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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第一章

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調理師見習と受付嬢(別視点)

 

「ガズ、今日はもうあがっていいぞ」

「ライディさん、お疲れ様です。今日も忙しかったですね」

「落ち込んでいる暇もないくらい忙しいってのはありがたい話さ」


 店のコンセプトを変えてからたった一週間で売り上げが倍増した。それもこれも全部マリアのおかげだ。アイツには孤児院時代から借りを作りっぱなしだが、いつか返せるときがくるのかね。


 コンセプト以外にも色々と助言を貰えた。マリアが言うにはお仕えしている女神エスカリテ様の助言らしいが、本当かどうか怪しいもんだ。カップルを守護する神様なのだからあり得そうな話ではあるが、マリアが自分の考えを述べただけのような気もする。最初のカップルが来る店という提案はエスカリテ様ならそう言うに決まっているとは言いつつもマリアの言葉だったからな。


 それに今回だけじゃない。マリアは昔から面白い奴だった。俺たちじゃ考え付かないようなことを言い出して、さらに結果を出す。アイツが孤児院に来てからはそれまでとはかなり変わった。


 先生は元冒険者だからか孤児院を出た後に俺たちが冒険者として生きられる術しか教えてくれなかった。それはそれで貴重な技術ではあるが、マリアはそれ以外のことも学ぶべきだと先生に言ってたな。


 文字の読み書き、計算、それに料理でも裁縫でも役に立ちそうな技術は町にいる年寄りに教えてくれと頼んでいた。王都に来て初めて知ったが、あの孤児院はこっちの学校で教えていることよりもはるかに高度だ。


 不思議だ。文字の読み書きや計算が大事だということをなんで知っていたのだろう。孤児院に来る前だっていい暮らしをしていたわけじゃない。両親も普通の庶民だと聞いた。それなのに「知識は大事!」とか言って色々やってたな。なぜと聞いたら「なんとなくそんな気がする」としか言ってくれなかったから最初は反発も多かったけど。


 ただ、間違いなく大事な知識だったと今なら分かる。王都に来て冒険者をやらずにこの店で働けたのは文字の読み書きと計算ができたからだ。洗礼で調理の才能があるのは分かったけど、それだけじゃ雇ってもらえなかった気がする。マリアに無理矢理やらされていたことではあるんだが、おかげで望んだ仕事に就けた。孤児院の奴らも将来の選択肢が大幅に増えただろう。特に女の子たちに冒険者は難しい。でも、あの孤児院でちゃんと勉強したならどこででも働けるだろう。


「そういえばマリアちゃん、今日は来なかったな」

「カップルだらけで来るのが難しいって言ってましたよ」

「そうなのか? せっかく賄を無料にしたのに。気にせずもっと来てほしいもんだ」

「まさかとは思いますが、ライディさんはマリアのことを……?」

「単なるお礼だよ。俺があと十、いや五歳は若けりゃ考えるが」

「それは良かった」

「お、もしかしてガズの方がマリアちゃんを好きなのか?」

「好きか嫌いかで聞かれたら当然好きですよ」

「なんだ、その煮え切らない言い方は」

「マリアと付き合うなら命懸けですからね、気軽に好きとは言えませんよ」

「命懸け? なんで?」

「マリアは孤児院で人気者なんですよ。アイツを泣かせたりしたら、まず間違いなく孤児院全員を敵に回しますね。もちろん、俺も敵に回ります」

「それは怖いが本当に?」


 これはあの孤児院の出身じゃないと分からない感覚だろうな。孤児院の皆は先生を含めてマリアに恩がある。そんなマリアを少しでも不幸な目に合わせたら、比喩でも何でもなく、その相手を山に埋める。その証拠というわけじゃないが、懐にしまっておいた手紙を取り出した。


「昨日、孤児院から届いた手紙です。金がないのに手紙なんて良く出しましたよ」

「確かにそうだが、それがなんだ?」

「内容は、マリアが変な男に騙されて付き合うことになった、一緒に王都へ行ったから隙を見て男を山に埋めてきて欲しいって内容でしたね」

「はぁ?」

「マリアに聞いたら王都に到着してすぐに振られたから、みぞおちに頭突きかまして金を奪ったって言ってましたけどね。運の良い男ですよ」

「マリアちゃん強いな! でも、男の運が良い?」

「ええ、俺に埋められないで済みましたからね。確認したところ、昔王都で色々やらかしていた男みたいで、マリアが王都へ来るときに乗っていた馬車に隠れて戻ってきたみたいです。彼氏ってことですんなり通れたみたいですよ。その後、マリアにやられて道端で気絶していたところを衛兵に連れていかれて素性がバレたらしく、改めて追放されましたが」


 まったく、マリアの奴。押しに弱いというかなんというか。その男もよくもまあ孤児院の奴らの目をかいくぐって付き合えたもんだ。男を見たことはないが、かなりイケメンだったのだろうか。ミシェルの手紙によれば、顔はまあまあだが性根が腐ってるとのことだが。よく考えたら、ミシェル基準でまあまあは相当なイケメンだな。


「まあ、そんな男のことはどうでもいいんです。簡単に言えば、マリアの彼氏になるなら、それこそどこかの国の王子様くらいじゃないと釣り合わないってことですよ。本人はともかく、孤児院の奴らは皆そう思ってますね」

「良く分からないところもあるが、マリアちゃんは皆に愛されてるんだな」

「本人は鈍感なのか、まったく分かってないようですが」

「それもマリアちゃんらしいところなんじゃないのか?」

「確かにそうですけどね」


 おっといけね。話してたら結構な時間になっちまった。店を掃除をしておかないと。マリアの奴、掃除は自分でしないと怒るから、それが習慣になっちまった。でも、そのおかげなのか店の評判もいい。カップルで食事をするなら綺麗なところが良いってな。マリアには先見の目というか、未来を見通す力でもあるのかね。




 夕方になって冒険者の人達も増えてきたわね。ここからが踏ん張りどころ。今日は終わったら、エールを片手に焼き鳥を食べよう。そういえば、最近王都に鳩が多い気がする。あれ、なんだろ? まあ、それはいいか。そんなことよりも頑張っていきましょう。


「次の方どうぞー」

「ルルちゃん、なんかさ、変な像を破壊してくれる巫女様がいるんだって?」

「……雑談ですか? それとも依頼?」

「もちろん依頼だって!」

「それでしたら、マリアさんですね。像の大きさとか材質によって値段は変動しますけど、大体、銀貨一枚から十枚くらいで受けてます」

「これならどれくらい?」


 なんか以前にも見た感じの像だから、エスカリテ様の像じゃないわね。なら、これは邪神像。金属製で高さ三十センチ、いままでの状況から考えて銀貨三枚くらい? でも、中には強力な物もあるらしいから私じゃ正確なところは分からないわね。少し多めに言っておこう。


「これくらいの大きさなら銀貨五枚くらいかと思います」

「それなら頼むよ。なんかこの像を拾ってから運が悪くて。雑貨店も買い取りたくないって言うし」

「ならギルドで預かりますね。次にマリアさんが来たら頼んでおきますので」

「あのさ、それなら相場の値段でギルドが買い取ってくれない? 依頼料が足りないなら追加で払うし」

「いいんですか?」

「何か問題ある?」

「ものによりますけど、像の中には宝石があって結構な値段で売れますよ。最初に像を壊した時に出た宝石は金貨二枚くらいで売れたらしいです。それに材質が金属の場合は希少な物の可能性もあるので、それらは鍛冶工房に売れます」

「え? マジで?」

「像を手に入れてからの不幸の度合いによっては、価値の高い宝石が出るかもしれないとマリアさんは言ってました」

「へぇ! でも、その巫女さん、マリアちゃんだっけ? よく正直にそんなこと言ったね。黙って宝石を貰っちゃえばいいと思ったんだけど」

「私もそう思ったんですけどね……ふふっ」


 あらいけない。マリアちゃんの言葉を思い出して笑っちゃった……あら? なんで私の方を見てびっくりしているのかしら?


「ごめんなさい。それでどうします? 買取もしますけど」

「……あ、ああ、その前になんで笑ったの? 長年通ってるけど初めて見たかも」

「ああ、マリアさんが命懸けで頑張っている冒険者さんからお金を奪うのはなしって言ってたのを思い出しまして」

「巫女様なのに? でも、そうか、冒険者に対して命懸けで頑張っているか……」


 冒険者は危険な仕事が多いけど、普通の仕事をしている人からすると下に見られがち。専門的な技能や才能を持っていないから冒険者をやっているって思っている人も多い。名前が売れているような一流の冒険者ならともかく、普通の冒険者だとそんな風に思われることも普通。でも、マリアちゃんはそんな風に思ってない。


「マリアさんは辺境出身の孤児だったそうで、命懸けで魔物を倒してくれる人には感謝しているそうです。ただ、悪人からはふんだくってやるって言ってましたから気を付けた方がいいですよ」

「それは気を付けないとな! でも、巫女さんなのにそんなことを言ってくれるのか……なんて神様にお仕えしてるんだい?」

「女神エスカリテ様ですね」

「冒険者をやってると戦神マックス様を信仰することが多いんだけど、俺はエスカリテ様に乗り換えようかな」

「そう言ってくれる冒険者さんが最近増えましたよ。どちらかと言うとマリアさん本人への信仰っぽいですけど」

「なるほど、それは言えてるな。俺もそんな感じだし。それじゃ、その像を頼むよ。買い取りじゃなくて預ける方で」

「はい、確かに預かりました」


 預かり証を発行してから像を布で包む。この布はエスカリテ様が祝福してくれた物。これで像を包めば呪いを抑えることができるとか。もういくつも像を預かっているけど、足の小指をぶつけることがなくなった。むしろ運気が上がってきた気がする。最近は男性に声をかけてもらえることが多くなった。たぶん気のせいじゃない。見た目は悪くないのに目つきが悪いから男が寄りつかないと言われていた過去とはもうおさらばしていいのかも。


 それにしてもマリアちゃんって本当にいい子よね。巫女様って言うと傲慢なイメージがあるけど、マリアちゃんにはそれが全くないわ。それにお茶菓子を出すと小動物みたいにもぐもぐ食べるし可愛いったらありゃしない。うん、次に来る日が楽しみ。マリアちゃんの専属受付嬢としてこれからも頑張っちゃうわ!


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