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44・少年は対峙する 1

小説回覧数が30万PVを突破しました!

読んで下さる皆々様、ありがとうございますっ!



 ――――――のそり、のそり……。


 巨体が雪を踏みしめる音が静かに響く。

 薄暗い中でもはっきりとわかる雪景色の中に存在する獰猛な黒色……。木の陰に身を隠した僕は、その姿を離れた位置からはっきりと確認した。


 気づかれぬように息を殺しながらその様子をじっと伺う。

 そうしていると、そばに待機している兵士たちの緊張も伝わってくるようで、誰かのゴクリと息を飲む音がいやにはっきりと聞こえた。


 ――――――のそり、のそり。


 ゆったりとしながらも重々しさを感じる動きで、大きな熊が一点を目指してまっすぐに進む。


 森の中でも比較的に見晴らしのきくその場にわざとらしく設置された、生魚や生肉と言った食料の数々。

 古典的ではあるが、飢えている野生動物をおびき出すには一番効果的な罠だ。


 標的が目標までたどり着き、鋭い牙でかじりついた。食事に夢中で完全に油断しきっているところを見計らって、僕は兵士たちに次の指示を出す。


「――――――っ、今だ! 引け!!」

「「はっ!!」」


 兵士たちが各々その手に握っていた縄を強く引く。

 すると、罠を仕掛けた場所――――――熊のいる場所を中心に、縄で編まれた仕掛け網が雪の下から勢いよく広がり、巨体を包み込むように捕らえた。


「グウォォォォっ!!」


 だが、そのまま大人しく捕らわれてくれるほど、野生動物は甘くはない。

 食事を邪魔されたことにも気が立ったのか、身体に絡みつく網を引きちぎろうと、牙を剥きながら暴れだし、こちらの身がすくむほどの鋭い咆哮を放つ。


「駄目ですっ! やっぱり抑えきれません!」

「焦るな、落ちつけ!」


 人数で抑えているとはいえ、野生の熊の力にはやはり敵わない。暴れる力にこちらのほうが逆に引きずられそうになる。


 だが。ここまでは予想の範囲内だ。

 相手の動きを僅かの間でも抑えていられればそれでいい。後は……。


「みんな、そのまま抑えてて! 今こそ発明の力が煌めくとき! さあ熊よ受けてみるがいい!象も一発KO! 特性麻酔銃の威力を!!」


 こいつの出番だ。

 僕の隣でじっと隠れていたレグは、どこの舞台だと言いたくなるような登場台詞とともに雪原に躍り出ると、犯人を捕まえるのに必要な必須アイテムだとか何のことだかよくわからないことを想定して作ったらしい腕に飾る装飾品を模した麻酔銃の標準を熊の首元めがけてまっすぐに合わせ、迷うことなく針を打ち出した。


 プシュ……ッ


「…………」(←熊)

「…………」(←レグ)

「…………?」(←熊)


 のちに、この場にいた全員が語る。

 そのときの熊の心情を人間にもわかりやすく人語で表現するならば絶対こうだった、と。


『いまなんかした?』


「ぐぅ、しまった……っ! 麻酔がどんなに強力でも、打ち出す針が虚弱じゃ皮膚まで届かない……っ!!」

「〜〜〜〜いいからっ! お前はもう後ろで大人しくしてろっ!!」


 あれだけ大見得切っといてまさかの本番でコレかこのやろうっ!!


 緊張の走る場面にも関わらず僕は心から吠えた。胃がキリキリと悲鳴をあげたのは決して気のせいなんかじゃない。なんでこんな局面でまで胃を傷めているんだ僕は。


「グウォオオオ――――――ッ!!」


 そして熊も力強く吠える。

 いよいよ人の力で押さえつけることが出来なくなると、縄を掴んでいた兵士たちは迷わずその手を離した。

 これも打ち合わせ通りの流れだ。


「総員、剣を抜け!!」

「「はっ!!」」


 真っ先に抜いた僕に続いて兵士たちも剣を構える。

 ここからはスピード勝負になる。絡み付く縄に動きを制限されている間に仕留めなければならない。相手は完全にこちらを捕捉している。


(長引けばこちらが不利だ)


 獰猛な野生動物の瞳にも負けない、鋭い銀の刃が雪原の中でギラリと煌めいた。




レグが動くだけで場面がギャグになる、不思議……。


戦闘シーンは本当に苦手です。

戦闘と言っていいのかどうかも怪しいくらいのしょぼいものですが……、うまくできてるといいんだけど(ドキドキ)

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