあるかもしれませんが、その時は笑っていただけたら幸いです」


 そう言って頭を下げると、なんだか静かになってしまった。沈黙が怖いです。でもすぐにおばあ様のこらえるような笑い声が聞こえた。笑い方まで気品がある。もしかして侯爵じゃなくて公爵あたりまでいっちゃうの?


「マリアさんは本当に素敵ね。孫のお嫁さんに欲しいくらいよ」


 ははは、御戯れを。貴族様のお嫁さんなんて無理です。この泥棒猫とか、しつけのなっていない下賤な輩とか言われた上に婚約破棄させられてギロチンコース間違いなしだ。前世でよく読んだ。


「エルド……様、マリア様が困ってしまいますので、そろそろ――」


 おっと執事さんが助け舟を出してくれた。空気を読んでくれる人って素敵です。


「あら、ごめんなさい。でも、マリアさん、本当に気にしないで。貴方には指輪を見つけてもらったり、思い出のカクテルを再現してもらったり、私の方が貴方に頭を下げなくてはいけないのよ。だから普通にしてね」

「はい、努力いたします……」


 この言い方もどうなんだろうと反省。でも、おばあ様、執事さんはエルド様って呼んでたかな? そのエルド様がまた気品のある笑い声を出している。さらにはいつの間にかエルド様の背後には二人のメイドさんが立っていた。見えるからいるのは分かるのに、気配が全くないんですけど?


 そのメイドさん達がいつの間にか持っていた豪華そうな箱を開けた。動きにまったく音がないって怖い。ただ、箱の中に橙色の果物がこれまた豪華そうな布の上に乗せられている。メイドさんが言うにはこれがサードオニキスオレンジらしい。うん、私でも魔力を感じるほどだ。


 でも、実際にこれで女神の吐息が作れるかどうか分からないんですけど。執事さん、話が違うよ。正しいかどうかわからないうちに、主さんが来ちゃダメじゃん。そんな視線を執事さんに送る。届け、私の想い……できる執事さんは違うね。私の恨みがましい視線に気づいてくれたようだ。


「マリア様、申し訳ありません。主がどうしても行きたいとのことでして」

「あの、まだ女神の吐息かどうか分からないので無駄足になりかねないのですが」

「いいえ、果物の名前を聞いて間違いないと確信しました」


 エルド様が自信たっぷりにそう言った。私もそうであってほしいけどさ、予防線をいっぱい張りたいお年頃なんです。これで違ってたらものすごく失望されちゃうのに。私が失望されるだけならまだいいんだけど、これってエスカリテ様のことでもあるんだよね。信仰心うんぬんじゃなくて、エスカリテ様が失望されるのは嫌だ。ちょっと残念だけど、いい神様なのに。


『マリアちゃん、なんか私のこと褒めたり貶したりしてない?』

『気のせいです』

『というか、私と話すときよりも緊張してるよね?』

『それはまあ。エスカリテ様は庶民派なので緊張しないんですよね』

『庶民派!? 神なのに!?』


 神様だから勘が鋭いのだろうか。でも、それよりも今はこっちだ。ドキドキしてきた。頼むから女神の吐息であって欲しい。


 とりあえず皆さんを店内に案内する。カフェの店長さんも外の状況は分かっていたと思うんだけど、ものすごいびっくりしている。それはそうだよね。いきなり貴族様のご夫人が来てるわけだし。


 なぜか固まったままの表情をしている店長さんが手招きで私を呼ぶ。


「お嬢ちゃん、これはどういうことだい? 依頼と聞いていたけど、この方の?」

「私も今知ったんですけど、そのようですね。貴族様が直接来るとは私も思ってなくて。執事さんだけの予定だったんですけど」

「昔から行動力のある方だったからね……今、貴族様って言ったかい?」

「ええ、高位の貴族様だと思うんですけど詳しくは知りません」

「ああ、そうか、お嬢ちゃんが成人したのは最近だし、辺境生まれっていってたね」

「店長さんはご存じなんですか?」

「自分くらいの年齢なら誰でも知っているほどだよ。最近はあまりお見掛けしなかったけどね。というか、この方に女神の吐息を作るのかい?」

「そうですね。あ、毒味が必要ですよね? 私はまだお酒は飲めないんですけど」

「それはそこの執事さんやメイドさん達がやると思うから大丈夫だよ。それよりもこの方のためにカクテルを作るのか。冒険者のころに遭ったドラゴンよりも恐怖を感じるよ……」


 ドラゴンと比較されてさらに怖いと思わているエルド様って何者? でも、好奇心はしまっておこう。


 店長さんとそんな話をしている間に執事さんやメイドさん達がてきぱきと場を整えていた。もちろん、無茶な改装をしているわけではなく、今のテーブルや椅子に綺麗な布を敷いたり、護衛のためか少し家具の位置を変えたりと細かい対応だ。まだ営業前だから他にお客さんはいないんだけど、今日は貸し切りになるのかな。


 まあいいや、あとは店長さんに任せよう。私もメイドさん達みたいに気配を隠すんだ。私はただの置物です。


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