第49話 アルビオン入国
「必ずアルビオンより援軍を連れて戻ります。サンシール様」
発信準備の整った飛行巡洋艦グレイオウルのタラップの前で、ウェリオは言った。
「ああ、頼む。たとえ無理でも恨みはしない。無事にアルビオンに辿り着ける事を祈っているよ」
サンシールは、ウェリオに笑いかける。
「姉弟揃って亡命が認められるとよいな、アンジェリカ姫」
彼は、アンジェリカにも見送りの言葉を送る。
「いいえ、アンジェリカもアルビオンの援軍を引き連れ、必ず戻ります!」
アンジェリカは、サンシールの言葉を強く否定した。
「この国の人間ではない君達が、そうまでする必要はない。君達の無事が第一だ」
サンシールは、そう言った。
「何を、おっしゃいます。このアンジェリカ、永遠にサンシール様について行く覚悟」
アンジェリカは、目に涙を一杯に溜めて言う。
『何さらっとプロポーズしてるんだ、この人』
モーギスとウルベルトは、同じ事を思った。
「いいや、余計な心配は無用。アルビオンで平穏に暮らしてくれ」
サンシールは、変わらぬ笑顔で諭した。
『さらっと、フラれたよ。というか、プロポーズだと通じてない!』
モーギスとウルベルトは、再び同じ事を思った。
「ああ…」
アンジェリカは、さすがにショックを隠せず、地面に両手をつく。
「ちょっと、何やってるの!早く行くわよ」
ウェリオは、アンジェリカに厳しく言った。
アンジェリカは、ウェリオとウルベルトに引き起こされる。
3人は、タラップを登って、グレイオウルに乗り込んでいった。
「ああ、サンシール様!私の事を忘れないで…」
アンジェリカは、最後まで名残惜しそうだった。
その巨体に似合わぬ静かさで、グレイオウルは発進する。
わずかな地響きを残して、倉庫の大きな扉を抜け、空中に舞い上がった…。
時速数百kmの速度で海上を飛ぶグレイオウルは、1時間とかからずアルビオンに沿岸に近づきつつあった。
沿岸は白い岩の崖になっており、何者も近づけない空気を漂わせていた。
グレイオウルは、空中を飛ぶ白い鎧とSAを身に付けた兵士達数十人に取り囲まれた。
「そなた達は、何者か!?現在、我が国は外部の者の入国を一切禁止している!」
兵士のリーダーらしき者が、魔法で声を大きくして伝えてきた。
「私は、アルビオン現エルフバルト国王が妹、メアリー姫の娘ウェリオ!我が帰国を受け入れ、二人に取り次いでほしい」
ウェリオはマイクを手に取り、艦の拡声器を使って語りかけた。
「…」
兵士達は相談を始め、どこかに連絡を入れた。
しばらくすると返答があった。
「では、指定の場所まで同行せよ。入国審査を行う!」
兵士達は、グレイオウルを先導する。
グレイオウルは、王都からかなり離れた草原に着陸させられた。
数週間、厳重な取り調べがされた後、ウェリオと、アンジェリカ、ウルベルトのみが場所に乗せられ、夜道を王都に向かう。
他の者は全員、艦に乗ったままで待機を命じられる。
『思った以上に強者の気配を沢山感じる。やっかいな敵になりそうな国ね』
『ここまでは計画通り。諜報活動のしがいがある』
アンジェリカとウルベルトは、個別チャットを使って話し合う。
やがて、馬車はアルビオンの巨大な白い王城に到着した。
3人は、夜だというのに昼の様に明るい、巨大な大広間に通された。
王座には、30代中盤に見える長い金髪、碧眼のハイエルフ。現アルビオン国王エルフバルトが座っていた。
美しく白銀に輝くチェインメイルと黒いビロードのマントを身に付けている。
その横には、メアリー姫が立っている。
3人は、その前に膝まづいた。
「メアリー姫の娘ウェリオ。只今、帰国いたしました。配下の方に伝えました件、重ねてお願いいたします」
ウェリオが、言った。
彼女は、この国に来た目的を謁見の前に伝えていた。
「呼び戻してはおらんのだがな…。不義の子とはいえ、お前は我が王族の血縁。アルビオン貴族としての洗礼を受けさせ、永住を認める。しかし、援軍の件は受け入れられない。我が国の者の血を、アルビオン以外の者の為に流させるわけにはいかぬ。また、別の国の者の亡命も認めておらぬ。例え貴族であっても同じ事。同行者は、あの船と共に去るがよい」
王は、援軍とアンジェリカ達の亡命を断った。
「しかし…」
ウェリオは、何か言おうとする。
「やめなさいウェリオ。この国の貴族として認められ、永住を認めるのも特別な事なのですよ!」
メアリー姫が、ウェリオをたしなめた。
彼女は、娘の前に進み出て抱きしめる。
「ああ、ウェリオ、どんなに心配した事か」
「お母さま…」
二人の瞳から涙が流れる。
「あーあ、援軍も出ないし、入国して諜報活動も出来ないんじゃ、これ以上こんな事を続けても仕方ないわね」
アンジェリカは立ち上がると、そう言った。
「じゃあ、ちゃっちゃと、お宝頂いて帰るわよウルベルト!」
「おう」
二人の体が、まるで水中に潜る様に床に沈んで消える。
「くせ者だ!!警備の者は、あの二人を追え!」
王は、護衛についていた兵士達に発した。
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