宿問題
どういうことか分からずに俺は少女が口を開くのを待つ。
「とにかくお兄さんもこんな詐欺まがいの宿なんかに行ったらダメ!」
そういうといきなり俺は手を掴まれてそのままどこかに引きずって(引き摺って)来られる。
目の前にあるのは少し古い木造の建物。
少女の出で立ちからもここはダンジョンが見つかる前からある建物なのだろうと想像できる。(少女の様子から時系列の推測をするのは難しいと思われます)
「じゃーん、どう? どう?」
いきなり引きず(摺)ってこ(来)られたかと思うと感想を求められる。
どう……と言われても返事が困るんだけどな。ボロい家とか……言えないし。
「うーん、歴史を感じさせる家?」
「でしょー。もうここに決めるしかないよね。おかーさん、お客さんだよー」
そう言って家の中まで連れてこられる。
家の中は木の香り漂う二階建てとなっていて、受付のカウンターみたいな場所から少し恰幅の良い女性がゆっくりと近づいてきた。
「おや、珍しいね。こんな寂れた宿屋にお客様なんて……。表にもっと立派な宿屋があったでしょうに」
「あんな詐欺まがいの宿に騙されそうだったから連れてきたんだ!」
少女が鼻頭を擦りながら言うとここの女将さんだと思われる女性が呆れ顔を見せていた。
「お兄さんたちはこんな宿屋でいいのかい?」
俺は念のためにミーナやシャルの顔色を伺った。
ニャーは俺の言うことなら従うだろうし、むしろすごく嬉しそうな顔をしていたから、除外しておく。
シャルはおどおどとしているものの俺と目があうとはにかんで頷いてくれる。
ミーナは腕を組み偉ぶっている。
これだけじゃわからないな。
「ミーナはここの宿でいいか?」
念のために確認を取る。
「私はどこでもいいわよ。それより少し休んで早くダンジョンに行きましょう」
どうやらダンジョンに行きたくてソワソワしていただけのようだ。まぁ休憩を挟むところがミーナらしいが。
ミーナがいいなら場所はここでいいな。
「ちなみに値段は?」
「そうだね、一人——」
「もう四人で一泊銀貨四枚と銅貨五枚。さっきのおじさんが言ってた値段で四人分いけるわよ」
宿屋の女将さんの言葉を遮るように少女が言う。
それなら安いな。メルカリの町よりほんの少し高いだけだ。
「わかった。じゃあ数日お世話になる」
「まいどありー」
「もう、でもありがとね」
女将さんは呆れながらも俺たちには笑顔を見せてくれる。
「じゃあお部屋に案内しまーす」
少女が笑顔で俺たちを部屋に案内してくれる。
「こちらを使ってください」
少女が二つの扉を開けてくれる。まぁこのメンバーだと二部屋いるよね。
「じゃあ荷物を置いて一時間後に」
「わかったわ」
ミーナの声を聞いて俺たちは部屋に入る。俺が右側、ミーナが左側。そして、ニャーとシャルは何食わぬ顔で右側に……。
「ってここは男女に分かれる場面だろ!」
慌ててニャーとシャルを追い出そうとすると——。
「ニャーはご主人様の奴隷だから当然一緒にいるにゃ」
確かにニャーは俺の奴隷だもんな。あまりそれらしいことはしていないけど。それならまぁ理解できなくもない。
「わ、わ、私はハクさんと同じ部屋じゃないと……、その……、怖くって……」
「ミーナも一緒にいるだろ?」
怯えて肩を震わすシャルにそう言う。確かに一人だといつもシャルは俺の部屋に来てたもんな。ただ、今回はミーナがいる。それなら一人じゃないし大丈夫だろう。
俺はそう思っていたが、どうやらシャルは違うようだった。
「わ、私はハクさんと同じ部屋じゃないと……怖くて寝られないんですよ……」




