第47話 姫のチート修行
「私は、もう我慢なりません!」
焚き火を囲んで野営するサンシール一行。
ウェリオが、いきなり立ち上がって言った。
「何?まだ私に文句があるのかしら」
アンジェリカが、思わず反応する。
「違います!この中で、私が一番弱いと考えられている気がする。足手まといは我慢ならないのです」
ウェリオが、否定する。
「心配しなくても、君をトゥールラまで無事に届けるよ」
サンシールは、言った。
「いいえ、それでは私の気が済みません。サンシールさん、あの剣の冴え。パラワン先生と互角の力を感じます。今、私に修行をつけて下さい」
ウェリオは、ぐいぐいとサンシールに詰め寄り、顔を近づけて言った。
「ちょっと、ちょっと、近い!」
アンジェリカが、割って入ってウェリオを押し戻す。
「仕方ない。ちょっと周回するか。どうだ、モーギス?」
サンシールは、やれやれと言った顔でモーギスに言った。
「いいんじゃないですか。彼女のLvは、60Lv近いところまで来ていますね。カンスト勢と渡り合うには90Lv以上は欲しいところ。まあ、あの方法なら200周と言ったところですか」
モーギスは、同意した。
「しかし、この世界の人間が、どれだけ成長出来るのか把握していない。君の潜在能力によっては無駄になるかもしれない。それでもやるか?」
サンシールが、ウェリオに言った。
「もちろんです。どんな厳しい修行も覚悟しています」
ウェリオが、真っ直ぐな目でサンシールを見つめる。
「それじゃあ、私も参加しますわ」
アンジェリカも、修行に参加を希望した。
『駄目だ。俺達はLvカンストをアイテムで低く見せているから、もうLvUPしない。修行の途中で偽装がバレる』
そう言ったアンジェリカを、ウルベルトが即座に個別チャットで止めに入る。
「ほほほ、やはり夜は寝ないと肌の調子が…」
アンジェリカは、適当な理由を付けて前言撤回した。
「それでは、修行を開始する」
モーギスは、そう言うと、何かのチケットをウェリオに投げる。
「これは、30分間、取得経験値が50倍になるガチャの外れアイテム。イマジン最終シーズンの壊れアイテムの一つです」
モーギスは、言った。
「さて、行くぞ!」
「はい!」
サンシールがプライベートダンジョンの入り口を開いて呼びかけると、ウェリオが元気のいい返事をする。
プライベートダンジョンは、作成者パーティーしか入れない個別ダンジョンだ。
「このダンジョンのギミックは最低2人で突破出来ます。ボスのビシャモンテンのLvは87Lv。あらゆるスキルを駆使して、このダンジョンを1周1分以内で周回してもらいます。ボスはサンシールが倒しますから問題ありませんが、道中、二手に分かれてスイッチを押すギミックがあるので、ご注意を」
モーギスが、ダンジョンのギミックを説明する。
「87Lvのボスのいるダンジョンを、わずか1分で。なんて力なの」
ウェリオは、感嘆した。
『私達なら、ボス部屋に入って2秒で倒せるのに!』
『…』
アンジェリカは、個別チャットでウルベルトに悪態をつく。
彼は呆れ顔で、何も答えない。
「行くぞ!途中で、最初の数周は、君の現魔も確保するからな」
サンシールの掛け声と共に、二人はプライベートダンジョンに突入していった。
「はぁはぁ…」
4時間近くの周回から帰ってきたウェリオは、地面に倒れ込んだ。
肉体的には回復アイテムで持たせているが、精神的に限界が近かった。
森には、朝の光が差し込んできている。
「予定の半分程度しか消化出来なかったが、なんとか85Lvまできたな」
85Lvに到達したウェリオに、サンシールが手を差し伸べる。
「はい、ありがとうございます。サンシール様」
ウェリオは、サンシールの手を両手で、しっかり握った。
輝く瞳で、彼を見つめる。
『いきなり態度変えて!許せん、この女!』
アンジェリカは、寝ているフリをしながらウェリオとサンシールを細目で見て思った。
『はぁ…』
ウルベルトは、そんな姉を横目に、心の中でため息をついた。
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