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「お久しぶりです、叔父様」
私は今、ルーシェント公爵領に来ていた。普段は王都にあるタウンハウスで生活をしているので、ここに来るのは本当に久しぶりだ。
なぜわざわざ公爵領に来たのかというと、皇宮文官に応募するにあたり保証人が必要だったから。叔父にその保証人になってもらいたく、お願いをしにここまで来たのだ。
現在、商会の仕事で各地を飛び回っている父に代わり、公爵領の領地経営を行っているのは父の弟である叔父だ。私はシェザート殿下と婚約するまでは公爵領で過ごしており、叔父は私を本当に娘のように可愛がってくれていた。私にとって叔父は唯一信頼できる人物だ。だから保証人が必要とわかった時、真っ先に思い浮かんだのは叔父であった。
叔父は領地経営に力を入れており、社交界にはあまりに顔を出していない。本来なら顔を出すべき父もまったく社交界には出ていないので、私がシェザート殿下と王妃の仕事を押し付けられていることなど知らないだろう。もしかしたらシェザート殿下に恋人がいることすら知らないかもしれない。だから今回そういった事情をすべて話し、叔父に保証人になってもらうつもりだ。
「久しぶりだな。元気だったかい?」
「はい。叔父様もお元気そうで何よりです」
「見ない間に大人になったなぁ」
「ふふっ。私ももうすぐ十八歳になりますからね」
「もう十八か!ちょっと前まではこんなに小さな子どもだったのに、時間が経つのは早いな」
叔父はそう言って笑いながら私の頭を撫でた。
「はっ!すまん!今や立派な淑女なのに、つい昔のように接してしまったな」
「いえ、嬉しいので気にしないでください」
「そうか?」
「ええ」
「それならよかった。ああ、立ち話ですまないな。何か大切な話があるんだろう?こっちで座って話そうか」
叔父には事前に話があるから訪問したいと伝えはしたが、二日前と急であったにも関わらず、こうして時間を取ってくれたのだ。
早速私はこれまでの出来事を順を追って話した。




