第109話 探偵
善は急げと言う。
俺は早急に動き始めた。
秋葉原の雑居ビルの3階。
そこが今日の目的地である。
「相変わらずだなこの雰囲気は」
そんな事を思いながら階段を上がる。
外から見ただけではやっているのか、やっていないのかも分からない。
「おーい、佐々木いるかー?」
俺は散らかっている部屋に向かって言った。
「はいはーい。少々お待ちを」
そして待たされること数分で、先ほど声をかけた佐々木が現れた。
「誰かと思えば四宮の旦那じゃないですか。珍しいですね、こんな掃き溜めみたいな所に」
「あ、掃き溜めっていう自覚はあったんだ」
「まあ、そうですね。てか、わざわざ嫌味言いにきた訳じゃないですよね?」
「そうだな。一つ仕事を頼みたい」
「お安い御用ですよ。どんな仕事っすか」
佐々木昇、俺の知り合いの調査員。
いわゆる探偵というやつだ。
こいつの調査スキルはずば抜けて高い。
確か、元警察官だと言っていた。
「俺の偽物が最近この辺に現れているらしい。そいつのことをちょっと探って欲しい」
「四宮さん、またどっかで恨みでも買ったんですか? アイドルのプロデューサーも大変っすねぇ」
俺は以前も似たような被害に遭ったことがある。
その時も佐々木に調査をして貰ったのである。
「恨みを買うような覚えはないんだけどな」
「でも、四宮さんは色々目立ってますからねぇ」
確かに、一般的なアイドルのプロデューサーよりは目立っていることだろう。
メディア等にも取り上げられてしまっている。
「とりあえず、何か分かったら連絡して欲しい」
「分かりました。こっちで早速調査に取り掛かろうと思います」
「おう、頼んだぞ。料金に関してはいくらかけてくれてもいいから」
「何言ってんすか? 四宮の旦那からお金なんて取れる訳ないじゃないですか」
佐々木はキョトンとした顔で言った。
「四宮の旦那には今まで散々世話になってきているんです。このくらいのことはさせてください」
「分かった。でも、金は払う。こういうのはちゃんとしとかないと後で怖いからな」
「相変わらず真面目っすねぇ。まあ、そういうところがあるから皆んなついて行くんでしょうけど」
「じゃあ、あとは任せた」
「任されました」
そう言うと、俺は雑居ビルを後にするのであった。
「さて、これで解決してくれたらいいんだけどな」
そんなことを思いながら秋葉原の街を歩く。
しかし、この件ばかりに時を割いてはいられない。
Whiteはワンマンライブを控えている大切な時期になるのだ。
俺はこのワンマンライブが無事に成功したらWhiteを次のステージへ進めようと考えていた。
だからこそ、このワンマンライブは絶対に成功させなければならない。
こうして、俺は気合を入れて仕事に臨むのであった。
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