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燦然のソウルスピナ  作者: 奥沢 一歩(ユニット:蕗字 歩の小説担当)
第七話:Episode 0・「恋は流星のように」
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■第七夜:土蜘蛛王とデス釣り(1)



 アシュレの視界のなかを巨大な魚影(???)がスローモーションで横切っていった。


「なんだアレ、なんだアレ、なんだアレ!!!!」


 獲物のあまりの巨大さに糸が切れ、後ろに向かって盛大に倒れたイズマに、アシュレはこけつまろびつ駆け寄り、叫んだ。


「いっやあ、お腹空いたから、なんか食べれるのいるかなーと思って釣り針垂らしてみたんだけど、スゲーのがいるんだネ、この湖」

「ボク、昨日、ここで泳いだ! 泳いじゃったよ!」

「アシュレくん、ソレ、マジで?! まだぜんぜん調査が済んでないのに、あいかわらず命知らずだなあ、キミわ。常識ってもんがないの?」


 非常識が服を着て歩いているようなイズマに呆れられ、アシュレは閉口した。

 いや、こんなところでめげているようでは、ダメだ。

 気を取り直して、質問を再開する。


「アレ、なに?」

「んー、たぶん古代生物の生き残りじゃねーかな。下位の海生竜族……メガネプトジェンシス」

「メガネプト……巨大な海神のメガネプト……ナニ、ソレ?」

「んー、人類圏じゃあもう地図のはじっこの海に描かれてるヤツくらいしか、あの姿は知られてないのかなあ」


 どう説明したもんだろうかねえと首を捻るイズマの目の前で、アシュレは呆然と立ち尽くした。

 地図のはじっこの海に描かれている怪物といえば、世界の果ての海:絶対領域海オケアノスを回遊するレヴァイアタンとかヨルムンガンドのような、神話級の存在だとばかり思っていた。

 

「世界の果てを回遊するような……そ、そんな奴らなの? レヴァイアタン? ヨルムンガンド?」

「いや、さすがにレヴァイアタンやらヨルムンガンドを釣ったら、世界の海の栓が抜けちゃうじゃないか。それはないよ。カジキやクジラさえ屠って食べるバカでかい爬虫類トカゲがせいぜいさ」

「な、なんでそんな物騒な奴らがこんなところに……海じゃなく空中庭園にいるの?!」

「なんでって詰め寄られても……この庭園を造ったヤツか、その持ち主か、いずれかの趣味なんじゃないかなあ? もともとは深海潜水にも適応した種だからなあ。飛んできたわけじゃねーっしょ」


 岸辺で話すふたりの後ろで、件の海生竜族が飛び跳ねたのはそのときだった。

 帆船の帆のように大きく展開した背びれが真っ青に光っている!


「やっべ、やっこさん、アレはお冠のサインだぞッ?!」

「え、アレ、こっちにくんの?!」

「やあ、これは想定外だったなあ」


 ボケるイズマにツッコむヒマをアシュレは惜しんだ。

 死にたくなかったのだ。


 脱兎のごとく駆け出す。

 イズマが、それに続いて頭のおかしくなった蜘蛛みたいな走りを披露する。

 ほうほうのていでふたりは高台に駆け上がった。

 病み上がりの心臓がバクバクと音を立て、冷や汗が滝のように流れ落ちた。


 海生のオオトカゲは波打ち際から、波とともに岸辺に向かって十メテルも跳び出してきたが、陸上生活に適応しているわけではないようで、湖岸でしばらく暴れ回ると深みへと帰っていった。


 怒り狂うと帆のような背びれが青く光り輝くのは、カジキそっくりだ。


「あっぶねえ。よかったよ無事に逃げることができて」

「聞いてない、聞いてないよ、こんなの」

「そんなこというなよー、ボクちんたちだって、一昨日、やっと本格的な探索を始めたとこなんだから」

「そ、そうか。みんな倒れてたんだもんね」

「でも、まいったな。これはなかなか問題だよ。湖畔にうっかり近づけなくなっちゃった」

「なにか問題が?」


 事態が把握できず、アシュレは問うた。

 またイズマが口をオー字に空け、呆れたことを表明する。

 無言なのが余計に腹が立つ。


「だってさ、いまあの飛翔艇って貴重な真水の貯蔵庫で、かつお手洗いでもあったわけよ?」

「いっ?! それ、ホントなの?」


 アシュレはさきほどの海トカゲの暴れっぷりを思い出し、それがいかに危険なことであるか改めて認識した。


 さいわいにも飛翔艇にも桟橋にもまだ被害はないようだが、急ごしらえの浮き橋の上を獲物である人間が歩いていたら、あのトカゲは見過ごしたりしないだろう。


 なんとか難を逃れても飛翔艇や桟橋が破壊されないとも言い切れない。


 いやあの巨体が直接ぶつかってきたら、桟橋は確実に藻くずと消える運命だし、飛翔艇のほうは《フォーカス》であるから破壊はともかく転覆くらいはするに違いない。


 青くなったアシュレに、イズマは追い討ちをかけた。


「あと湖は、準生活用水の補給地であり、またお魚の供給源でもありました」

「それ……だいぶまずいんじゃあ……」


 アシュレの問いかけに、珍しくイズマが深刻そうな顔をした。

 口をヘの字に曲げ、眉根を寄せたその顔は端的に言って虫みたいだ。


「ど、どうするの?!」

「ま、いっか。どうせこの話は、アシュレくん起きたら相談しなくちゃいけないことだったんだからネ」


 どうやらアシュレが寝ている間に戦隊の生存に関する事案は、かなり逼迫ひっぱくの度合いを強めていたようだ。


 朝餉あさげの準備が進むベースキャンプに戻るや否や、ふたりは緊急の作戦会議を招集した。




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