第52話 トゥールラ攻防戦2~大崩落
サンシール達は、街の近くの丘を飛び越え、その向こうの谷の入り口に陣取った。
「ここなら、包囲を避けて戦えるだろう」
サンシールは、そう言った。
それを見ていた、ノドの国の者がいる。
スキンヘッドの美しい森エルフの女性幹部、ドゥエルブだ。
彼女は、巨大な翼竜の翼を持った彼女専用の飛行SA、ケツァルコアトルスを身につけ、見つからない様に70km以上海側に離れた高空から、彼等を監視していた。
周囲には、彼女の現魔である翼竜が3体、一緒に飛行しながら守護している。
彼女の高レベルな自然の語り手、ドルイドとレンジャーの能力を使い、見つからずに一方的にサンシール達を監視する。
「お姉様、奴等が予想通りの場所に陣取りました。いかがしましょうか?」
ドゥエルブは、姉のアールブにSAの通信機を使って連絡を入れる。
「予定通り、エピック呪文で攻撃を開始しろ。奴等を不利な場所に誘い込め」
アールブの返信が入る。
「ふふふ、電波による通信とは便利なものだ。中継地点を置けば、チャットの届かない場所にも連絡可能なのだからな」
アールブは、ニヤリと笑った。
彼女は、サンシール達のいる場所から数百km離れた場所に本陣を構えていた。
巨大なテントの中で、その美しい肢体を豪華な羊毛のラグの上に横たえ、長い煙管をくゆらせている。
相変わらず、布を1枚巻いただけのような露出の多いドレス姿だ。
「予定の場所に包囲網を敷けているな?」
彼女は、横に配置している森エルフの部下に聞いた。
「万事抜かりなく」
部下の森エルフが、答える。
「よし、では異界を召喚する」
アールブは煙管を置き、ゆっくりと異界の生成に入った。
それと同じくして、海側のドゥエルブもエピック呪文を詠唱し始める。
プレイヤー達の様に課金アイテムを使った詠唱短縮は使えず、ゆっくりと強力な呪文の準備を進める。
数分後、彼女の手から強力な魔力が、サンシール達のいる方向に放たれた。
「何だ!?」
サンシールが、驚きの声を発する。
彼等のいる場所の地面に大きな割れ目が走る。
その範囲は数kmにも渡っていた。
やがて、その割れ目から青白い光が漏れ出してくる。
「まずい!引きずり込まれます。すぐに飛行魔法を!」
モーギスが、叫ぶ。
3人は、すぐに空中に舞い上がった。
しかし、強力な圧力で割れ目に吸い込まれそうになる。
それを必死で逃れようと、上に飛行を続ける、
割れ目は、やがて巨大な数kmに及ぶ一つの穴となり、その中から青白い光が放たれ、3人を引き寄せる。
「この呪文は、エピック呪文、大崩落。あの穴に吸い込まれたら、100%死亡した上に、しばらくは復活も出来ません!」
モーギスは、そう叫ぶ。
3人は、全力で飛行して何とか魔法から逃れた。
しかし、間髪入れず、海側から多数のミサイルが飛来して、彼等を襲う。
ドゥエルブの誘導によって、数百km離れた海上に待機していたノドの飛行巡洋艦から次々にミサイルが発射されていた。
ミサイルには全て強化呪文が仕込まれ、簡単には防げないようになっていた。
「厄介な!!」
サンシールが、叫ぶ。
3人は、崖から離れ、内陸部に向かって飛んで回避する。
少し内陸に入った平野の上、突如地上に叩き落される。
「な、なんだ!?」
サンシールは、何とか起き上がっていった。
周囲に不気味な霧が広がり、多数の鳥や獣の泣き声が響く。
「異界です。飛行と転移魔法禁止。それに森林に生息する獣や亜人に大幅な強化。やられましたね。ここでは、簡単に包囲されてしまう。いや、もうされているかもしれません」
モーギスは、起き上がりながら言った。
「来る。少なくとも数万は気配を感じる…」
アヤが、ポツリと呟く。
「ふふふ、決して固まるでないぞ。部隊は数十ごとに分け、充分に間を取れ。モリガン様直伝のプレイヤー殺しだ。範囲魔法で一掃されない様に、奴等を攻撃し続けるのだ。まずは、射線の通らぬ40km以上離れた地平線の向こうから砲撃をくらわせてやれ!地上からでは、砲撃地点に魔法は通らぬ!」
アールブは、前線から通信で送られてくる画像を、魔法で生成されたモニターに映し、指示を出した。
サンシール達の頭上から、次々に榴弾が降ってきて爆発する。
3人は、防御魔法を展開して、それに耐える。
「まずいですね。この霧に遠距離からの砲撃。こちらの魔法では、ターゲットが取れずに反撃出来ません」
モーギスが、言った。
「永遠に砲撃は続けられないだろう。今は耐えるしかない!」
サンシールは、答える。
しかし、砲撃が終わった時、今度はノドの大軍勢が次々押し寄せるのだった…。
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