第25話 シーサイドホテル
いつの間にか、外は夜になっていた。
夜景の中をリムジンは、自動運転で走り続ける。
「その事故の話は私も知っているが、急な悪天候による突発的な事故だった。発見されたダンジョン社長にも、その後、怪しい動きはない。君達の出現と意図的なつながりはないと思う」
デイジー陽子は、田中からダンジョン幹部の事故の件を聞いて答えた。
「株式会社ダンジョンは、我が社のメタバース事業に有用なコンテンツを持っているという事で、買収計画が進行している。その関係で、事件は調べてあった。事故自体に怪しい部分は無い」
デイジー陽子は、株式会社ダンジョンの買収を元々考えていたようだ。
イマジンのプレイも、コンテンツの確認の意味があったのだろう。
「へえ、社長が動いたなら買収成功は確実ですね」
田中実は、デイジー陽子の手腕を信じているようだ。
「有力な株主達から既に株式売却の了承を集めてある。あの会社は上場していないのでな。50%以上の株式の取得は確実。既に買収は決まったようなものだ」
デイジー陽子は、自信を見せる。
「ふむ、なるほど。ならば、株式会社ダンジョンのサーバー内データも、すぐに閲覧出来るようになるという事か。何かあるならば、調べはつくだろうな」
カインは、言った。
「別次元に干渉する魔法を試してみたが、今のところ全て効果を発揮しない。別次元への連絡(コンタクト・アザ―・ディメンション)で、あの世界に連絡を取る事は出来ない。次元移動で戻る事も出来ない。それぞれ起動は出来るのだが、次元断絶の様な魔法効果で打ち消されているのを感じる」
ルイーズは、魔法での電夢境への干渉が出来ない事を報告する。
「ゲーム内キャラである我々は、現実世界に来た事は無い。だから、向こうからこちらへ来る魔法は起動すら出来なかった。しかし、今度は行った事のある世界への干渉だし、起動もする。何者か、あるいは超自然的な何かが妨害しているのかもしれない」
カインは、ルイーズの報告を受けて、自分の考えを話した。
「今のところ関係無い可能性も高いが、やはり株式会社ダンジョンが関わっているかが気になる。早くサーバーデータを確認出来ないだろうか?デイジー殿」
ルイーズは、デイジー陽子に訴えた。
「ふむ、ダンジョン内部の協力者に頼めば可能かもしれんが、正確には違法になるかもしれん。だが…面白い!明日、段取りを組もう」
デイジー陽子は、ほとんど即okした。
「では、お二人は、こちらでゆっくり休んで時を待ってほしい。では明日!」
リムジンは、夜の海を望む高級ホテルの入り口に滑り込み。
ルイーズとカインを降ろした。
「ええっ?」
カインは面くらい、顔色が元の青白いヴァンパイアに戻る。
「えええっ!?」
二人は、ホテルの最上階のスイートルームに通される。
自宅警備員と書かれた場違いなTシャツ姿のカインの顔が、さらに青くなる。
「せっかくなので、くつろがせてもらおうではないか」
ルイーズはジャケットを脱いで広いテーブルの上に投げ出し、ワイシャツの第一ボタンを外すと、大きなソファにゆったりと座った。
スイートルームのリビングは広く、大きなテーブルとソファが置かれている。
窓は180度のオーシャンビューで、夜の海を一望出来た。
「どうした?この様なおばさんに気を使う必要もあるまい」
ルイーズは、カインにも座るように促す。
カインは、いつもの王としての装いに服を戻すと、おずおずとルイーズの横に腰を下ろした。
「私は、自らの配慮の足りなさから、妻と娘を傷つけてしまった。とても浮いた気持ちにはならない。どうして、妻と娘が、あのような状態になっていたかは、鈍い私でも分かる」
カインは下を向き、うなだれている。
「…」
ルイーズは、何も言わない。
「…私には、他にも側室がいる。しかし、それはゲーム内からいた側室設定だった従魔。プレイヤーキャラの女性と長く一緒にいて、彼等がどう思うか考えていなかった」
カインは、続ける。
「しかし、現実世界から転移したと思っていた我々も、しょせんはプレイヤーと記憶を共有した、データ上のプレイヤーキャラでしかなかったわけだ。データが現実化したという意味では、彼等と変らない。それが元で争う事になるとは笑えない話だ」
ルイーズは、遠い目で暗い海を見つめながら言った。
「元が何であれ、我々は意志を持った存在。自らの判断を後悔するな。自らの正義によって、皆を導くのが王だ。彼らの為にも折れてはならぬ。ただ、王を退きたくなったのなら、いつでも私がお前の全てを引き受けてやるぞ」
ルイーズは、カインの肩を抱き寄せた。
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