第70話 モルガンとデモゴルゴンの会談
「…」
モリガンは、王座で目を閉じ睡眠状態にあった。
本来ならば高レベルキャラクターは、睡眠や休息を必要としない効果のアイテムの所持は当然であり、そんな必要は無い。
しかし、あえて彼女は眠っていた。
それは、ある会談に水を挿さない為だ。
「ほう、これが、お前の新しい玩具か。うらやましい限りだねえ」
大広間に、デモゴルゴンが現れて言った。
「ふふふ、この子が、この世界に出現するまで随分待った。充分楽しませてもらわないと」
王座の後ろから、モリガンとまったく同じ顔で茶色のドレスを着た女性が現れた。
「モルガンよ、社員がイマジンをプレイするのは禁止。あのアンジェリカとかいう娘のプレイヤーも、お前の部下だろう?」
デモゴルゴンは、秩序ー悪のGMモルガンに言った。
「いまさらですよね社長。それに、この子もアンジェリカも、特別チートは行っていない正規のキャラなのですよ。ただ、社員しか知りえない情報を元にビルドされているだけ」
「それも、そうか」
モルガンとデモゴルゴンは、笑った。
「しかし、カインは残念でしたね。ひさしぶりの玩具だったのに」
モルガンは、言った。
「まったくだ。ソフィアは、まだゲームのプロデューサー気取り。この世界でもイマジンの存続ばかり考えている。5万年も続いたのだ。もう充分だろうに」
デモゴルゴンは、口惜し気に言う。
「我々9人の転生者に許されたのは、それぞれの担当する属性キャラの支援だけ。自分の為には何も出来ない。これでは、超越者として転生した意味が無いですからねえ。出来る事は、たまにプレイヤーキャラを、イジって遊ぶだけ。その玩具を取り上げられるとは、同情しますよ社長」
モルガンは、デモゴルゴンに同情した。
「混沌ー悪のキャラといえば、あの幻魔斎という者はどうですか?」
「あんな色物は面白くない。自ら悪に堕ちるのでは駄目だ。貶めてこそ愉悦を感じるもの」
モルガンは、デモゴルゴンに提案したが、拒否された。
『それに、私の真の目的は現実世界を支配する事。その鍵は、別に見つけてある』
デモゴルゴンは、考えを巡らせる。
「私と、この者は意識を共有している。このゲームを、ひさしぶりに充分楽しませて頂きます」
モルガンは、冷たい笑いを浮かべる。
モルガンとデモゴルゴンの姿は、闇に消えていった。
「…!」
それと同時に、モリガンが目を開く。
「モリガン様、ボイオカッセより東で動きがございました。ルイーズとカインが、挙兵。我々に対して宣戦布告をしてまいりました」
大広間にやってきたワーキンが、王座のモリガンに対して報告する。
手には書状が握られている。
それを受け取り、広げるモリガン。
「イマジンの効果通りに、あのアイテムが発動するとは考えていなかったが、やはり生きていたか…」
それを受け取り、広げるモリガン。
「新ロムルス皇帝ルイーズ、およびロムルス独裁官カイン。ノドの偽りの王モリガンを誅殺するか…。なかなかに勇ましいではないか」
彼女は、嬉々とした顔になった。
「殺れ…」
モリガンは、軽く手を振った。
ワーキンの周囲が闇に染まり、数十人分の光る目に囲まれる。
「闇月暗殺部隊!しまった!」
ワーキンは、咄嗟に悪魔族の本来の姿に戻る。
蝙蝠の羽根、裂けた口、尖った耳、爬虫類の尻尾。
しかし、一瞬にしてバラバラに切り裂かれた上に塵にされてしまう。
「しれ者め。貴様の裏切りなど、とうに分かっておったわ。泳がせていたが、カインが戻った以上、本格的に裏切られてはかなわんからな」
モリガンは、顔をしかめた。
ワーキンを包んでいた闇の中から、黒いSAヘクトールを身に付けたリカルドと、ダークエルフ達、獣人達が出てくる。
彼等は、一様に黒い軽装鎧に身を包んでいる。
闇と暗殺を得意する、闇月暗殺部隊だ。
リカルドは、その隊長である。
「…」
彼等は、無言でモリガンの前に膝まづく。
「次は、アールブを始末しに向かえ。ルイーズとの戦いの前に、ノドの膿を全て出し切るのだ」
モリガンが命じると、リカルドと闇月暗殺部隊は無言で虚空に消えた。




