十八話 フォーレリア
この魔力の歪みは何だろうか。
普通の球体だったものが、へこんでいたり、一部は膨れて破裂しそうな形になっていて、視ていて気持ちが悪いものだ。
どうしてこんなになったのだろうか。
原因自体は、さすがに分かっている。
あのフォーレリアの話を聞いてからだった。
神は「魂は……元はあるが」と言っていた。
元ってやっぱりフォーレリアってことだよね。
あの話を聞いてから、様子が変だったし。
だとしても、どうして倒れてしまったのだろうか。
この魔力の歪みが原因なのは、一目瞭然だとしてもどうして歪んだのか。
考えても埒が明かない。
この元凶である歪み……やっぱりもっと深く視るしかないのか。
これ以上は危険だと、何となく分かる。
元々が俺にとっては分不相応な力だ。
「魔眼に囚われて自滅してしまう事もある……か」
ルリは死ぬとは言っていなかった。
今でも身体の感覚が無くなっていて怖いのに、これ以上は……。
中々踏ん切りが付かない。
もっと深く視てしまったら、どうなるのか考えるだけでも恐ろしい。
ルリの心臓部にある歪みに手を伸ばす。
―――バチバチッ!!
漆黒の中に一瞬線のようなものが見えて弾かれた。
「痛たたたっ!! 何だこれ……弾かれるし。 痛いなぁ……ルリはもっと苦しいのかな……」
痛みで思い出した。
ルリは今も苦しがっている。
あんなに魔力が歪んでいるんだ。相当苦しいに違いない。
魔眼で視よう……。もっと深く、その根本を視ない限り解決できないような気がする。
死ぬわけじゃないんだ。
痛みは感じるんだ。これで痛みまで無いと、本当に恐ろしいけど……。
俺は集中した。
この暗闇の中では俺の身体の感覚は無い。
視えるのは、歪んでしまった心臓部にある魔力。
俺は集中する。
歪んでいる魔力の胎動が激しくなっている気がする。
俺は更に集中する。
歪んでいた魔力の中に何かが視えた。
何だろう、映像のようなものが歪んだ魔力の中央に映る。
ルリが盗賊の様子を伺っている様子が見える。これは……。
「ルリの過去の映像……なのか」
これの不思議な所は見えてる映像がルリ視点ではない事だ。
ルリの少し後ろ辺りから映している感じだ。
盗賊に向かってルリは魔術を放った。次の瞬間に映像が切り替わる。
俺が台座の底に沈みそうになったルリをすくい上げた所が見える。
ルリがこちらを虚ろな目で見ていた。
ぼーっと見ているような視線は、ずっとこっちを視ていた。
「ここでルリは私の名前……って言ってたよな」
すると、歪んだ魔力がボコボコと内側から何かを噴き出すように言葉を発してきた。
「……わ……たしの……なまえ……」
「私の名前って、ルリだろ!? 何言ってるんだよ!」
「……わ……たしの……な……」
「おい、ルリ! ルリ!」
これは……またあの時と同じか。
ちゃんと答えないと、繰り返すやつなのか。
「……わ……たしの……」
段々ルリの声が低くなって呻くような音になっていく。
嫌な予感しかしないぞこれは。
何て言えばいいんだろう。
名前……ここでの原因……やっぱりこれしかないか。
「フォーレリア!」
映し出されているルリの目に生気が宿ると、その瞳の奥に吸い込まれるように意識が途絶えた。
ブックマークありがとうございます!
励みになりなります。評価もしてくれると、嬉しいです!




