グランの頼み
勝負が終わった後、グランと一緒に冒険者組合一階の酒場へとやってきた。
実力を測るだけのつもりだったらしく、まさか負けるとは思っていなかったようだ。
まぁ俺もグランの動揺を誘ってその隙を突いただけだし、これでグランに勝てたなんて思っていない。
グランの実力が見れなかったのが少し残念だな。
そう思いながら、ここでランチを食べることにした。
そして、全て食べ終わる頃にグランが一言言ってくる。
「ハク、俺に力を貸してくれないか?」
いつにも増して真剣な表情で言ってくるグラン。
「何に力を貸すんだ?」
「あぁ、何としてもこの村の五階層にたどり着きたいんだ。そのために協力してほしい」
「五階層に何があるんだ?」
「知らないのか? このダンジョンの五階層以降には己の力を高める実が落ちているらしいことを……」
んっ? どこかで聞いた話だな。どうせスキルが上がる実と同様に確率がすごく低いとかそういったことなんだろうな。
「そこまで無理をして取るような実でもないんじゃないか?」
「いや、俺が必要なんじゃなくて……、その……、なんだ……」
グランの歯切れが悪くなった。なにか言えないようなことでもあるのだろうか?
「と、とにかくその実が必要なんだ。よかったら手伝ってくれないか?」
まぁ人に言えないようなことも一つや二つあるよな。それにグランには前に一度手伝ってもらっている。あの時の借りを返すと思えば安いものだろう。
「わかった。ただ、その実が毒を持ってたりとかなら――」
「そういったことはないから安心しろ!」
暗殺用に準備したいとかそういったことでもないようだ。
「なら、出発は明日の朝からで良いか? もうほとんど俺なしでいけるとはいえ、鑑定所に声をかけておかないといけないし、それに装備を新調したい……」
せっかく鑑定所をしてお金を稼いだんだ。ここらで強い武器を買えば俺でももっと戦えるように……。
「それは構わないが、装備を買うならメルカリの町に帰ってからのほうが良いものがそろうぞ……」
そっか……今が栄えているから勘違いしそうだが、元々ここは村だったんだもんな。急に新しい武器とかが作れるわけでもないし、それなら向こうの町に戻ってから武器を新調するか……。
少し落ち込みながら俺は鑑定所へと向かう。
すると中からエミリが飛び出してくれる。
「おにいさん、もう行ってしまうのですか? 私まだちゃんと出来てるかわからないのに……」
まぁ不安になる気持ちもわかるな。俺も初めのうちは鑑定結果が間違えていないか常に心配だったし……。どうせ出発は明日にしてもらったんだ。それなら――。
「わかった。今日は一緒についてちゃんと出来てるか見てやろう」
それを聞いたエミリは嬉しそうに頷いた。




