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異世界転移のお詫びに嫁をもらいました ~スキルか嫁か決断するためにおっさんは神との約束の地へ向かう~  作者: うららぎ
初めての町

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五十二話 先に子供たちの確認をしないと



 □□□□ ルリ視点



 揺蕩(たゆた)う流れの中にわたしは()った。

 目覚めては消えてを繰り返す流れの中にいた。


 それは戻れとわたしを引き寄せる。

 それは留まれとわたしを繋ぎ止めようとする。


 ……戻った方がわたしにとって良い事なのでしょうか。


 でも、感じるのです。

 温かく伝わってくる何かが。

 そして、カイトの姿が思い浮かびます。


 主張もせずに関わろうともせずに、ただ怖がっていた人。

 それなのにわたしを助けてくれる人。

 わたしが助けなければならない人。


 失ったものが満たされていきます。

 気持ちまで温かくなってきます。

 温かくなる気持ちはどこからなのでしょうか。


 その場所に在りたいと辿る先にカイトがいる。

 わたしは逆らうように思い続けました……カイトの事を。



 □□□□ カイト視点



 目が覚めた。

 起きているつもりが、いつの間にか寝てしまっていたようだった。


 ルリは穏やかな顔で眠っている。

 改めてみると全てがバランスよく整った彫刻のような美しさを感じる。

 ただ、表情が乏しいせいで魅力が半減しているんだよね。


 顔を見ていると、ルリのまつ毛が少し動いた。


「……んん。カ……イト…………カイト」


 無意識なんだろう。

 うわ言のように、俺の名前を呼んでいた。


「ルリ、ここにいるから」


 手を少しだけ強く握り返すと、ルリの目がゆっくり開いた。

 起きたばかりで虚ろな目で辺りを見回すと、重ねている手を見る。


「……あ……おはようございます、カイト。寝てしまっていたようです」


「おはよう、ルリ。体調はどこか悪い所はない?」


「……問題ありません。ずっと手を握っていてくれたのですね」


 ルリが視線を手に向けるとこっちをじっと見て来る。


「あ、ああ。ご、ごめ……」


 とっさに手を離そうとすると、引き留めるように俺の手を押さえる。

 力なく乗せているだけの手が遠慮しているようにも感じられた。


「……わたしは、嬉しいと思いました。だから、謝らないでください」


 そう言うと笑顔を見せるルリ。

 優しい表情につられて、俺も思わず顔がほころんだ。


「ごめん。分かったよ」


「……ふふっ、また謝っていますよ」


 言われて謝っていた事に気付いた。

 笑顔をみせたり優しい表情を見ると、女の子なんだって意識してしまう。


 可愛いらしい表情に変化がないから作り物的な感じがしていたんだけど……。


「と、とにかくさ、何事もなくて良かったよ」


 ルリは頷くと、はっと思い出したような顏をして言った。


「……そうでした! カイト、連れ去られた子供たちの居場所を知っていますか?」


「知ってるけど、どうしてそれを?」


「……バロンさんから聞きました。カイトが知っていると」


「ああ、そうだったんだ。実はね……」


 町の入り口で別れた後の出来事を話す。

 納得したようにルリは自身にあった話も俺に話した。


「……つまりバロンさんは、時間稼ぎをしてくれていたのですね」


「ルリの話も合わせるとそうなるね」


「……わたしは何も知らずに攻撃してしまいました」


「それは気にしなくても大丈夫だよ。そういうのも全部織り込み済みで動いていたんだと思う。気になるなら今度会った時に、俺も一緒に謝まるから」


「……はい、ありがとうございます」


 不安そうだった顏から一転して微笑むルリ。

 神様がルリの事について不安な事言うから、気になって仕方なかったけどいつも通りだよなぁ。何かあったとしても、俺が何とかしないと。


「俺はバロンから依頼を受けた形になるけどさ、この町のどこかに魔力を欠如させるような『術式』があるみたいなんだ。それを探さないといけない」


「……術式を探して、破壊しないといけないのですね」


「そうしないと、子供たちも町に戻すことはできない。術式で一体何がしたいんだろう」


「……魔力を欠如させる……いえ、もしかしたら、吸収しているのかもしれません。それなら町全体にかけている理由も納得できます」


「吸収っていうと病原の根の様に、何かの目的の為に集めているんだろうね」


「……目的は分かりませんけど、そうなりますね」


「とりあえず、先に子供たちの確認をしないと。バロンが安全だと言ってるから大丈夫だとは思うけど」


「……はい。実際に安全なのを確認したいです」


 トントンとノックする音が聞こえる「はーい」と答えるとドアが開いた。

 キリリが入ってくると、ルリを見た。


「入るわよ。二人ともおはよう。ルリは具合はどう?」


「……問題ありません。ありがとうございます」


「なら、良かった。レノの事、助けてくれて本当にありがとう。ガレイムもウォルフも二人に感謝してたわ」


 深々と頭を下げるキリリにルリは声をかける。


「……キリリさん、頭を上げてください。助かって良かったです」


「困った時はお互い様って言うからね。レノの調子はどうなの?」


「レノはまだ起き上がれないけど、身体は調子が良いって言ってたわ。ただ、動こうとすると全身に痛みが走るみたいだから、しばらくは動けない。だから、さっきまで私たちが掛かりっ切りだったわけ」


「……でしたら、わたしが回復しに行きます」


 キリリが申し訳なさそうに首を振る。


「どうもね、痛みは回復魔術では治らないみたい。今まで全身に根付いていた病原の根が無くなったおかげで、魔力の通り道である『魔動脈(まどうみゃく)』がボロボロだって言うのよ。こればかりは、自力で回復するしかないわ」


「……それでしたら、循環魔力(じゅんかんまりょく)で体内の魔動脈を整える事で回復が早まると思うので伝えてもらえますか」


「役に立たない魔力操作の事よね? あれってそんな効果があるの?」


「……循環魔力は正しく行う事で魔力の回復を早めてくれます」


 ルリがキリリに詳しい内容を説明する。


 俺のやり方は一般的ではないみたいで、常にお腹の辺りでマナ・ボールをグルグル回している。そのおかげなのか、確かにマナ・ボールを何個出しても魔力を使った感じがしない。


「そういう事だったのね。あたしも今度から試してみる。レノにも伝えておくわ」

「その魔動脈は、回復魔術でもダメなんだね」


「……回復は身体と体力を目的としています。魔動脈を回復するというものは、わたしの知識にもありませんでした」


「病原の根もダメだし、色々制限あるよなぁ」


「そんな万能なものがあれば神官いらないでしょ。あったら、それはもう神よ神!」


 キリリがそう言うといきなりドアが開いた。

 入って来たのはウォルフだった。


「おい、キリリいつまで話してるんだよ。飯食おうぜ、飯!」


 腹減ったとばかりにお腹をさすっていた。


「はいはい、分かったから、もう。それじゃ、行くわよ」


 食堂に行って皆と食事をとって少し落ち着いた。

 食事は簡素なもので、バゲットサイズのパンと肉と野菜を煮込んだスープだったけど結構美味しかった。バゲットは少し硬目だったけどね。


 レノはまだ部屋から出る事ができないのでガレイムと一緒にいるようだ。


「ふぅ。ようやく腹が落ち着いたな」


「あんた、よく食べたわねぇ」


 キリリが呆れ顔でウォルフに言った。


「んで、これからどうするんだ?」


 ウォルフの問いに、俺は答えた。


「連れ去られた子供たちのいる場所を怪盗バロンから聞いたんだ。無事だとは思うんだけど、確認しに行きたい」


「マジかよ。どこにいるんだ?」


「この町の北門を抜けた先にある大岩付近にいるって聞いたんだ」


「あの大岩の先は森になっていて、何もないわよ?」


「合言葉があって、岩に手をついたまま『バロン』って言う必要があるんだ」


 その時、ガレイムがしょぼくれた顔をして食堂に入って来た。

 これはレノに何か言われたな、とその場にいる全員が思うのであった。



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