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「久しぶりね。元気だった?」
久しぶりに会ったが、いつもと変わらない彼の姿になんだかホッとした。
「僕は元気だよ。リリアナ嬢こそ傷は大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。ほら見て。どこに傷があったかわからないでしょう?」
私が頬を見せると、彼の表情が歪んだ。傷は少し前に消えているのでもう痛くないのだが、なぜか彼の方がとても痛そうな表情をしていた。
「ラルフ様?」
「……ごめん」
「え?」
「あの日僕が隣にいれば、リリアナ嬢が辛い思いをせずに済んだのに……」
そう言う彼の表情には悔しさが滲んでいた。どうやら私が思っていた以上に彼は本気で心配してくれていたようだ。その気持ちはとても嬉しく思うが、彼が罪悪感を感じる必要はない。だから私は笑顔で彼に向き合った。
「心配してくれてありがとう。でも私は平気よ。だからラルフ様も笑って?ね?」
「……わかったよ」
彼はぎこちないながらも笑顔を見せてくれた。彼は笑顔の方がよく似合う。
「ふふっ。やっぱりラルフ様は笑ってる方が素敵ね」
「っ!……素敵なのは君の方だよ」
「今何か言ったかしら?」
「なんでもないよ」
「そう?あ、そういえば―――」
それから私たちは会えなかった間の出来事をたくさん話した。会えなかったと言ってもそんなに長い期間ではなかったはずなのに、会話が途絶えることはなかった。




