第74話 ガイア王とプラダ王妃の酒宴
空中高速艇シルバースワンの浴室。
サンシール、アンジェリカ、ウェリオの3人は水着姿で、ゆっくりと湯船に浸かっている。
「ふー、空中船の中で、こんないいお湯に浸かれるなんて、最高だわ」
アンジェリカが、大きく息を吐いた。
「本当ですね、アンジェリカさん」
ウェリオが、目を細めて湯にあごまで沈む。
「ちょっと、あんた、端っこにいないで、もっとこっちにきて会話に参加しなさいよ。恥ずかしがる事ないでしょ。姉と一緒に風呂に入る男子小学生か!」
湯船の端で、小さくなっていたサンシールの腕を掴んで引き寄せた。
「あ、ちょっと、やめて」
サンシールは、なすすべなくアンジェリカとウェリオの間に密着して座る。
「…」
真っ赤になって、小さくなるサンシール。
「何よ!もっと反応しなさいよ!こんな美女のとなりにきて、反応うすっ!」
アンジェリカは、サンシールの腕にしがみついた。
サンシールの体に、アンジェリカの艶やかな肌と柔らかい肉が押し付けられる。
「サンシール様は、真面目なんです。やめてあげて下さい!」
ウェリオはサンシールの、もう片方の腕にしがみついて、引き離そうとする。
もう片方の腕にも、白く透明感のある肌と、しなやかな肉がぴったりと張り付く。
「うわあああ!お前等とは、今後一切ここに入らない!」
サンシールは、二人の腕を振りほどいて、ダッシュで風呂を飛び出していった。
「何よ、最初から、それくらいリアクションしなさいよ。可愛いわね」
アンジェリカが、ニヤリと笑った。
「ああ、サンシール様」
ウェリオが、心配そうに言った。
ノドの領内を大きく迂回して、マグリブ到着まで数日。
サンシールは、アンジェリカの悪戯とウェリオのお節介に悩まされた。
そして、ようやくマグリブを眼下に収めるところまでやってきていた。
乾季と雨季のあり、夏は乾燥し、冬は多雨。
広い草原と果樹園、穀物の畑が広がっている。
ところどころに、ゾウやサイなど野生の大型動物の姿が見える。
やがて、大きな石造りの城を中心に広がる木造の家々が立ち並ぶ街が、見えてきた。
「マグリブの首都、キルタだ。ここで、プラダ姐さんと会う約束をしている」
艦橋から、キルタの街を見下ろしながらサンシールが言った。
「ところで、そのプラダって人は、どんな人なの?名前通り、お洒落なのかしら?」
横にいたアンジェリカが、言った。
「いや、現実では知らないが、ゲーム内では猪突猛進の正義感で、いつも鎧姿で馬に乗っている騎兵だった。とにかく、融通の利かない人だよ」
サンシールが、心配そうに言う。
「それは、とても頼りがいがありそうな女性ですね!助けてくれそうです!」
ウェリオは、そういう女性が嫌いではなさそうだ。
「うげー」
アンジェリカは、露骨に嫌そうな顔をする。
「とにかく行ってみよう」
サンシールは、高速艇シルバースワンを着陸させた。
サンシール達3人は、郊外の草原に着陸したシルバースワンを降りて、キルタの街に歩き出した。
そして、少し時間が経った時、キルタの方向から祭囃子の様な音が聞こえてくる。
「ドンドン!」
大きな太鼓の音が近づいてくる。
沢山のシマウマに乗った上半身裸の男達が、手に手に楽器を持って演奏している。
馬車に載せた大きな太鼓を打ち鳴らす者達も一緒にやってくる。
その前に、飾り立てられた巨大な戦象がいた。
上に載せられた台座に、3mはあろうかという半裸で日に焼けた髭面の大男が、あぐらで座っている。
男は、葉っぱで出来たビキニ姿の美女を抱きかかえていた。
「サンシール!ひさしぶりー!!」
ビキニ姿の美女が、サンシールに手を振った。
「ああ?プラダさん??」
あまりにイメージが違いすぎて、サンシールは頭が混乱する。
「とぅ!」
大男は、プラダを抱きかかえたまま大きくジャンプし、サンシール達の前に着地した。
「私は、マグリブ王ガイア!プラダの夫だ!以後よろしく!」
大男は、その筋肉美を見せつけるように胸を張ると、大きな通る声で自己紹介する。
「は、はあ、よろしく」
サンシールは、目を点にしながら、答えた。
「はっはっは、こんな美女を二人も連れて、やるじゃないか!」
プラダは、大きな声で豪快に笑った。
『苦手、一番苦手なタイプだわ』
アンジェリカは、頭を押さえた。
「なかなか、豪快な方で…」
ウェリオも、目を点にした。
「さあ、遠慮なく飲め!食え!」
ガイアが叫ぶ。
その夜、キルタの城の大広間で、盛大な歓迎会が催された。
山海の珍味が並び、大量の酒の入った壺が置かれている。
真ん中にサンシールが座り、両側をガイアとプラダが挟む。
プラダ側の外側にアンジェリカとウェリオが座る。
全員、地べたに座るスタイルだ。
「ほら!あんた達も、もっと飲みなさいよ!」
プラダが勧める。
「勧められて飲まいでかー!」
アンジェリカが、木製の大きなジョッキで、ココナッツで作った、どぶろくの様な酒を一気飲みする。
苦手といいつつ、アンジェリカはプラダと意気投合している。
「いいえ、私は、これ以上結構です…」
ウェリオは、断った。
「さて、ルイーズ様は、ガイア王とプラダ王妃に加勢を頼まれています」
サンシールは、本題を切り出した。
「はぁーはっは!もちろん、引き受けよう!ノドの国とは和平を結んでいたが、破棄だ!すぐに、ノドを攻めるぞ!」
ガイアは、大きなジョッキを飲み干すと、そう断言した。
「きゃー!さすがは、我が夫!混沌-正義の男は、決断が早くてカッコいいわ!惚れ直す!」
プラダは、ガイアに抱き着いて言った。
『いや、和平をそんなに簡単に破棄していいのかよ。こんなの味方にして大丈夫か?』
サンシールは、心の中で呟いた。
「よし!今日は、マグリブと白百合王国の勝利の前祝いだ!飲むぞ!!」
「おおー!」
プラダが、そう叫ぶと、大広間に集まっていたマグリブの者達が、大きな声で答えた。
彼女は、大広間の中心に飛び込むと、官能的なダンスを披露しはじめた。
その美しさに、全員が見惚れる。
「プラダさん、一体何があなたに?」
堅物だったプラダの事を思い出し、サンシールは困惑が醒めない。




