第44話 悪役令嬢、仲間になる
「お~い、姉上、ご無事でしたか~」
妙に覇気の無い声で、森の茂みをかき分けて出てきた少年が声をかけてきた。
貴族風の上等な服に身を包んでいる。
短い、ぼさぼさの黒髪。
半開きの瞳は、力が無い。
いたって平凡な顔つきの16歳くらいの少年だ。
「あら、ウベルト!我が弟よ。お前も無事でしたか」
サンシールの腕の中にいたアンジェリカが、さっと立ち上がり、その少年に返事した。
「あなた達は、一体どの様な方々かな?我々は、戦乱を逃れて北の港を目指している衛士です。主人は既に討ち取られておりまして」
モーギスは、あらかじめ決めておいた身分を話し、アンジェリカ達の素性を聞いた。
「私達姉弟は、遠き東の国キタイより参りました。キタイは宝眼教なる新興宗教の集団に王権を奪われ、我々貴族は国を追われて散り散りに…」
アンジェリカは目頭を押さえ、サンシールに寄りかかって言った。
「ちょっと、あなた、本当に貴族の娘なの?知らない男性に、すぐに寄りかかるなんて!」
ウェリオは、アンジェリカをサンシールから引きはがして怒る。
「申し訳ございません。突然の襲撃で気が動転してしまい…」
アンジェリカは、またサンシールに寄りかかると、そう言った。
『礼儀を知らぬ不審者め!』
ウェリオは、目を吊り上げて怒ったが、なんとか黙った。
「とりあえず、捨て置くわけにもいかないだろう。入国出来るかは分からないが、アルビオンの地は安全だと聞く。俺達に北の港町まで同行するか?」
サンシールは、アンジェリカ達と仲間に同行を求めた。
「はい!実は、私達が向かっていたのもアルビオンでして!よろしくお願いいたしますわ!」
アンジェリカは、サンシールの手を取り、目をキラキラさせて同意した。
その勢いに、周囲も同意せざるおえない空気になった。
「私が見るに、あなた方は相当の実力者の様だ。少なくとも、この地では。しかし、先ほどの様なノドの幹部クラスに狙われれば危険かもしれませんね」
モーギスは、アンジェリカ達が少なくとも50Lv以上の強者である事を見抜いたが、襲われた相手の実力を考えると、同行に賛成するしかなかった。
ベルタやアヤは、あまり興味が無いと言った感じだ。
「私は、こんな、はしたない娘と同行するのは反対です。それに足手まといです!我々には急ぎの使命があるのですよ!」
ウェリオだけが、同行に反対する。
「私達が、足手まといですって?」
アンジェリカが、ニヤリと笑った。
ウルベルトは黙っていたが、二人の姉弟の体から不気味な覇気が流れ出す。
「おい、ハーフエルフ。こいつら、少なくとも、お前と同じくらいのLvはありそうだ。お前には、足手まといと言う資格はないだろう?」
サンシールは、ウェリオをたしなめた。
「私は、ウェリオです。ハーフエルフと呼ばないで!」
ウェリオは、横を向いた。
『やれやれ、得体の知れぬ連中だが、何かあれば私がなんとかすればよいか。中立の私と違い、サンシールの持つ善の属性は、彼等を助ける事を選択するだろう』
モーギスは、心の中で決意した。
「ウェリオ嬢。ここは急ぐ。困っている者を助け、戦力となるならば断わる理由はないでしょう」
モーギスは、ウェリオを諭した。
「仕方ありませんね…」
ウェリオは、渋々了承した。
「助かりますぅ」
アンジェリカは、サンシールの腕に抱きついて感謝の意を伝えた。
「ちょっと、いきなり人前でこういうのは困るから」
サンシールは、プレイヤー年齢で歳なりの反応をした。
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