66話 命の恩人?
66話 命の恩人?
「もうだいぶ負傷した箇所の状態も良くなりましたね。リハビリも順調そうですし」
「いや、ほんとにありがとうございました」
「いやね、救急車で運ばれてきた時はびっくりしたよ。ついこの間緊急搬送されてきた子だったからさ」
ほんとに申し訳ないです。俺の担当医というかは分からないけど、この前と今回もこの先生が命の恩人だ。ほんとに感謝しかないです。
「まあそれにしても、青春だねー君」
「はあ‥‥‥、なにがですかね?」
今目の前に座っている先生、若くてイケメンの好青年といった感じの人だ。優しい物腰できっと患者さんからの人気も高いのだろうとぱっと見で分かる。
「いや~、あんな美人の女子高生二人から心配されてるなんて羨ましいね~」
「そ、そんなことないですよ~」
何を言うかと思ったらそんなことかい。意外とそういう話もしてくるんだな。今まで診察の時に軽い世間話くらいしかしたこと無かったから少し驚いてしまった。
「ちなみにどっちが彼女なの?、もしかしてどっちもだったり?」
「ははぁ‥‥‥」
‥‥‥この病院ルリさんといい変な人が多いな。なんて反応するのが正解なんだろうか。
答えにくい質問に俺が戸惑っていると、また急に先生が話し出した。
「僕も学生の頃を思い出すようで懐かしいよ。君みたいに沢山の女の子たちと‥‥‥ってうおっ」
すると急に話の途中で変な声を上げて話を中止する先生。
横にいた看護師さんからしれっと足を踏まれていたような気がする。この見た目からは想像できない不甲斐なさだった。
この人の発言から察するに色んな看護師さんとただならぬ関係を持ってそうに思えてきた。確かに、これだけ格好良くてお医者さんだったらモテるんだろうな。
というか俺は別に遊んでる訳じゃないからね。どちらかというと俺の方が遊ばれてるまであるぞ。とにかくその同類を見つけた時みたいな目をやめてもらっていいですか。
「ともかく、ほんとに学生なんて一瞬なんだから後悔しないようにしなさい。最近なにか思いつめてるように感じるって看護師から話があったからさ」
その看護師さんに覚えがあるんですけど、プライバシーが全然守られていないことに対する抗議をしてもいいですか。
「あの二人でどっちの女の子にしようってとこか?」
「いや、違いますよ!」
「ははは、違うのか。俺だったら迷わず二人ともって答えるけど」
すると横にいる看護師さんが口を開いた。
「先生」
「ああ、ごめんごめん。冗談だよ、ほんとだからね?」
なんかめっちゃ焦ってるなこの人。先生はこの看護師さんともなんかあるのだろうか。まあ、この先生にだけは相談したらダメだということは分かるけど。
「ともかく君はもう怪我とかしてここに戻ってくることがないようにな。そして後悔の無いようにしなさいよ、なにがとは言わないけど」
「はい、二度と来ないように努めます」
「よろしい、行きたまえ少年」
俺は二度とこの病院に来ないことを誓った。
もし今度この病院に来ることがあっても、先生は変えてもらおう。




