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24 王宮の中

 部屋に戻ってくつろいでいると「仕立て屋が参りました」と告げられた。


 入室を許可すると仕立て屋と共にガブリエラさんもやってきた。


「まあ、侯爵夫人。どうしてこちらに?」


「衣装を仕立てるのに陛下やアンドリュー王子では勝手がわからないだろうと思いまして、わたくしが同席させていただく事になりました」 


 正直、ガブリエラさんが同席してくれて助かった。


 お父様達は執務に行ってしまったし、たとえ同席しても役に立ちそうにはない。


 その点、ガブリエラさんならば王女としてどういった物を身に着ければいいのかわかるだろう。


 だが、そう安心していたのも束の間。


 王女という身分だからとあれこれと高額な生地を提案されて、めまいがしてきた。


 つい数日前まで庶民だった私としては少々ハードルが高すぎる。


「王妃様がおられない今、この国で一番身分が高いお立場なのですから、最高級の衣装を身に着けるのは当然ですわ」


 仕立て屋さんの力説もわかるけれど、おいそれとは頷けないのも理解してほしい。


 すったもんだの挙げ句、衣装の注文と共にお父様が用意していたという衣装の手直しもお願いして、仕立て屋との打ち合わせも終わった。


 ガブリエラさんも「また近い内に参ります」と言って帰ってしまったが、帰り際私に向かってニコリと微笑んだ。


「エイブラムったらせっかく王宮に来たからと言って騎士団の訓練に行ってしまったわ」


 騎士団の訓練所って王宮の中にあるのかしら?


 先程お兄様が王宮の案内を、と言っていたのを思い出した。


 王宮の中を案内してもらいながら、騎士団の訓練も見学出来たりするのかしら?


「セアラ。王宮の中を案内してもらってもいいかしら? その時に騎士団の訓練も見学したいのだけど…」


 そうお願いをするとセアラはすぐに側に控えていた侍従に何やら耳打ちをした。


 侍従はすぐさま何処かへ行ってしまったから、騎士団の方に連絡に行ったのかもしれない。


 だけど、いきなり見知らぬ私が見学に行っても騎士団の迷惑にはならないかしら?


 そう思いながらもセアラに王宮の中を案内してもらった。


 今、私がいる所は王族の私的な部分で、他の貴族は入って来られない場所らしい。


 向かいの部屋がお兄様の部屋だとは聞いたけれど、そこからお父様の部屋、そしてお母様の部屋と場所を教えられた。


 流石にお父様とお兄様の部屋は本人がいないので立ち入る事は出来ないけれどね。


 それでもお母様の部屋は入れてもらえたわ。


「王妃様のお部屋は王妃様が生きておられた時のままにしてあります」


 セアラが開けてくれた扉から中に入るといかにも貴婦人のお部屋って感じだったわ。


 入って左側の壁には家族三人の肖像画が掛けられてあった。


 真ん中の小さな男の子はきっとお兄様なのね。


 当然の事ながら私の姿はない。


 その事にほんの少しだけ鼻の奥がツンとした。


「これはアリス様がお生まれになる少し前に描かれた物です」


 セアラの説明によく見ると椅子に座っているお母様のお腹が膨らんでいるのがわかった。


 たったそれだけでも少し救われたような気持ちになるのはちょっと現金過ぎるかしら?


 私的なエリアから公的なエリアへと足を運ぶと、すれ違う人がチラチラと私を見てくる。


 まだ正式に王女だと公表されていないから仕方がない事よね。


 セアラに連れられてやがて騎士団の訓練所へとやってきた。


 カンッとかキンッとか金属の打ち合う音が聞こえる。


 使用しているのは本物の剣ではないらしいけど、それでも当たったら痛いわよね。


 剣道の試合なら見たことはあるけれど、こんな剣の打ち合いは初めてだから新鮮だわ。


 あ、あそこにエイブラムさんがいる。


 私に気付いてくれたみたいでニコリと笑いかけてくれたから、軽く手を振った。


 そうして隅っこの方で騎士団の訓練を見ていたのに、気が付けばお兄様とエイブラムさんが剣を持って対峙している。


 どうしてこうなったのかしら?


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