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FILE.0-b それは他愛もない答え Alive

『――なぜキミは生きているんだ?』

 このイルの問いかけに、僕はまだ答えを見いだせていない。いや、正確には「これなんじゃないか?」というものが一つだけあるが、それが僕の答えなのか確信が持てないと言った方がいいだろう。なにせ、その答えにつながるヒントは、いつもここで学べていると思えるから。

「……うむ。キミもだいぶコーヒーの淹れ方が分かって来たじゃないか」

「どうも。それはなによりだ」

 イルは僕が淹れたコーヒーを美味しそうに飲むと、すぐに目の前の本に視線を移す。

「どうだい? 答えは出せそうかい?」

 ソファに深く腰掛けた死神は、僕を見ることもなくそんな言葉を呟いた。言うまでもなく、それは先日のあの問いかけのことだろう。

「どうかな。まだハッキリとした答えは見つかってないよ。……いや、正直に言えば確信が持てないんだ」

「私は別にキチンとした答えを求めてはいないさ。マコトはマコトなりの答えがあっていい、そう私は思っているよ」

「そうなの?」

「そうさ。私は別にキミの先生ではないし、ましてや人間ですらない」

「死神だから?」

「死神だからさ」

 イルはそう言って小さく頷いた。彼女はコーヒーを一口あおると、僕に再び問いかける。

「それで? なぜキミは生きているんだ? 聞かせてくれないか?」

 イルに続くように僕もコーヒーを口に含む。コーヒーの苦味が残った舌で、僕は言葉を紡ぐ。

「イル。君は言ったよね。『人間ほど醜く愚かで――そして面白いものはないから』って」

「あぁ」

「なら、僕はこう答えるよ。なぜ生きているか? それは――」


 僕の『趣味』だから。


 瞬間、目の前の小さな少女は、どこか優しそうに頬を綻ばせた。

「生きることが趣味、か。――キミらしくていいじゃないか」

「そうかな?」

 僕の疑問に答えることもなく、白髪少女の死神はその優しげな笑みを崩さなかった。

読んで頂いた方、本当にありがとうございました。

これで一応の完結となります。いかがだったでしょうか?


ファイルの更新日を見たら、2012年……だったりするんですよね(笑)

その頃から書いていたわけです。


また機会があれば、書きたいなぁと思います。何気にイルとマコトのコンビはお気に入りだったりしますので(笑)

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