表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移のお詫びに嫁をもらいました ~スキルか嫁か決断するためにおっさんは神との約束の地へ向かう~  作者: うららぎ
やっと実感、ここは異世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/79

九話 助けては駄目なのですか



 先に向かっていたルリだけど、俺の視界に入る程度には速度を落として走ってくれているみたいだった。森の中で見通しが悪いのに、こんなに早く走るとか見失ったらどうするんだよ。


「ルリ! ちょっと待ってって! そんな考えなしに突っ込んで大丈夫!?」


「……どうすれば良いのでしょうか?」


 俺の声に反応して止まってくれたルリ。

 一応、こっちを向いて話してくれているが、無表情だ。

 血相を変えて走っているかと思ったけどそうでもない。

 どうしてそんなに急ぐんだろう。


 友人とか知人の悲鳴ならまだ分かる。

 少なくとも俺達に関係ある人は、今の時点ではいないはずだ。


「もしかして、悲鳴の声に聞き覚えがあるの?」


「……ありません。悲鳴が聞こえているのに放ってはおけません」


「聞こえた声の距離からして、どんなに急いだとしても間に合わないと思うよ。それに、間に合ったとして相手が人質にしていたらどうするつもりなんだ」


 少しだけ声を荒げてしまった。

 もしかしたら知ってる声を聴いたから動いたのかと思ったのに。


「……助けます。状況に応じて、注意を逸らして助けてみせます」


「そんな常套手段(じょうとうしゅだん)に引っかからない奴らだったらどうするの。自分も捕まえてくださいって、言ってるようなもんだ。ルリが強いのは分かるけどさ、無敵な訳じゃないんだよね」


「……では……どうしたらいいのでしょうか」


「もう、音だってしなくなってるし、もしかしたら全員生きていないかもしれない。それでも誰だか知らない人をそんなに助けたいの?」


「……はい。助けられる程度の力はあると自負しています」


「俺はこの世界に来てもう何度も死にかけた。正直、恐いんだ。他人を助けられるような余裕はないよ」


「……助けては、駄目なのですか。それがカイトの選択なのですか」


 ルリが俯いて、少し虚ろな瞳を俺に向けていた。

 その表情は大して変わった様子が見られないけど、何だか怖かった。

 自分の名前を繰り返し口にしていた人形のようで、その姿に寒気を感じてしまった。


「お、俺の選択って言うけど何なんだよ。ルリが勝手に助けようとしたんだろ! それで急に無表情な人形みたいな顔で選択ってさ、怖いんだよ! そもそもどうして知りもしない他人を助ける必要があるんだ! そりゃ俺だって助けたいよ。でも、何も分からない事だらけで死ぬような目にあった俺の気持ちも考えてくれよ!」


 俺はこの世界が怖い。

 この世界に来てから、狼に殺気を当てられて追い詰められて崖から落ちた。

 洞窟での縦穴で溺死しそうになった。


 神様には殺される。

 赤い猛牛(レッドアピ)には岩に叩きつけられるし……。

 俺は弱いし臆病だよ。

 他人を助けられるほど、出来た人間でもない。


 ルリは俺なんかより全然強いし、怖くもないんだろう。

 だけど、ルリの言ってる事も分かっている。


「……分かりました。これからは、全てカイトの指示通りに従います。ですが、最後に一つだけ教えてください。助けようとする事は間違っているのでしょうか。わたしの力で助けられるかもしれない人がいても、それは間違いなのでしょうか」


「いや、それは……」


 ルリの言ってる事は、間違いではない。

 俺だって指先一つで相手が倒せるなら助けるよ。

 俺にはそんな強さがない。それが一番問題なんだ。


 ああっ、もう!!

 こんな最初から、小さな子(ルリ)相手に怒鳴ったりしてどうするんだよ。


「あー、クソッ!」


 ルリが行けるって言うなら、任せていいんじゃないか。

 竜だって倒すことができるって、神様も言っていたんだ。


 俺は自分の顔を殴った。

 自分で殴っておいて何だけど思った以上の衝撃で気を失いそうになってしまった。


「……カイトの言葉に従います。ご自分を傷つけるのは止めてください」


 ルリの声は心配そうな声はしているけど、完全に無表情になっていた。


「いや、違うんだ! ごめん、俺が悪かった! ルリは間違っていないから、助けてあげて」


 無表情だったルリの瞳に光が宿るように見えた。

 俺の言った事を確かめるように目を見てくる。

 ルリは間違っていないのに、俺が意気地がないばかりに八つ当たりしてしまった。


「……それは、カイトの命令ですか?」


「違うよ。頼りない俺の代わりに、お願いしているんだ」


 ルリは瞬きをすると、もう一度確認するように俺を見ると頷いた。


「……ありがとうございます。カイト、先に行ってきます」


 ペコリと丁寧なお辞儀すると、ルリは駆け出した。

 とてもじゃないけど、追いつけそうにない速度だった。


 いくら調子が良いからって、頑張れば追いつくか?

 普段なら無理だと判断して、追かけようとも思わないんだけどなぁ。


「まあ、ルリは強いから大丈夫だよね」


 とは言ったものの、俺も少し急いでルリの後を追う事にした。

 やっぱり、何かあったら悔やんでも悔やみきれないから。



 □□□□ ルリ視点   



 引き止められた時は、気持ちが落ち込みました。

 それにカイトに気持ち……考えていませんでした。

 カイトを守護する事は問題ありませんが、どうして守護するべきなのかわたしは理解できていません。

 

 わたしは人を救える力を母様から授かりました。

 救えるのあれば優先して人を救いたいのです。


 でも、そのせいでカイトを悩ませてしまいました。

 後で謝らないといけません。

 わたしの事を心配して、言ってくれていたのだから。



 声のしていた場所に到着すると、戦いが終わっていたようです。

 わたしは木の陰から様子を伺うことにしました。


 荷馬車が止まっている場所に、ロープで縛られている人が三人。

 荷物がいくつか散らばっています。

 どうやらもう一台の荷馬車が横転して飛び出した荷物のようですね。


 血を流して倒れている人が約二十人。

 装備品を見ると、鉄の鎧を身に着けている大柄な男の人が血を流して倒れています。


 一人で二十人を相手にして倒したのでしょうか。

 簡単にできる事ではありません。

 周囲に身軽そうな格好の人相の悪い人たちが……十六人いました。


「……数が多いですね」


 わたしが予想していた人数よりも多いですね。

 せいぜいが十人程度だと思っていたのですけど、外れてしまいました。


 盗賊団なのでしょうか。

 中でも赤い布を頭に巻いた主犯格っぽい男の人が何か話しています。


「おい、どうなってんだ! 一人相手に二十人以上もやられちまってよ! お前ら何していた!」


「聞いてくだせえ、お頭! こいつ、ものすごい怪力で剣を振り回すもんだから、何人もやられちまったんですよ!」


「なんだそりゃ! どうにかならなかったのかよ!」


「すげえ勢いで剣を振るもんだから、剣ごと斬られちまうんですよ! しかも、足をつかんでぶん投げたりって、もうめちゃくちゃで! 人質とって、ようやくですよ!」


 とても卑怯な人達です。

 カイトが話していたように人質を盾に、動けないところを攻撃して倒したのでしょう。


 ……今、少し大柄な鉄の鎧を着ていた男の人が少し動いたような……気のせいでしょうか。


「ちっ! しょうがねえ! 痛手を食っちまったな。お前ら! 人質はあとで交渉に使う! 盗ったもんは全部馬車にまとめておけ!」


 これはいけません。

 移動してしまうと、助ける事が困難になってしまいます。

 盗賊の人達が荷物を無事だった荷馬車に向かって運んでいきます。


 重そうな荷物があって四人がかりで運んでいます。

 道の見張りが二人、人質の見張りが一人、荷物運びが十二人。

 後はお頭と呼ばれている人が、全体を見ているようです。


「お頭ぁ! やっぱ荷物が入りきらないっすよ!」


「どうにかしてまとめろ! 少しくらい時間がかかってもいい!」


 盗賊たちは馬車から一部の荷物を取り出して、必要なものを選んでいるようです。見張りと荷物運びの十三人が比較的まとまって近くにいます。


 声を出しては、居場所を明かすようなものです。

 ここは無詠唱でショートサンダーを正確に当てるなら十個が限界です。


 そうなると残りの人達で人質を使いに行ってしまいます。

 ……どうにかまとめて倒せないでしょうか。

 倒れている人……血……ですか……。


 分かりました、これならいけそうです。



 ―――ウォーターボール



 無詠唱で二十個のウォータボールを上空へ、盗賊たちに落ちるように放ちました。これで十三人全員が濡れてくれるはずです。

 高く上がったウォーターボールは放物線を描いて、狙った盗賊達全員に命中しました。


「うわっ、冷てぇ! なんだよ、雨か!?」


「どうしたお前ら! 何で濡れてるんだ!」


「お頭ぁ! 雨じゃないんすか? おれらズブ濡れっす!」


「おい、馬鹿言ってんじゃねえぞ! こっちは濡れてねえ!」


 どこから降ってきた雨かと思っているのでしょうか。

 準備は整いました。



 ―――ショートサンダー



「「「っがあ!!」」」


 無詠唱の五連発のショートサンダーを人質の見張り一人と、荷物付近の盗賊十二人に命中させた。見張りの一人は直接一つ当てて、残りの十二人はずぶ濡れになって水で繋がっている所に落ちて全員感電した。


 死ぬことはありませんが、しばらくは完全に動けないです。


「誰だ! どこにいやがる! 出てこい!!」


 わたしは走ると、捕まっている三人の元へ移動してロープを解きます。

 見張りよりもわたしが早く到着したので、逃げられないように囲んできました。


「あ、あの。助けていただいて、ありがとうございます!」


「……まだ、終わっていません。わたしの後ろにいてください」


 ウォーターボールとショートサンダーを限界の数を連続で使用しました。

 次に魔術を使うまで、しばらく時間がかかりそうです。

 幸いあと三人です。近接戦闘で何とかなりそうですね。


「おい! そこのガキ! どこの誰だ!」


「……盗賊に名乗る名はありません」


「お頭ぁ! この女、やっと捕まえやした!」


 お頭の後ろから、別の盗賊が女の子を縛って連れてきたようでした。

 紫のとんがり帽子にローブを着ている女の子が暴れています。


「このっ、離せって言ってるでしょ!」


「おう! いい所に来たな。ご苦労だったな!」


「この女、魔術で暴れやがって大変でした! こいつのせいでほとんどやられちまいました! 魔力が切れたみたいで助かりやした! おい、女! 暴れるな!」


 魔術使いのようですが……あの様子だと盗賊の人の言うように魔力切れですね。それに何てタイミングが悪いのでしょうか。これでは……。


「こんのおぉぉっ! 卑怯者! 絶対に殺してやる!」


「俺達を殺すことは出来ねえな。逆にお仲間が増えたぜ?」


 盗賊のお頭の全身を舐めるような視線に寒気を感じます。


 わたしは後悔しました。

 一人でも大丈夫と、カイトに言ったばかりだというのに。


「ほら、そこのガキ! 身に着けているもの全部脱ぎな!」


 その言葉に身体が強張り、わたしは動けなくなるのでした。




言わんこっちゃないピンチ。


□ ルリのいきなりインタビュー □

ルリ「どうして助けてはいけないのですか?」

おっさん「他人だし、助ける必要ないよね」

ルリ「どうして助けてはいけないのですか?」

おっさん「もしかして知り合いなの?」

ルリ「どうして助けてはいけないのですか?」

おっさん「分かった。行ってきていいよ」

ルリ「どうして助けてはいけないのですか?x10」

おっさん「ひいい!ごめんなさい!許して!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ