宿
ダンジョンから町まで戻った俺たちは宿をとった。
ミーナは自分の家に泊まってはどうかとひっきりなしに誘ってきていたが、さすがにあれだけの家に何度も泊まっては悪い気がするし、何よりあの生活に慣れてしまったら戻れない気がする。
そう考えた俺は今回は断らせてもらった。
するとシャルも遠慮したようだった。
そういえばシャル……あの家だと怖がって眠れなかったんだっけ……。
実際には話をしただけだが、あの時間に話をしに来て、あまつさえその場で寝てしまう……なんてことは怖がったりしてないとそうそうしないことだろう。
俺たちに断られたミーナはどこか寂しそうだったので、泊まる宿の名前と、明日は休みを取るつもりだから、また明後日冒険者組合の前で待ち合わせをすると嬉しそうに頷いてくれた。
もしかしたらミーナはパーティを外されると不安になったのかもしれない。
今現状、シャルの火力頼りのパーティなので、それを温存する戦力は貴重だ。
スキルなしの俺でも戦えるようになるほどの強化と弱化を使いこなすミーナは、今の俺たちにはすでになくてはならない貴重なメンバーとなっていた。
ただグランが抜けた今、新しい前衛の子がいると助かるかもと考えていた。
俺とシャルは二人、この町にいくつかある宿屋のうち、安すぎず、高すぎず、それなりの値段の宿へとやってきた。
さすがに高すぎる宿にはお金が足りなくて泊まれない。
安いところはボロボロすぎるし、用心が悪いので安心して泊まれない。
その結果、普通の値段の宿に泊まることになった。
「いらっしゃいませー。泊まりー? 一泊銅貨五枚だよー」
宿で店番をしていた少女に声をかけられるが、なんだか眠たそうな声を上げる少女だった。
机に顔を突っ伏して眠そうな、トロンと垂れた目だけをこちらに向けて言ってきた。
接客としてはどうなのかと思うが、まぁ泊まるだけが目的の俺たちには関係ないだろう。
「二人頼めるか?」
「わかったー、一部屋でいいー?」
「いや、二部屋頼む」
どうして一部屋でいいと思ったのか……いや、きっと部屋を準備するのが面倒だったのだろうな。
「一部屋にまとめると値段が銅貨一枚安くなるけど、本当に二部屋でいいのー?」
面倒くさそうに言ってくる。本当に二部屋にされるのが嫌なのだろうな。でも、さすがに俺とシャル、一緒の部屋にするわけには……。
そう考えた時、俺の服をシャルが少し引っ張ってくる。
「あの……、ハクさん……。私、一緒の部屋でいいですよ……」
結局同じ部屋に寝泊まりすることとなった。
一部屋だけなのだが、それでも面倒くさそうに案内された。
案内されたところは六畳ほどの部屋にベッドが二つ置かれただけの部屋だった。
「お食事は食堂きてねー。はー、疲れたー」
それだけ言うと受付の少女は戻っていった。
よくあれで務まるよな。
呆れ顔のまま少女を見送ると俺はもう一度部屋を見返す。
まだベッドが二つ置かれているだけマシだろう。
どうせ寝るだけなんだ。それなら昨日も……そういうことか。
俺は昨日、シャルがわざわざ俺の部屋まで来たことを思い出した。今日も同じようになるなら部屋を二つ取る必要はない。
はなからそのつもりだったのか?
のんきに自分の荷物を調べているシャルを見て俺はそんな疑惑に襲われた。
「ハクさん、ハクさん、お金がたくさんですよ」
シャルは自分のカバンに入っているボロボロの袋を眺めて嬉しそうに言う。
その中にたくさん入っている銀貨は俺たちがミハエルとの勝負に勝ってもらったものだ。あと、オーク等の魔石を売った分も入っている。
それを四人で分けたけど、それでも袋いっぱいの銀貨をもらえたのは幸いだ。これで俺の装備も一新できるだろうか?
今のパーティには前衛が俺しかいないからな。
スキルのない分は装備に頼るしかないだろう。




